マイクロソフトのゲーム事業「Xbox」が10月8日、新部門「XP」の設立を発表した。ゲームの映像化やグッズ展開、ブランド提携、ライブイベントなど”ゲームの外側”の事業を一手に担う組織だ。トップには、『マインクラフト』の開発元Mojang Studiosで社長を務めたケイリーン・ウォルターズ氏が就いた。
4つの「P」で”ゲームの外側”を束ねる
名称はゲーム用語の「経験値(Experience Points)」にかけたものだ。部門は4分野で構成される。映画・ドラマなどの映像化を担う「Xbox Pictures」、グッズやライセンス商品の「Xbox Products」、ライブイベントや配信、テーマパークなどの体験を扱う「Xbox Places」、クリエイターやブランドとの提携を担う「Xbox Partnerships」で、いずれも「X+P」の組み合わせになっている。
これまで社内の複数チームに分散していた機能を束ねた形だ。Xboxは2021年にベセスダ、2023年にアクティビジョン・ブリザードを傘下に収め、『フォールアウト』『コール オブ デューティ』『ディアブロ』など膨大なIPを抱える。アーシャ・シャルマCEOは社内向けメッセージで「フランチャイズは、遊ぶ時間以上の意味を人々にもたらしうる」と述べた。IPとファンの接点をゲームの外にも広げるのがXPの役割となる。
追い風は『マインクラフト』映画の成功
ウォルターズ氏は米ルーカスフィルムで13年間『スター・ウォーズ』関連の事業に携わった人物だ。Mojangでは『マインクラフト』の累計販売4億2500万本超への成長に加え、グッズや映画、テーマパークへの展開を統括した。2025年の映画『マインクラフト/ザ・ムービー』では製作総指揮を務めている。
同作は世界興行収入約9億6000万ドルの大ヒットとなった。英調査会社Ampere Analysisによれば、公開月の4月にはゲームの月間アクティブユーザーが30%増え、その54%はしばらく遊んでいなかった休眠プレイヤーだったという。映像がゲームに人を呼び戻したこの実績が、XP設立を後押ししたと言えそうだ。
ソニーは「自ら作る」、Xboxは「つなぐ」
ゲームIPの多メディア展開では、ライバルが先行してきた。ソニーは2019年に「PlayStation Productions」を設立した。IPを外部に預けず自ら開発・製作する方針で、映画『アンチャーテッド』やドラマ『THE LAST OF US』を送り出している。任天堂も『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』が2026年に世界興収10億ドルを突破した。ユニバーサル・スタジオの「SUPER NINTENDO WORLD」と合わせ、「任天堂IPに触れる人口の拡大」を進めている。
対してXPは、米ハリウッド・リポーター誌によれば自ら作品を作る制作会社ではなく、IPと外部の制作パートナーを結びつける役割を担う。Xboxはドラマ『フォールアウト』を成功させた一方、『Halo』のドラマは2シーズンで終了した。外部と組みながら品質をどう担保するかが問われる。
開発縮小と同時に進む”矛盾”
一方で足元のXboxは、2026年2月に就任したシャルマCEOのもと、「リセット」と呼ぶ大規模な再編の只中にある。7月にはXbox部門の従業員の約2割にあたる約3200人を削減し、5つのスタジオを切り離す方針を発表した。9月には『Halo』の次回作の開発をアクティビジョンへ移すことも明らかにしている。
『Hellblade』シリーズのNinja Theoryは、6月に新作『Senua』を発表したばかりだった。しかし2件の譲渡合意がいずれも成立せず、9月22日に閉鎖案をめぐる従業員との協議入りが発表された。10月上旬には、スタッフが人員削減の対象となったことをLinkedInなどで相次いで明かしている。
作る力を絞りながら、IPを広げる部門を新設する。SNSでは「まずゲーム開発に集中すべき」といった趣旨の反応も見られた。Xboxの最高戦略責任者マシュー・ボール氏は「素晴らしいゲームがフランチャイズの中心であり続ける」と強調する。だが映像やグッズが熱を保つには、核となる新作が途切れないことが前提になる。
『マインクラフト』の映画が成功したのも、遊ばれ続ける本体があってこそだった。XPが”IPの切り売り”に終わるのか、ゲームへ人を還流させる装置になるのか。その成否を握るのは、皮肉にも縮小が続く開発現場の側なのかもしれない。














