米Netflixが8月13日(現地時間)、傘下のゲームスタジオ2社の閉鎖を明らかにした。対象は『Oxenfree』で知られるロサンゼルスのNight School Studioと、ヘルシンキのMoonloot。社内チームでも規模非公表の人員削減が行われる。

特筆すべきはそのタイミングだ。Night Schoolは6月30日、スマホをコントローラーに使うクラウド型ホラー『Unhinged』を出したばかりだった。7月16日の第2四半期決算説明で、グレッグ・ピーターズ共同CEOは同作を『FIFA World Cup: Launch Edition』と並べ「最も成功したクラウドゲームのデビュー2作」と評価していた。称賛から4週間での解散だ。

名が挙がった一方の『FIFA World Cup』も無傷ではない。開発元の米Refactor Gamesは8月上旬、共同出資元Delphi Interactiveの資金引き揚げで従業員の85%を解雇した。決算で名指しされた2本の制作現場がそろって崩れた形だ。

2021年に始動したNetflixのゲーム事業

Netflixのゲーム事業は2021年に始動した。同年9月、初のスタジオ買収としてNight Schoolを傘下に収め、以後Next Games、Boss Fight、Spry Foxを買収。『Halo』『Overwatch』の古参開発者を集めたAAA専任スタジオTeam Blueも立ち上げたが、こちらは1本もリリースせず2024年10月に閉鎖。Boss Fightも25年10月に閉鎖、Spry Foxは同12月に創業者へ売却された。残るのはパーティーゲーム中心のNext Gamesと、外部開発者と組む中央チームだけだ。

見落とせないのが、その間のM&Aの挫折だ。同社は2025年12月、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の映画・配信事業を負債込み827億ドルで買収すると発表。『ホグワーツ・レガシー』などを擁するWB Gamesも対象で、IP不足を一挙に埋める取引だった。だが2026年2月、価格競争でパラマウント・スカイダンスに敗れ撤退した。IPを買う道が閉ざされた約半年後、自前で作る組織も畳んだ格好だ。

リビングの可処分時間だけが残る

同社が示した重点領域はキッズ、パーティー、ナラティブ、メインストリームの4つだが、伸びているのは前2者だ。第2四半期時点でクラウドゲームの月間アクティブ数は2025年10月比11倍、キッズ向けモバイルゲームのエンゲージメントは前年比600%増。4月にはキッズ専用アプリ「Netflix Playground」も投入した。

同社にとってゲームは収益源ではなく、解約を抑える装置だ。ピーターズ氏もゲーム投資は「コンテンツ支出全体に比べ非常に小さい」と述べる。評価軸が視聴継続率である以上、30分で完結する作家性の高いホラーより、毎晩起動されるパーティーゲームが構造的に勝つ。作品の出来は問題ではなかった。

同じ結論に至った企業は少なくない。Googleは2021年に内製スタジオを解散し、23年にStadia(クラウドゲーム事業)を畳んだ。Amazonも2025年秋にAAAタイトルとMMOの自社開発を大幅に縮小した。Apple Arcadeは当初から内製を持たない。制作能力の内製化は、配信企業の損益構造と噛み合わないのだ。

一方でNetflixは日本時間8月28日、『グランド・セフト・オートVI』の新映像をYouTubeに6時間先行して独占公開する。自ら作らずとも話題は集まる。取りにいっているのは開発力ではなく、テレビの前の可処分時間だ。そうした状況下において冒頭で述べたRefactor Gamesの例が示すのは、「納品後の関係を契約でどう担保するか」という課題である。