ハリウッドの映画スタジオでは、AI関連の職種への採用がますます増えているが、コンテンツ制作におけるAIの活用については概して秘密にされている。沈黙の背景には、観客や業界からの反発への懸念がある。ハリウッド業界誌「Deadline」などが伝えた。

映画スタジオは密かにAIを活用して、粗を滑らかにしたり、台詞を修正したり、視覚効果を磨き上げたりと、細部にわたって手直しや修正を加えているが、「ハリウッドにおける美容整形」と同様に、AIの使用について公言していない。

ある有力なAI技術者によると、彼の技術はハリウッドで広く採用されているものの、彼の会社が手がけたプロジェクトのうち、クレジットにその企業名が掲載されるのはわずか5分の1に過ぎず、同社の仕事の80%近くがひっそりと行われている。これには、2026年の大ヒット作への貢献も含まれており、その作品では監督がポストプロダクション用のAIツールに個人的に関心を寄せていたという。

ロサンゼルス・タイムズ紙が映画スタジオ大手の求人情報を調査したところ、6月下旬時点で公開されていた約250件のうち、およそ30件がAI関連とみられ、AIツールの開発やAIによる不正利用から自社の知的財産(IP)を守るための人材の採用に重点が置かれていることが分かった。

画像生成AI向けツール「ComfyUI」のヨランド・ヤン共同創業者は「(AI関連の)採用を行っているスタジオは数多くあるが、公の場でそのことを決して語らない」とコメントしている。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「俳優の整形手術のように、AIでの映画づくりはハリウッドの公然の秘密になりつつある。この状況を象徴するのが、求人票だ。ロサンゼルス・タイムズの調査では、大手スタジオの求人約250件のうち約30件がAI関連。
表では組合と協定を結び、AI企業を訴え、慎重姿勢を掲げながら、裏では静かにAI人材を集めている。矛盾に見えるが、実は二正面作戦と読むべきだろう。
守るのは俳優の肖像や脚本というIPで、活用するのは修正や仕上げの工程。敵はAIそのものではなく「無断のAI」であり、味方は「管理されたAI」というわけだ。日本のアニメやゲームの現場でも、AIを巡る態度決めは避けて通れなくなっている。
全面拒否でも全面依存でもなく、どこで使い、どこで守り、どう開示するか。ハリウッドの二重生活は、その線引きを世界中の制作現場が探している過渡期の風景なのだと思う。」