生成AIの台頭が2023年の脚本家や俳優のストライキを煽り、依然としてエンターテインメント業界で広範な雇用喪失を招くことが懸念される中、テレビや映画業界のベテランたちには「人間のフィードバックによる強化学習(RLHF)」の分野で仕事を引き受け、自分たちの存在を不要とする可能性のある汎用AIシステムの改良に貢献している人たちがいる。米エンタメ誌「ザ・ハリウッド・リポーター(THR)」が6月24日報じた。

RLHFに従事する理由には「生活費を稼ぐため」「ブラックボックス化しているAIを知るため」などが挙がる。従来の映画・テレビ業界の雇用市場が縮小する中、こうしたギグワークは増加傾向にあり、AI関連の仕事を紹介する採用プラットフォーム「Mercor」などを通じて、エンタメ業界人たちも参加している。

ここ数年、AI企業は、単調な作業に従事するデータアノテーターの助けを借りてモデルを学習させる手法から方向転換し、その分野の「専門家」を求めているとされる。求人プラットフォーム「Indeed」のデータによると、芸術分野におけるAI関連の求人情報の割合は、過去1年で倍増。伸び率は、AI全般に関連する求人情報の割合を上回る。

労働組合はRLHFが短期的な利益をもたらす一方、長期的な悪影響を招く可能性があると警鐘を鳴らしている。だが、多くのメンバーが安定した仕事を見つけるのに苦労している中、RLHFに対する制限を強いることができないのが実情だ。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「ハリウッドの脚本家や編集者が、生活のために、AIを鍛える仕事を引き受けている。皮肉なことに、そのAIは、いつか自分たちの仕事を奪うかもしれない存在だ。2023年、彼らはAIへの警戒からストライキに立ち上がった。それから数年、映画やテレビの仕事が細るなか、同じ人々が、AIを賢くする作業で日々の糧を得ている。

この仕事は、AIの答えに人間が「ここが違う」と手を入れ、精度を高めていくものだ。長年培った脚本や編集の感覚が、AIを磨く材料になる。矛盾を感じながらも、家族を養い、家賃を払うためには選ばざるを得ない——そんな切実さがにじむ。

技術の進歩が、それを支える人間の生活を揺るがす。その痛みを、当事者が黙って引き受けている構図だ。AIの進化の裏側に、こうした複雑な現実があることを、静かに見つめておきたいと思わせるニュースだ。」