ゲーム販売プラットフォームSteamの勢いが止まらない。市場調査会社Alinea Analyticsの推計によれば、2026年上半期にSteamで販売されたゲームの総売上は111億ドル(約1兆7900億円)に達し、前年同期比14.5%増を記録した。年末商戦を含む2025年下半期を上回る過去最高の半期売上となり、約10年前と比較すると市場規模は約5倍へと拡大したという。なお、この数字はValveの公式発表ではなく、公開データをもとにした推計値である。

このニュースは、PCゲーム市場が成長を続けていることを示すものだ。2026年上半期に発売された新作タイトルの売上は全体の21%にとどまり、残る約8割は既存タイトルによるものだった。新作が市場を牽引するという従来のイメージとは異なり、現在のSteamでは、バックカタログが売上の大半を占める収益構造が形成されつつある。

「発売日」ではなく「資産価値」が競争力になる時代

今回のデータは、ゲーム業界における価値の源泉が「発売日」から「資産価値」へ移りつつある可能性を示唆している。

パッケージ販売が中心だった時代は販売機会が発売直後に集中しやすく、ヒットの成否も初動売上によって語られることが少なくなかった。一方、デジタル流通が一般化した現在では、作品はストア上で継続的に販売され、セールや大型アップデート、新作発売、動画配信などをきっかけに、何度でもユーザーとの接点を得られるようになっている。

Steamは、ゲーム業界においてこうしたロングテール型市場構造を象徴する代表的なプラットフォームとなっている。シリーズ最新作の発売によって旧作が再び注目を集めたり、協力プレイ作品が動画配信を契機に数年前のタイトルまで販売を伸ばしたりする例は珍しくない。また、大型セールやレコメンド機能も、既存タイトルと新たなユーザーを結び付ける仕組みとして機能していると考えられる。

「巨大なゲーム資産」を持つことがプラットフォームの価値になる

こうした変化は、パブリッシャーの販売戦略にも影響を及ぼしている。近年では独自ランチャーを展開してきた大手メーカーもSteamへの展開を強化する動きが見られ、その背景にはユーザー数の多さだけではなく、長期間にわたって作品を販売できる市場としての魅力があるとみられる。また、カプコンが近年の決算でPC向け売上比率の拡大を示しているように、PC市場は大手メーカーの事業戦略においても存在感を高めている。

約10年前、Steamは「PCゲーム最大級のストア」として語られていた。しかし現在、その役割は単なるオンラインストアにとどまらない。膨大なゲーム資産を蓄積し、それらを長期にわたって収益化する巨大なプラットフォームへと進化しつつある。

今回の調査結果が示したのは、市場規模の更新という事実だけではない。少なくともSteamという巨大プラットフォームでは、「どれだけ新作をヒットさせるか」に加え、「既存タイトルをいかに長期的に収益化できるか」が競争力を左右する時代へ入りつつあることを示すデータと言えるだろう。今後は、膨大なゲーム資産をどのように循環させ、新たな価値を生み出していくのかが、Steam、そしてパブリッシャー双方にとって重要なテーマとなりそうだ。