コジマプロダクションは9月10日、開発中の新作『PHYSINT』について、Xboxとの連携を拡大すると発表した。同作はこれまでソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)との協業で進められてきたが、パブリッシャーがXboxへと変わる。発表済みの大型タイトルが開発途中で競合プラットフォームへ移るのは異例だ。
そもそも『PHYSINT』とは何か
『PHYSINT』は、2024年2月1日に配信されたSIEの情報番組「State of Play」で発表されたアクション・エスピオナージ(諜報)ゲームだ。「メタルギア」シリーズの生みの親である小島秀夫氏が、自ら「集大成」と語った完全新規IPである。
2025年9月には主人公のポスターアートとともに、浜辺美波さん、マ・ドンソクさんらの出演も明らかになっていた。SIEにとっても『DEATH STRANDING』に続く提携案件であり、発表から1年半ぶりとなるこの情報公開は、開発の進展を示すものとして受け止められた。
6月に突然届いた「キャンセル」通達
流れが変わったのは今年6月中旬だという。小島氏は自身のXで、SIEから制作中の『PHYSINT』をキャンセルするとの通達が突然届いたと明かした。
同氏は制作を止めないため約3か月にわたり新たなパートナーを模索し、多方面と交渉を重ねた末、「未来のビジョンを共有できる相手」としてXboxを選んだ。SIEも公式Xで撤退を認め、難しい判断だったとしたうえで、30年にわたり築いた関係は今も強固であり、今後も小島氏との提携を継続したいとコメントしている。
SIE側で続いていた「精査」の流れ
SIE側の判断も、突発的なものとは言い切れない。同社は2024年以降、開発体制の見直しを続けてきた。
同年2月には全社員の約8%にあたる約900人の削減と、London Studioの解散を発表。10月にはオンラインシューター『CONCORD』の不振を受けてFirewalk Studiosを閉鎖し、2025年1月にはBend StudioとBluepoint Gamesが手がけていたライブサービス作の中止が明らかになった。
2026年2月には、そのBluepoint Games自体の閉鎖も伝えられている。採算の見通しが立たない案件を早期に切る姿勢が、社外案件にも及んだ形と見ることはできる。
受け皿となったXbox側の事情
Xboxにとって、コジマプロダクションは初めての相手ではない。2023年に発表されたホラーゲーム『OD』は、すでにXbox Game Studiosとの共同プロジェクトだ。今回はその関係を『PHYSINT』にも広げた形となる。
加えてXboxは2026年2月、12年にわたり指揮を執ったフィル・スペンサー氏が退任し、AI部門出身のアーシャ・シャルマ氏が新CEOに就任したばかり。同氏は就任から2か月後の4月に小島氏と面会したことをXで報告しており、新体制が象徴的な看板タイトルを取りに動いた格好といえる。今回の提携はゲームにとどまらず、映画やテレビの分野にも広がるという。
「独占」が薄れた時代だからこその決着
かつてなら、プラットフォーマーによる中止通達は、そのまま作品の消滅につながることが多かった。今回それを免れた背景には、独占という概念そのものの変質がある。
Microsoftは自社タイトルをXboxとWindows PCで同時展開するのが標準で、近年は他社機への供給も進めてきた。壁が低くなったぶん、パブリッシャーは乗り換えの効く相手になったともいえる。
作家性の強い大型作品でも投資判断ひとつで打ち切られる現実と、それでも制作を続けられる環境。今回の一件は、その両面を同時に示している。小島氏は自身のXで「制作を継続していますので、心配しないでください」と呼びかけている。SIEが手を引いた以上、PlayStation向けに出るかどうかも含めて未知数だ。














