ゲームセンター運営のGENDAは8月24日、サンリオと業務提携契約を締結したと発表した。国内外で展開する1万4000箇所超のアミューズメント施設やゲームコーナーで、サンリオIPの限定景品を増やし、北米での出店やプロモーションも共同で検討する。

ハローキティが強すぎるという問題

サンリオは2035年3月期までに北米市場シェア10%を掲げている。だが同社の辻朋邦社長によれば、北米のキャラクターライセンスシェアは現状3〜4%程度で、うち60%強をハローキティが占める。ひとつのキャラクターだけで3%超えは難しく、クロミやシナモロールを伸ばさなければ10%には届かないという。

ここでの問題は知名度ではなく、キティ以外をどう売るかにある。2026年3月期は売上高1940億円。調整後の営業利益784億円となり、5期連続の増収増益。絶好調のさなかに手を打ったことが、課題の差し迫り具合を示す。

クレーンゲームは低コストの実験場になる

キティ以外を育てるには、多くのキャラクターを少量ずつ、短い周期で試せる場が要る。その点、クレーンゲームの景品はこの条件にマッチしていると言えるだろう。風営法の解釈運用基準で景品の小売価格はおおむね1000円以下と定められており、単価が抑えられる分、投入と入れ替えを速く回せるからだ。

フリューのインタビュー調査では、ファンシーキャラクターを好むプレイヤーが、比較やレビュー確認をほとんど経ず、店頭で「かわいい」と感じた瞬間にプレイする行動が示唆されている。知名度がなくても、並べれば反応をその場で確かめられる。

この検証を全米規模で回せる点において、サンリオがGENDAと組む意味は十分にある。北米の施設とミニロケは合わせて約1万3000箇所。ミニロケは大手小売店などの店内にある無人のゲームコーナーで、そこを目的に来店する必要がない。

「投げ売り」の教訓と矛盾しないか

もっとも、ポジティブな予測だけでなく不安もある。サンリオは2010年代前半、北米のキティブームに乗って量販店にライセンス商品を大量供給し、キティは「どこにでもある存在」と受け止められて足場を失った。近年の復活は、この投げ売りから抜け出したことによる。供給を絞って立ち直った会社が、今度は最も広い売り場に乗り出す形だ。

それでも同じ失敗を繰り返しにくいのは、景品が売り物ではなく、獲得という手続きを挟むからである。値札が付かない以上、安売りで価値が下がることもない。発表文で「限定景品」が繰り返されるのも、希少性を保つ設計が前提にあるからだろう。長期ビジョンには、ファンが同社に触れる時間の合計を示す「サンリオ時間」年間3000億時間という指標もある。遊ぶ時間そのものが、この指標と直接噛み合う。

GENDA側の計算

こうした状況下でGENDAが狙うのは、1拠点あたりの売上を上げることだ。

2024年に約48億円で取得した米ナショナル・エンターテインメント・ネットワーク(現Kiddleton US)は約8000箇所を抱えるが、買収時点の1拠点あたり売上はグループ内のKiddletonの3分の1にとどまっていた。

日本式のIP景品への入れ替えがこの差を埋める主な手立てで、サンリオはその切り札にあたる。通期計画には北米で約10億円の下振れ要因が織り込まれており、てこ入れは急務だ。プライズ企画のフクヤを傘下に持ち、2026年5月にはキャラクターグッズのトーシンパック取得も決議した。企画から製造、流通までを自前で握る体制はすでに整っている。

ただし今回は資本を伴わない業務提携で、独占の取り決めがあるかは公表されていない。競合が同じIPを扱う余地は残る。差がつくのは、限定景品をどれだけ速く、多く投入できるかだろう。

米国のプライズ需要も、ラウンドワンの27年3月期第1四半期で米国事業が減益になるなど、拠点を増やせば伸びる段階ではなくなりつつある。キャラクターを増やす効果が需要の鈍化を上回ることができるのか。北米シェア10%への最初の実験は、クレーンゲームの筐体の中で始まる。