スクウェア・エニックスは6月25日、『ドラゴンクエストX 時空の迷い子たち オンライン』を発売した。本作は2012年にサービスを開始した『ドラゴンクエストX オンライン』の最新追加パッケージであり、約14年にわたって続いてきたメインストーリーが”大団円”を迎える作品でもある。
『ドラゴンクエストX』は、シリーズ史上初めて本格的なオンラインRPGとして制作されたナンバリングタイトルだった。発表当初は、「ドラゴンクエストをなぜオンライン化するのか」という驚きや不安の声も少なくなかった。家庭用RPGとして国民的人気を築いてきたシリーズだけに、オンライン専用という大胆な挑戦は大きな転換点だったのである。
しかし、その後の『ドラゴンクエストX』は定期的な大型アップデートを重ねながら世界を拡張し続け、14年以上にわたってプレイヤーが同じ世界で冒険を続けられる作品へと成長した。そして今回、新たな世界「ユーマグラム」を舞台に、主人公とキュルルが最後の戦いへ挑む物語が描かれ、長年積み重ねられてきたメインストーリーに一つの区切りが付けられる。
オンラインでも”ドラゴンクエストらしさ”を貫いた
注目すべきなのは、「物語の完結」そのものよりも、それが「ドラゴンクエスト」シリーズにおいて持つ意味である。
これまでのナンバリング作品では、新作が発売されるたびに主人公も世界も一新されてきた。『ドラゴンクエストIII』や『ドラゴンクエストV』など、それぞれの作品には印象的な物語が存在するものの、プレイヤーの実時間で例えると、各作品の冒険は数十時間で完結する。そして次回作では新たな世界が描かれるという構造がシリーズの基本だった。
一方、『ドラゴンクエストX』では、一人の主人公とともに14年間にわたって世界を旅し、数多くの仲間やキャラクターとの出会いを積み重ねながら、一つの物語を紡いできた。これはシリーズ史上前例のない試みであり、「最も長く主人公と旅を続けたドラゴンクエスト」と言ってよい存在である。
こうした長期運営が支持を集めた背景には、『ドラゴンクエスト』らしさを最後まで失わなかったことが大きい。
本作はMMORPGというジャンルでありながら、オンラインゲーム特有の競争性や効率性だけを前面に押し出すことはなかった。堀井雄二氏らしい温かみのある会話劇や、人情味あふれるシナリオ、親しみやすい世界観を軸に据えながら、近年ではソロプレイ環境の充実も積極的に進められてきた。オンラインゲームでありながら、「一人でもドラゴンクエストを楽しめる」体験を維持し続けたことが、幅広いプレイヤー層に受け入れられた理由の一つと考えられる。
もちろん、オンライン化という挑戦に対する評価は現在でも一様ではない。ナンバリング作品をオフラインRPGとして遊びたかったという意見や、サービス型タイトルであることに抵抗を感じたファンも存在する。
一方で、14年間にわたり一つの世界を育て続け、多くのプレイヤーが同じ時間を共有できたことこそ、『ドラゴンクエストX』にしか生み出せなかった価値だと評価する声も根強い。
今回の追加パッケージでは、新職業「ストームカイザー」や新コンテンツなども実装されており、サービス自体は今後も継続される予定である。そのため、本作はオンラインゲームとして終了するわけではない。あくまで長年続いてきたメインストーリーが完結するという位置付けだ。
だからこそ、この大団円は特別な意味を持つ。『ドラゴンクエスト』は約40年にわたり、日本のRPG文化を牽引してきたシリーズである。その歴史の中で、『ドラゴンクエストX』はオンラインという新たな遊び方へ挑戦しただけではない。一人の主人公と十数年にわたって歩み続けるという、これまでにない物語体験を実現した作品でもあった。
今回描かれる結末は、一つのオンラインゲームの区切りではなく、『ドラゴンクエスト』というシリーズがナンバリング作品の可能性を拡張したことを象徴する節目と言えるだろう。14年間積み重ねられてきた冒険は、シリーズ史においても唯一無二の足跡として記憶されるはずである。














