全米脚本家組合(WGA)は4月4日、映画スタジオやストリーミングサービスを代表する全米映画テレビ制作者協会(AMPTP)と、最低基本協定(MBA)で暫定合意したと発表した。有効期間は4年と、通常よりも1年長い。これはスタジオにとって大きなメリットで、ストライキの可能性を排除した上で、1年分の猶予期間を確保できることになる。

合意内容の詳細は明らかにされていないが、長らく問題を抱えてきた組合の医療・年金基金への巨額の資金注入が含まれているという。WGAは今回の交渉でこのほか、ストリーミングの二次使用料やテレビ番組の最低スタッフ配置基準など2023年に達成された成果のさらなる改善や、脚本がAIのトレーニングに使用された場合の報酬支払いも求めていた。WGAは暫定合意の声明の中で、新たな契約は「2023年の成果を基盤とし、無償労働の問題への対処にも寄与するもの」だと述べている。

今回のAMPTPとWGAとの交渉は、148日間にわたるストライキに突入した前回(2023年)とは打って変わり、早期合意に至った。AMPTPは今後、全米俳優組合(SAG-AFTRA)および全米監督協会(DGA)とも合意に達する必要がある。いずれも現行契約期間は6月30日まで。WGAの合意は、他2労組の交渉のモデルケースとなる可能性がある。なお、WAGとの早期合意を受けて、SAG-AFTRAは、AMPTPとの交渉再開を4月27日へと早めた。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「AIと脚本をめぐる労使交渉が、ひとつの節目を迎えた。WGA(全米脚本家組合)とAMPTP(全米映画テレビ制作者協会、NetflixやAmazonなど主要スタジオ・配信企業の業界団体)が早期合意に達した。

前回2023年は148日間のストライキに突入し、AIによる脚本生成や著作物の無断学習利用への危機感が主要な争点の一つだった。今回はその教訓を踏まえ、脚本がAI学習に使われた場合の報酬支払いという論点を盛り込みながら早期合意に至った。

音楽業界でもSunoやUdioとの交渉が続くが、そちらはレーベルがアーティストの代表として交渉テーブルに座る構造だ。WGAのように脚本家自身が組合を通じて直接交渉する映像業界とは、権利保護の構造が根本的に異なる。

SAG-AFTRA(全米映画俳優・テレビ・ラジオ芸術家組合)とDGA(全米監督協会)の交渉期限が6月30日に迫る中、WGAの合意内容はモデルケースとして機能する。コンテンツ産業でAIと人間のクリエイターが共存するルールが、少しずつ形になっていく。」