Unity Technologiesが2026年8月3日、企業の社内向けアプリケーション配布に特化した新ライセンス体系「Internal Deployment Add-On(IDAO)」の導入を発表した。
研修ツールや工場のデジタルツイン、営業用コンフィギュレータなど、組織内ユーザー向けに配布する「Unity Industry」製アプリケーションが対象で、利用規模に応じた年間前払いのティア制課金を導入する。ゲームエンジン企業として知られてきたUnityが、産業分野での収益基盤強化へ本格的に踏み出した格好だ。
100MAUまで無料、超過分は規模別の年間ティアで課金
IDAOの骨格は、新規アプリケーションごとに組織内の月間アクティブユーザー(MAU)100人分を無料枠として付与し、それを超えた場合に規模別の年間前払いティアを適用するという仕組みである。ライセンス保有者自身はMAUに算入されないため、小規模チームやパイロット段階のアプリケーションは実質無料で運用できる。
価格体系としては、101から500MAUまでを対象とする「Starter」ティアが年間112.5万円(7,500米ドル)、501から5,000MAUまでの「Scale 1」ティアが年間600万円(40,000米ドル)、5,001から15,000MAUまでの「Scale 2」ティアが年間1,125万円(75,000米ドル)に設定されており、15,001MAUを超える「Scale 3」以上の規模については個別見積もりとなる。また、Starter以上のティアを契約している場合に限り、ティア上限をわずかに超える利用に対して100MAU単位で追加できる「MAUパック(年間15万円/1,000米ドル)」で柔軟に調整できる仕組みも用意された。
適用開始時期に関しては、企業の既存運用に配慮がなされている。2026年8月3日より前に配布・稼働中の既存アプリケーションについては、2027年3月31日までに事前登録を行うことで恒久的に適用除外となる。さらに、新規アプリケーションに対しても2027年8月1日までの猶予期間、すなわち請求適用までに1年間の準備期間が設けられている。
Runtime Fee騒動の教訓を反映した慎重設計
今回の価格体系には、2023年に発表され開発者コミュニティの猛反発を招いた「Runtime Fee」の教訓が色濃く反映されている。当時はダウンロード数に応じた遡及的な課金モデルが激しい批判を浴び、Unityは最終的に同施策の撤回と経営陣の刷新にまで追い込まれた。
IDAOが過去に遡った請求を行わず、既存の稼働中アプリに事前登録による恒久除外措置を講じ、新規アプリにも約1年の猶予期間を設けているのは、ゲーム領域での混乱を繰り返さないための慎重な設計といえる。ゲーム分野で慎重な姿勢を保つ一方、成長領域である産業向けでは透明性の高い収益モデルを段階的に構築するという、二段構えの戦略が窺える。
NVIDIAの無料化戦略と対照的な収益化路線
産業向けプラン「Unity Industry」は、自動車、製造、エネルギーなど幅広い分野への展開を進めており、国内でもマツダやNEC、三菱電機などの主要企業が導入事例として名を連ねている。リアルタイム3D・デジタルツイン市場で存在感を高めてきた中でのIDAO導入は、拡大した導入基盤を確実に収益化する狙いとみられる。
一方、競合であるNVIDIAの「NVIDIA Omniverse」は2026年5月、開発用途にとどまらず本番環境での利用や再配布までライセンス費用を無料化する方針へ転換した。同じ産業用リアルタイム3D領域において、利用規模に応じた課金を強化するUnityと、無料開放によってエコシステムの急速拡大を優先するNVIDIAという、対照的なアプローチが浮き彫りとなっている。両社の戦略的スタンスの違いは、今後の企業におけるプラットフォーム選定や導入コスト判断の大きな分かれ目となりそうだ。














