AIを使ってゲームを「分解」し、別の環境で動くように作り直す。そんな動きが、ここ数週間で一気に広がっている。この潮流に対し、マイクロソフト傘下のゲーム事業は正反対に見える2つの反応を示した。

米国時間10月13日、XboxのAsha SharmaCEOは社内向けメモで新組織「Xbox Labs」の設立を発表した。一方、同じ傘下のBethesda(ベセスダ)側は、AIで作られたファン作品を公開停止に追い込んだと報じられている。まずは何が起きているのかを整理してみよう。

年単位の作業が一晩で

発端は、Anthropicの生成AI「Claude Opus 5.5」を使ったMODや移植の急増だ。カギになるのが「デコンパイル」である。市販のゲームは、人間が読めるソースコードを機械向けの形式に変換した状態で配られている。これを逆にたどり、人が読めるコードを復元する作業がデコンパイルだ。復元できれば、本来は想定していない機器やブラウザでも動くように作り直せる。

こうした解析は以前から有志が手がけてきたが、膨大な時間がかかった。たとえば『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の解析には21カ月を要したとされる。ところが米Kotakuによれば、AIを使えばこの作業は一晩回しておけば済むものになり、わずか2週間で『Halo』や『Call of Duty: Black Ops』など数百本のブラウザ移植が出回ったという。

同じグループで割れた対応

この動向に対し、権利者のアクションも早かった。Claude Opus 5.5を使い約5日で作られたブラウザゲーム『Fallout: New York』は、X上の動画が350万回再生されるほど注目を集めたが、ベセスダの親会社ZeniMaxから法的な通知を受け、制作者が公開を取りやめた。また、AIエージェント17体を並行稼働させて『Call of Duty: Modern Warfare 2』(2009年版)を解析したプロジェクトでは、Xに投稿された動画が著作権者の申し立てで表示停止になったと報じられている。

ZeniMaxもActivisionも、マイクロソフトがそれぞれ2021年と2023年に買収した企業だ。つまり、同じ企業グループが一方では作品を止め、もう一方では新組織を立ち上げたことになる。

「止める」と「取り込む」は矛盾しない

ただ、両者は必ずしも矛盾しない。ベセスダはファンMODに比較的寛容なことで知られ、今回止められたのは、Falloutの名前や世界観をそのまま使い、ドメイン名にまで商標を掲げた作品だった。対してXbox Labsが向き合うのは、個々の作品ではなく技術そのものである。

Sharma氏はメモで、Windows向けのゲームがApple製チップ搭載機やブラウザで動くよう作り替えられた事例に触れ、ソフトとハードの結びつきという業界の前提が揺らいでいると指摘した。そのうえで、古いゲームに新たな命を与え、より多くの人が作り手になれることは、既存のビジネスモデルを揺さぶるとしても「プレイヤーにとって良い結果」だと評価している。新チームはCTOのScott Van Vliet氏が率い、開発者・エンジニア・研究者の少人数で構成される。

同時に、IPの「責任ある管理者」であり続ける方針も明記した。無断の配布は権利者として止めつつ、その技術は自社で使いこなす。なお、メモは「エージェント」には言及しつつも、「AI」という言葉を直接使っていない点も話題になった。

日本企業にも無関係ではない

ゲームを解析すること自体と、出来上がったものを配布することは法的に別の問題で、線引きは国や事例によって異なる。また、旧作の移植を誰でも短期間で作れるなら、メーカーが手がけてきたリマスターや移植ビジネスの価値も問い直される。日本企業だけに限らず、膨大な過去作を抱えるメーカーにとって、AIは脅威にも道具にもなりうるだろう。