ポケモンカードの買取メディア「トレカ買取ナビ by ポケリバ」(InnoVest運営)が7月29日、全国の男女587人を対象とした意識調査の結果を公表した。ポケモンカードに資産としての魅力を「感じる」と答えた人は85.3%。売却経験者に限れば、およそ7割が値上がり益を得た経験があると回答している。

だが、この調査で最も多かった回答は別にある。他の投資と比べた印象を問う設問で、「わからない」が33.9%と最多を占めたのだ。

資産だという実感が広がった。しかし、それを株式や投資信託と並べて評価する物差しは、まだ用意されていない。調査結果の要点は、8割超という数字よりもむしろこの空白にある。

二度の高騰と一度の暴落が生んだ実感

ポケモンカードゲームの発売は1996年10月。今年10月に30周年を迎える。資産としての認識が広がった直接の起点は2020年から21年にかけての高騰で、著名人の参入と巣ごもり需要が重なり、遊ぶための商品が値のつく商品へと読み替えられた。2023年半ばには反落し、鑑定済みの人気カードが8割超下落する例も出たが、2025年8月開始の「MEGAシリーズ」以降は再び上昇に転じている。円安を背景に海外のコレクターが日本語版を買い増したことも大きい。

今年2月には、米オークション会社ゴールディンで初期の希少カード1枚が約25億2800万円で落札され、トレーディングカードの史上最高額を更新した。5月以降発売の拡張パックは原材料費高騰を理由に180円から200円へ値上げされ、公式通販では抽選販売や受注生産が繰り返されている。定価では買えないという前提が、流通の側にも定着しつつある。85.3%という数字は、こうした6年間の値動きを一巡した末に形成されたものだ。

香港ではすでにファンドが組まれている

金融の側からの接近も始まっている。香港上場のミームストラテジーは3月2日、ポケモンカードに特化した世界初のトークン化ファンドを組成した。香港証券先物委員会の免許を持つプラットフォームを通じてプロ投資家限定で販売され、応募超過となっている。投資対象はポケモン社とゴッホ美術館のコラボによるピカチュウの鑑定済みカード1種に絞られ、流通量の4分の1に相当する規模の取得を目指すという。同カードは2023年末の発売以降、4倍超に値上がりしたとされる。

トレーディングカードゲーム市場は2025年の147億ドルから、2031年には374億ドル規模に達するとの予測もある。機関投資家向けの器は、すでに用意され始めている。

欠けているのは中間の物差し

一方、日本国内でポケモンカードは金融商品ではない。1枚30万円以下の売却は生活用動産として非課税、それを超えれば譲渡所得となり、継続的に売買すれば事業所得と判断される。分離課税も損益通算もNISAも適用外で、申告の要否は保有者の自己判断に委ねられている。

価格の指標も、買取業者の相場表とフリマアプリの実売価格が事実上の代わりを務めているにすぎない。上では機関投資家向けの制度化が進み、下では個人の実感が広がる。中間にある共通言語だけが空いている。

調査主体が買取事業者である点は割り引いて読む必要がある。それでも、周囲に資産目的の保有者がいると答えた人が42.1%に上ったことは、収集と投資の動機が分離しつつある現実を示している。

30周年は需要の頂点であると同時に、記念商品の大量供給と利益確定売りが重なる変曲点にもなりうる。抽選販売も値上げも、需給の調整であると同時に、遊ぶ人が締め出されることへの防衛策でもある。数字が示したのは資産化の完了ではなく、その途上の景色ではないだろうか。