豪音楽業界団体のオーストラリアレコーディング産業協会(ARIA)は8月25日、同国で最も人気のある楽曲を紹介する週間チャート(ARIAチャート)から、AI音楽を除外すると発表した。

このガイドラインの更新は、マドンナが1989年にリリースした大ヒット曲「Like a Prayer」のカバー曲が、オーストラリアのラジオで最も多くオンエアされた楽曲となり、ARIAのオーストラリア・シングル・チャート・トップ20に16週間ランクイン(最高2位)したことを受けて行われた。ブリスベンのDJ兼プロデューサーのジョシュ・ファワズがリリースしたこのカバーは、ボーカルとドラムをAIで生成しており、物議を醸している。

完全にAIによって生成された楽曲は今後、ARIAチャートおよびARIAミュージック・アワードのノミネート対象から除外。生成AIを用いて制作された楽曲は「実質的に人間によって制作された」もので「ストリーミングやチャートの操作に関する懸念が生じない」場合にのみチャートに掲載される。生成AIを補助的な役割(ツール)として使用した作品は、引き続きチャートの対象となる。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「マドンナ「Like a Prayer」のAIカバーが、豪州ラジオで最多オンエアの1位を獲得した。ボーカルもドラムもAI生成。それと広く知られる前から、チャートに16週とどまり最高2位——つまり多くの聴き手は、少なくとも聴いている瞬間、AIかどうかを聴き分けられず、気にもしていなかったことになる。この現実こそが、今回ARIAが完全AI生成曲をチャートから除外した決定の背景にある。もしAI音楽が市場で自然に淘汰されるなら、ルールは不要だった。実際は逆で、良くできたAI曲は普通にヒットしてしまう。だからこそ、聴き手の耳に代わって制度が線を引く——ラベルで開示し、チャートの資格を定め、賞の対象を決める。豪州の決定は、その世界的な制度づくりの一環である。同時に、問いは残る。開示された上でなおAI曲を愛する聴き手がいたとき、その支持をどう扱うのか。人間の創作を守る規範と、聴き手の自由。その調整は、始まったばかりである。」