『テレタビーズ』など数多くのファミリー向けエンターテインメント作品を所有・管理するカナダのワイルドブレインは、キャラクター体験の具現化に注力する生成AIスタートアップ企業「パーソナリティAI」の全株式を取得した。取引額は最大7,000万ドル(約111億5,000万円)。

パーソナリティAIは昨年、アマゾン・ドット・コムの子供向け定額サービス「Amazon Kids+」向けに、ハズブロと共同開発したインタラクティブな音声体験「Hey Peppa Pig」を提供。このサービスでは、同ブランドの公式シリーズをモチーフにしたゲームやアクティビティを通じて、子供たちがペッパピッグと会話できる。

パーソナリティAIの取得により、グローバルなライセンス事業、フランチャイズ管理、コンテンツ制作といったワイルドブレインのプラットフォームに、一度構築すればどこにでも展開可能な「安全性を設計段階から組み込んだ」スケーラブルなキャラクター体験が加わることとなる。従来のライセンスやコンテンツの枠を超え、エンターテインメントIPを通じて消費者とのより深いエンゲージメントを実現する。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「この買収で最も重い言葉は、「安全性を設計段階から組み込んだ」という一節だろう。子どもとAIが自由に会話する——親の立場なら、夢より先に不安がよぎる。不適切な発言をしないか、個人情報を聞き出さないか、依存させないか。汎用のチャットAIをそのまま子どもに渡せないことは、業界の共通認識である。パーソナリティAIの価値は、まさにこの壁を越える設計にあると見られる。ペッパピッグの音声体験は、ハズブロと組みAmazonの子ども向けサービスで実運用されてきた。キャラクターの人格を守り、話題を安全な範囲に保ち、親の信頼に応える運用実績は、技術のデモとは重みが違う。生成AIの子ども市場は、性能ではなく信頼が参入障壁になる特殊な領域だ。約111億円という値段は、AIの技術というより、この「安全に運用できる実績」への対価だろう。キッズ向けAIの成否は守りの設計で決まる。その相場観を示した買収である。」