ディズニーは8月13日に公開した記事で、同社のゲーム事業には小売売上高が10億ドルを超えたフランチャイズが9本あると明かした。その一つが、スクウェア・エニックス開発の『キングダム ハーツ』である。

米アナハイムで14日に開幕したファンイベント「D23」では、最新作『キングダム ハーツIV』の発売時期が2027年後半と発表され、ディズニー・チャンネルとDisney+のアニメシリーズ制作も明らかになった。四半世紀前に他社へ貸し出したキャラクターたちが、いまディズニー自身のポートフォリオの前面に戻りつつある。

かつては「貸す側」でしかなかった

第1作の発売は2002年、プレイステーション2向けだった。野村哲也にとって初のディレクション作品であり、スクウェア・エニックスは2005年、本シリーズを『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』と並ぶ「三本の柱」と位置づけた。

一方でディズニーにとっては、”数あるライセンス案件の一つ”という見方が定説だった。当時のCEOだったマイケル・アイズナー氏は2026年7月、承認した記憶はないと語り、説明を受けて作品自体を思い出したという。累計出荷・販売本数は2010年3月の1550万本から2026年3月末には3900万本超へ伸び、2019年時点でシリーズ販売の約75%を海外が占めていた。

自社開発から撤退した10年間

ディズニー自身のゲーム事業は、この間むしろ縮小に向かっていた。

2016年には玩具連動型ゲーム『ディズニー インフィニティ』の打ち切りに伴い1億4700万ドルを計上し、開発元のアバランチ・ソフトウェアを閉鎖。コンソールはライセンスモデルへ全面移行すると宣言する。2019年にはアイガーCEOが、自社パブリッシングで成果を示せた例はないがライセンスは得意だと明言している。

転機は2024年2月だ。ディズニーはエピックゲームズに15億ドルを出資し、『フォートナイト』と相互運用する新ユニバースの構築に着手した。貸すだけの関係から、資本を伴う共同事業へ舵を切ったことになる。

数字の性質を取り違えてはならない

公式記事によれば、同部門はパートナーとの協業により、過去4年間で年間推定35億ドルの消費者支出を生み、直近の会計年度には40億ドルを超えた。

ただしこれは小売ベースの支出額であってディズニーの売上ではない。同社の2025年9月期の連結売上高は944億ドルであり、ロイヤリティ収入の実額は相対的に小さい。

それでもゲームを重視するのは、収益源ではなく入口としてである。記事では『マーベル・ライバルズ』が全世界で4000万人を集め、うち60%が24歳未満だと紹介されている。次世代の顧客が最初にディズニーに触れる場所は、もはや映画館でもテレビでもない。

往復構造が閉じる2027年

そこで意味を持つのがアニメ化だ。ゲームで育った物語を配信基盤へ戻す手法は検証済みで、ディズニー発のスマホゲームを原案とする『ディズニー ツイステッドワンダーランド ザ アニメーション』は2025年10月に配信スタート。開始7日間の視聴数でDisney+史上、世界で最も視聴された日本発アニメーションとなった。今回のアニメもディズニーとスクウェア・エニックスの共同制作で、野村が参加する。『キングダム ハーツIV』はPC、PS5、Xbox Series X|S、Switch 2で展開される。「量から質」とマルチプラットフォーム化を掲げる中期経営計画に沿う布陣であり、2027年は初代発売から25年目にあたる。

ディズニーが貸し、スクウェア・エニックスが育てたIPは、四半世紀を経て貸主のもとへ戻る。海外のファンコミュニティでは、関与の深まりを歓迎する声と介入を懸念する声が同居する。そしてこの往復が創作の追い風になるかは、2027年に判明するだろう。