今年NBCユニバーサルから分離・独立したケーブルネットワーク会社ヴァーサント(Versant)は9月9日、傘下のニュース専門放送局「MS NOW」(旧MSNBC)がD2C(消費者直販)ストリーミングプラットフォームを立ち上げ、サブスクリプション型メンバーシップサービスを開始すると発表した。設立30年の歴史を持つニュース放送局が、D2C時代へ突入する。

新たなメンバーシップサービスは、従来の一方通行なニュース体験を、双方向の対話に変える機能を備える。会員は24時間365日配信される動画コンテンツを視聴できるほか、ライブQ&Aセッションを通じてトップパーソナリティと直接対話できる機会が毎日2回用意されており、ニュースや共通の関心事を通じてメンバー同士が直接交流することも可能だ。

MS NOWは新体制において、デジタルおよびソーシャルメディアに注力している。YouTubeとTikTokでの年間累計再生回数は32億回を突破し、ポッドキャストのダウンロード数は年初から8,000万回超を数える。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「米国で、設立30年のニュース専門局MS NOW(旧MSNBC)が、視聴者への直販(D2C)配信と会員制サービスを始めた。日本でいえば、老舗の報道チャンネルが「局の公式ファンクラブ兼配信」を開くような話である。中身が興味深い。24時間の動画配信に加え、看板キャスターと視聴者が直接対話するライブQ&Aを毎日2回、会員同士の交流の場まで用意した。一方通行の放送から、双方向の会員コミュニティへの転換だ。背景には、ケーブルテレビの衰退がある。米国の報道局は長らくケーブル契約料で潤ったが、その土台が崩れ、視聴者から直接お金をもらう道を探すほかなくなった。日本のテレビ局も、広告収入の先細りという同じ坂の途中にいる。報道は特に「無料が当たり前」の領域だが、解説や対話、コミュニティなら会費が成り立つかもしれない。ニュースの「ファンビジネス化」は成立するか。30年の名門の実験は、日本のニュース番組の将来にとって先行事例になるかもしれない。」