米音楽出版社ラウンド・ヒル・ミュージックは8月17日、音楽生成AI「Suno」およびAIチャットボット「Claude」を手がけるアンソロピックを相手に、著作権侵害訴訟を提起した。いずれの訴訟についても和解する意向はないとしている。

各訴訟では、故意に侵害された作品1点につき最大15万ドル(約2,377万円)の法定損害賠償を求めている。各訴訟の損害賠償総額は、10億ドルを上回る可能性もあるという。

Sunoとアンソロピックはいずれも、既に複数の音楽著作権訴訟を抱えている。

Sunoを巡っては、世界三大メジャーレコードのうち、ワーナー・ミュージック・グループ(WMG)と和解したものの、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)とソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)とは依然として法廷闘争が続いている。

7月には、ドイツ音楽著作権協会(GEMA)が提起した訴訟において、Sunoに対して不利な判決が下された(Sunoは控訴を検討)。デンマーク著作権管理団体Kodaとも法廷で争っている。

一方、Winampグループ傘下の音楽ライセンス事業会社Jamendo Musicとプロデューサーデュオ「The American Dollar」は8月に入り、Sunoに対する訴訟を取り下げ。BMGはSunoとライセンス契約を締結した。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「この提訴で考えたいのは、一つの事実だ。AIの学習を巡る音楽の大型訴訟は、これまでほぼすべて、判決が出る前に和解や契約で終わってきた。ワーナーとSunoも、他分野の巨額和解もそうだ。つまり「無断学習はフェアユース(公正利用)か」という本丸の問いに、米国の裁判所の確定的な答えはまだない。和解は当事者の解決にはなるが、判例という公共財は残さないのである。ラウンド・ヒルが「和解せず陪審まで」と宣言した意味は、ここにある。主張の当否は法廷が判断することだが、もし本当に判決まで進めば、業界全体が参照できる基準が初めて生まれうる。ドイツではGEMAがSunoに一審で勝訴し(Sunoは控訴を検討)、司法の判断が出始めた。契約が作る「相場」と、判決が作る「規範」。AIと著作権の秩序には両方が要る。この訴訟は、後者を担う数少ない候補として、行方を見守る価値がある。」