ゲームバラエティ番組「ゲームセンターCX」が、8月23日にYouTube生配信「Wii & PS3 解禁!?生配信」を実施する。同番組は「有野の挑戦」において、レトロゲームを「発売から20年以上経過したハードのソフト」と定義してきた。この基準に従えば、2006年発売のWiiとPS3は今年でちょうど20年を迎え、機械的には挑戦タイトルとして解禁されるはずだ。ところが番組側はここで「待った」をかけ、両ハードを本当に解禁すべきかどうかを、有野課長とスタッフが生配信上で議論するという、これまでにない形を選んだ。

「20年ルール」が初めて揺らいだ日

「有野の挑戦」の20年ルールは、これまで静かに運用範囲を広げてきた。2019年にはドリームキャスト、2021年にはPlayStation 2・ニンテンドー ゲームキューブ・ゲームボーイアドバンス、2024年にはニンテンドーDSとPlayStation Portable(PSP)、そして2025年にはXbox 360へと対象が広がってきた。この積み重ねは番組の歴史そのものと言ってよい。

だからこそ、多くの視聴者にとって比較的新しい印象が残るWiiとPS3を前に、番組が初めてルール適用そのものを議題にしたことには象徴的な意味がある。基準を定めた主体が、その妥当性を自ら問い直す構図は、長寿コンテンツならではの自己言及性を感じさせる。

「レトロ」は発売年だけでは決まらない

では、なぜWiiとPS3は「発売から20年」という数字だけでは素直に納得しにくいのだろうか。

理由の一つは、「現役ハードではなくなった」という感覚を形成する要素が、発売年だけではないからだ。PS3では近年、多くのタイトルでオンラインサービス終了が相次ぎ、PlayStation Storeも段階的なサービス終了が予定されるなど、プラットフォームとしての役割は縮小しつつある。一方で、PS3世代の人気タイトルには現行機向けのリマスター版やリメイク版も少なくなく、「昔のゲーム」という印象を弱める要因にもなっている。

海外でも、「レトロ」をめぐる基準は一様ではない。米国のゲーム小売大手GameStopは2026年、PS3やXbox 360を「レトロ」カテゴリとして扱い、関連するトレードインキャンペーンを展開した。ハードの発売年だけでなく、流通や市場での扱い方もまた、「レトロ」という認識を形づくる一つの指標になっている。

発売年、オンラインサービスの縮小、リマスターの有無、市場での位置付け──「レトロ」という言葉は、一つの基準だけで決まるものではなく、複数の物差しが交差する地点に存在している。

番組は「結論」ではなく「議論」を見せる

今回の生配信が興味深いのは、番組が結論だけを告知するのではなく、その結論に至る過程そのものをコンテンツ化した点にある。

20年ルールを厳密に適用するなら、WiiとPS3は今年から対象となる。しかし番組は、あえて「本当にレトロと呼べるのか」という問いを有野課長とスタッフの対話として提示した。視聴者はその議論を見守りながら、自らの感覚と照らし合わせることになるだろう。

単なるルール変更の告知ではなく、「レトロとは何か」という価値判断そのものを共有する構造へ転換したことは、「ゲームセンターCX」という長寿番組ならではの企画と言える。

「レトロゲーム」の定義は変わるのか

そもそも「レトロ」という感覚は、対象そのものの古さだけで決まるものではない。受け手の記憶との距離感によって、その意味は大きく変化する。

ファミコン世代にとってWiiやPS3は「少し前のゲーム機」という印象かもしれない。しかし、それらに触れたことのない若い世代にとっては、すでに歴史上のゲームハードである。

一方で、ゲーム保存の分野では、実機や光ディスクの経年劣化に加え、オンラインサービス終了によって遊ぶ手段そのものが失われることなどが、長年にわたり課題として指摘されてきた。「レトロ」という言葉は単なる懐古趣味ではなく、「どこから文化遺産として保存し、語り継ぐべきか」という問いとも密接につながっている。

だからこそ、「ゲームセンターCX」の20年ルールは、一番組の演出上の取り決めにとどまらない意味を持つ。8月23日の生配信で交わされる議論は、「ゲームはいつから歴史になるのか」という問いを考える一つの契機となるのではないだろうか。