英国人歌手のレイ(Raye)は10月13日、X(旧Twitter)に投稿したメッセージの中で、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開催予定のワンオフ・ショーの先行販売で、ダフ屋がAIボットを使って「数十万件の偽の登録」を行ったと主張。5,000席の枠に180万件の登録が殺到し、申し込みシステムが機能不全に陥ったと明かした。

10月23日に開催される同公演ではアルバム「This Music May Contain Hope」の全曲がザ・ヘリテージ・オーケストラおよびフレイムズ・コレクティブとの共演で披露される予定。先行販売登録は、ファン向けマーケティングプラットフォーム「co:brand」が運営する登録ページを通じて行われた。

ダフ屋による悪用を防ぐため、レイのチームは登録リストを手作業で審査し、「真のファンであると判断した人々」を候補リストに選出。英ライブ音楽専門誌IQによると、手動による審査の時間を確保するため、先行販売の開始時刻が2時間遅らせられた。

同会場の公式チケット販売サイトで行われた先行販売では、開始直後に500万件のアクセスが殺到。チケット購入を試みたファンが45分間購入手続きを完了できなかったため、緊急調査が開始されたという。

レイは「これほど大規模なボットの活動は、これまで見たことがない。チケット販売の将来がどうなるかは分からないが、私とチームは今後何ができるか真剣に考えていくつもりだ」と述べた。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「チケットを買い占めるボットは昔から存在した。今回の新しさは、その精度と規模である。レイの証言によれば、ダフ屋はAIを使って「数十万件の偽の登録」を生成した。従来のボット対策は、機械的なアクセスの検知を前提にしてきたが、生成AIは人間らしい登録情報を無数に作り出せる。本物のファンと見分けのつかない偽者が、列の大半を占める事態が現実になったわけだ。会場のロイヤル・アルバート・ホールは、2024年には24時間で3,800万件超のボットリクエストを遮断したと明かし、「法律が追いつく必要がある」と訴える。折しも英国では、額面を超えるチケット転売を禁じる法案の準備が進む。技術の軍拡競争と法規制の整備、その両輪が揃わなければ、5,000席に180万件が殺到する狂騒は繰り返されるだろう。「これほどのボット活動は見たことがない」というレイの言葉は、ライブ産業全体への警報である。」