米金融大手ゴールドマン・サックスは10月15日、世界の音楽産業の予測レポート「Music in the Air」の最新版を公表。世界の音楽ソフトの権利者収入は、2035年までの年平均成長率(CAGR)が5.9%となり、同年に561億ドル(約8兆8,684億円)に達するとの見通しを示した。2022年以来初めて予測値を引き上げた。

音楽業界全体を見ると、小売売上高(音楽ソフト・出版・ライブ)は、2026年に6.7%拡大すると予想。2025年から2035年にかけてのCAGRは5.8%となり、2025年の1,125億ドルから2035年には1,981億ドルに拡大するとみている。

ゴールドマン・サックスは業界全体の収益動向について楽観的な見通しを示す一方、レーベル(音楽権利の所有者)については「生成AIが音楽制作の参入障壁を大きく下げることによる市場シェアの希薄化という構造的なリスクに直面している」ことから慎重な評価を下している。

一方、DSP(デジタル配信サービス)各社の加入者数の増加と価格引き上げには依然として余地があり、広告付き有料プランの導入も有効な手段となる可能性があると分析。AIについては、AI関連のライセンス、制作ツール、新たな収益化の機会により、2035年までに音楽ソフトの収益を約10%押し上げる可能性があると推定している。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「このレポートの数字は、修正の履歴とセットで読むのが正しい。ゴールドマンはストリーミング全盛の2016年から2022年まで、2030年の録音音楽市場の予測を約360億ドルから約530億ドルへと、ほぼ毎年引き上げ続けた(2020年のみ小幅な引き下げ)。だが成長鈍化が鮮明になると一転、2024年には成長率の実績4.8%が予想8.9%を大きく下回る「予測開始以来初の大幅な下振れ」を喫し、昨年版ではストリーミングの年平均成長率予測を10%から7.9%へ切り下げた。そして録音市場の伸びが6.4%増へ加速し、自らの予想5.8%を上回った今年、4年ぶりの上方修正である。つまりこの予測は、直近の勢いを10年先へ延長する「市場の体温計」に近く、後追いの印象は否めない。注目すべきは強気の中身だ。報告書は権利保有企業より配信・ライブ関連企業を選好すると明記しており、投資家が見る価値の重心が、権利からプラットフォームへ移りつつあることも映している。」