格闘ゲーム最大の祭典「EVO 2026」が、6月26日から米ラスベガスで開催される。今年のEVOは競技シーンそのものだけでなく、イベントを取り巻く構造変化にも注目が集まっている。参加登録者数は前年比約32%減。さらに2026年は、サウジアラビア政府系プロジェクトによる完全買収後、初の本格開催となる。

EVO 2026は2026年6月26日から28日にかけて米ラスベガスで開催され、メイン種目には『ストリートファイター6』『鉄拳8』『GUILTY GEAR -STRIVE-』など12タイトルが採用されている。

今年の登録競技者数は5,774人。前年の8,541人から約32%減少した。近年のEVOにおいても大幅な減少幅であり、コミュニティ内では背景への関心が高まっている。

運営体制の変化も大きな話題だ。2026年2月、サウジアラビアの大型都市開発プロジェクト「Qiddiya City」傘下のRTSがEVOの全株式を取得し、サウジ資本による完全保有イベントとなった。

EVOは1996年から続くオープントーナメント形式を維持しており、プロ・アマチュアを問わず誰でも参加できる点が特徴だ。運営側はコミュニティ主導の文化を尊重する姿勢を示しているが、一部の著名キャスターやコミュニティ関係者からは懸念の声も上がっている。

また近年のEVOは、日本版のEVO Japanをはじめフランスやシンガポールなど国際展開を進め、サウジアラビアの大型イベント「Esports World Cup」との連携も強化されている。

単純な「反発」では説明できない

参加者減少を、「サウジ資本への反発」という単純な構図で理解するのは適切ではない。現時点で参加者減少と買収の直接的な因果関係を示すデータはなく、タイトルのライフサイクル、渡航費の高騰、競技イベントの増加、地域大会の充実など複数の要因が重なった可能性が高い。

それでも今回の出来事は、eスポーツ業界における本質的なテーマを浮き上がらせている。「コミュニティ主導型エンターテインメント」と「巨大資本による事業運営」がどう共存するのか、という問題だ。

格闘ゲームコミュニティは、ゲームセンター文化や草の根大会を起源とする特殊な歴史を持つ。EVOも企業設計の競技リーグではなく、プレイヤーたちが育ててきたイベントである。

だからこそ議論は「誰が出資しているか」だけでなく、「誰が所有し、誰が意思決定するか」というガバナンスの問題に向かう。これはSNSやクリエイターエコノミーでも見られる現象であり、ユーザーは機能や利便性以上に、運営の価値観を重視するようになっている。

さらに格闘ゲームシーン自体も変化している。かつてEVOは唯一の到達目標だったが、現在は地域大会、オンライン大会、Esports World Cupのような国際イベントが並立し、EVOは最大級でも「唯一の選択肢」ではなくなりつつある。これはゲーム業界全体が抱える「供給過剰」の問題とも重なり、タイトルも大会も増える一方でユーザーの可処分時間は増えていない。

資本が買えるもの、買えないもの

映画祭、音楽フェス、SNS、そしてeスポーツ大会——あらゆるコミュニティビジネスで最も価値ある資産は、ユーザー同士の関係性だ。

QiddiyaやEsports World Cupが示すのは、eスポーツを国家戦略レベルで運営する新しいモデルである。潤沢な資本は大会規模や賞金、グローバル展開を後押しするだろう。しかし問われるのは、巨大資本がコミュニティ文化を取り込むのか、それともコミュニティ文化が運営方針を変えていくのか、という点だ。

EVO 2026の参加者数はその答えを示すものではなく、これから始まる長期的な変化を映す最初のシグナルと捉えるべきだろう。

「熱狂は資本によって再現できるのか」。EVOを巡る議論は、現代のエンターテインメント産業全体に共通する問いを投げかけている。