米WEBTOON Entertainment(Nasdaq上場)は2026年8月10日、韓国のゲーム開発会社RI Games Holdingsの株式60%を約1億ドルで取得する契約を結んだと発表した。

手元現金を充当し、2回に分けてクロージングする。残る40%には業績連動のプット・コール条項が付く。ウェブトゥーン最大手が、原作を貸す側から開発機能を持つ側へ回る。これは日本の出版社にとっても他人事ではないニュースだ。

ライセンス料では大型ヒットの果実を取り切れない

RI Gamesは2022年設立。傘下にGrayGamesとOffbeatの2スタジオを持ち、開発陣は「メイプルストーリーM」「リネージュW」などの実績を持つ。創業者のKevin Tail Han氏は、「俺だけレベルアップな件」などを制作したウェブトゥーンスタジオ、Redice Studioの創業者でもある。両社は今後4年で複数タイトルを投入する計画だ。対象IPは「Overgeared」(グローバル13億ビュー)、「Doom Breaker」(5億9000万ビュー)、「全知的な読者の視点から」(30億5000万ビュー)が挙がっている。

これまでウェブトゥーンIPのゲーム化はライセンス供与が基本だった。象徴が「俺だけレベルアップな件:ARISE」(Netmarble、2024年5月グローバル配信)である。ただし韓国メディアの報道によれば、Netmarbleは2021〜24年に外部IPのロイヤリティとして年約1兆1000億ウォンを支払っていた。売上高の約4割にあたる規模で、クラフトンの10%台、NCソフトの30%台を上回る。

原作側から見れば相応の対価だが、裏を返せば運営益や課金設計の果実はパブリッシャー側に残る。キム・ジュンクCEOはライセンス中心では大型グローバルヒットの価値を取り切れないと述べており、今回の買収はその非対称性への回答だ。

成長鈍化が転換を急がせた

同日発表の2026年4〜6月期決算は、売上高が前年同期比2.8%減の3億3850万ドル、純損失は1460万ドルへ拡大した。為替中立では5.2%増だが、日本事業は為替中立でも6.7%減、課金ユーザー数は9.5%減と失速している。手元現金5億8300万ドルの一部を投じる判断は、既存事業の伸びしろへの見立てを映す。7月にはNAVERと1億ドルのIPファンドも設立した。

日本の出版社との「賭け金の桁」

海外に限った話ではなく、日本でも出版社のゲーム参入は進んでいる。講談社は2020年にゲームクリエイターズラボを開始し、集英社は2022年に集英社ゲームズを設立。ただし両社の軸足はインディー支援とパブリッシングにある。講談社の支援制度は年間最大1000万円を上限とし、集英社ゲームズも投資額は非公表ながら、少人数クリエイターとの共同開発が中心だ。開発スタジオを1億ドルで連結子会社化する韓国勢とは、賭け金の桁もリスクの所在も異なる。

差は金額だけではない。第1弾は10月のアニメ放送と年内のゲーム配信を同時期にぶつける設計で、IPを保有する側がアニメとゲームの投入時期を握る。製作委員会方式で権利と意思決定が分散しがちな日本勢には、模倣が難しい構造だ。IPを持つ側が開発機能を内製化する流れが加速すれば、「原作を貸す」ビジネスの相場観そのものが変わりうる。

もっとも、垂直統合はまだ半分といったところだろう。第1弾のMMORPGは開発こそGrayGamesだが、配信はネクソンが担う。WEBTOONが握ったのは開発機能であって、運営とマネタイズのノウハウではないからだ。