大手レコード会社と著作権訴訟で争っている音楽生成AI「Suno」が、新たに2人の音楽業界のベテランを迎えた。Sunoは過去12カ月で音楽業界の元幹部を5人採用している。同社の発表を元に、Music Business Worldwide(MBW)などが7月7日伝えた。

YouTubeでメジャーレーベル向けの事業開発を率いていたクリスチャン・ボーン氏を、ディレクター兼音楽事業開発責任者に採用。アトランティック・レコードでクリエイティブ・マーケティング担当エグゼクティブ・バイスプレジデントを務めていたグレース・ジェームズ氏は、バイスプレジデント兼アーティスト・マーケティングおよびエディトリアル責任者に就いた。

ボーン氏は今後、Sunoのライセンス戦略および業界パートナーシップを統括。
同氏はYouTubeで音楽関連製品を中心にライセンス取得と立ち上げを担当し、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を音楽業界の収益化チャネルとして確立する助けとなった。

ジェームズ氏は、Suno全体のアーティスト・マーケティングを統括するとともに、6月に開始となったアーティスト育成プログラム「Spark」の一環として、インディーアーティスト支援のキャンペーンを企画・立案する。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「音楽を自動で作るAI「Suno」が、大手レコード会社の元幹部を次々と採用している。ここに、AIビジネスの生々しい現実が透けて見える。Sunoは、楽曲を無断で学習に使ったとして、大手と著作権訴訟を抱えてきた。いわば音楽業界の「敵」だった存在だ。

だが今回、YouTubeやアトランティック・レコードで実績を積んだ業界人を、要職に迎え入れた。技術さえ優れていれば勝てる、というわけにはいかない。音楽を扱う以上、アーティストやレコード会社と手を組めなければ、事業は続かないからだ。

iTunesを立ち上げたジョブズも、トイ・ストーリーのピクサーのオーナーとして「コンテンツ業界側」の人間として音楽業界に評価されたのが大きかった。テック側だったYouTubeやSpotifyは、音楽業界人を雇って摩擦を和らげ、橋を架けた。

Sunoも同じ道をたどっている。過去12カ月で5人もの業界ベテランを集めた事実が、その本気度を物語る。技術を持つ新興企業が、業界に受け入れられる「大人」へと脱皮しようとしていることが読み取れる。」