全米脚本家組合の東部支部(WGAE)は10月20日、AIモデルの学習データとして脚本が利用されるのを防ぐことを目的とした対策ツール「Cloak」との提携を発表した。

WGAE会員はCloakを無料で利用でき、非会員はギルドに脚本を登録すれば10ドルを支払うことで利用可能。CloakのAIソフトウェアは、書式を維持したまま、大半のAIモデルによるスクレイピング(ウェブコンテンツから特定のデータを自動抽出)を防止し、AIモデルが作家の作品を学習しにくくする。

この取り組みは、無断で脚本を用いてAIモデルが訓練されてきたことへの対応であり、WGAEはAIモデルの訓練に脚本を使用することはフェアユース(公正な利用)には該当しないと主張し続けている。

同労組は、映画制作プロセスへのAI導入に対して概して抵抗を示してきた。7月には、多文化コミュニティに焦点を当てた米映画祭「アーバンワールド」が、AI生成の映画や短編映画を対象とした部門の導入を決定したことを受け、12年間にわたる提携関係を終了。2023年の148日間にわたるストライキでは、AI問題をハリウッドのスタジオとの交渉における主要な争点の一つとした。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「AIに作品を学習されたくないクリエイターの自衛策は、画像の世界が先行してきた。イラストレーターの間では、画像に人間には見えない加工を施してAIの学習を妨げる「Glaze」などのツールがシカゴ大学の研究チームから登場し、広く使われている。今回の「Cloak」は、その脚本版といえる存在だ。書式を維持したままスクレイピングを防ぎ、AIが作品を学習しにくくする。注目すべきは、個人がばらばらに使うのではなく、全米脚本家組合の東部支部(WGAE)という労働組合が提携し、会員に無料配布する形を取ったことだ。組合が交渉で勝ち取る「契約上の保護」と、技術による「物理的な防御」の二段構えになる。音楽業界でもAI学習を巡る訴訟や検出技術への投資が続いており、分野を越えて「作品を守る技術」そのものが一つの市場になりつつある。日本のクリエイター団体にも参考になる動きではないだろうか。」