増井健仁がビジネス、エンタメ、政治など様々な分野のキーパーソンを迎え、“いま起きていること”と“これからの社会”を多角的に読み解き、新しい視点とヒントを届ける「MEDIAMIXI with interfm」。2026年10月13日放送回は、株式会社闇 創業者の頓花聖太郎氏が登場。
1981年、兵庫県生まれ。グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートし、2011年に関西の制作会社STARRYWORKSへアートディレクターとして入社。大好きなホラーを仕事にするため、2015年4月に同社の子会社として株式会社闇を設立した。「ホラー×テクノロジー=ホラテク」を掲げ、「世界一怖いホームページ」と呼ばれた自社サイトで注目を集める。2018年にはMBSメディアホールディングスのグループ会社となった。
ホラー作家の梨と組んだ『その怪文書を読みましたか』(2023年)を皮切りに、体験型・考察型の展覧会が相次いでヒット。『行方不明展』は東京で7万人を動員し、名古屋・大阪・札幌・青森へ巡回して累計22万人を超えた。『恐怖心展』は渋谷で約13万人を集め、今年9月からは台湾・台北で初の海外開催へ。展覧会の累計動員数は50万人を突破している。
「ホラーはすべて段取りで決まる」。人を怖がらせる設計をそう語る頓花氏が、概念そのものが怖い“リミナルスペース”という新潮流、辛さと旨味で組み立てる恐怖のレシピ、そしてAIが賢くなる前に駆け込んだハルシネーションという題材までを語った放送のハイライトをお届けする。
『バックルームズ』に見るホラーのトレンド
今回のゲストは、ホラーやホラーエンタメに特化したクリエイティブエージェンシー、株式会社闇 創業者の頓花聖太郎。前半では株式会社闇の設立の経緯や、ホラーと関わっていく中で感じる仕事論や少し不思議な体験についてトーク。後半は、テクノロジーを活用し、新しいホラー体験を作り続けている頓花に、近年のホラー市場の話を中心に話を聞いた。
増井「カルチャーって基本的にトレンドがあるじゃないですか。ホラーの世界にもトレンドってあるんですか?」
頓花「もうトレンドしかないぐらい! ホラーの場合は流行り廃りというか、古いものが評価されにくい、古いものが評価されないわけではないんですけど、新しいものにスポットライトが当たる、常に新しい表現が求められているジャンルかなと思います」
増井「例えば10年前、それから今、何か違いってありますか?」
頓花「どんどんどんどんリテラシーが上がっていて、ホラーを楽しむ人の。今までだと、どんなおばけを出すのか、どんな怖い謂れを作るのか、どんな呪いを作るのか、みたいな話がトレンドでした。でも、今はそういうアプローチは存在しますけど減ってきていて、例えば最近だとリミナルスペースとか」
増井「リミナルスペースってなんですか?」

頓花「あんまり聞いたことのない用語かもしれませんけど、最近だと『バックルームズ』っていう映画がすごくヒットしていますけども、『バックルームズ』って、もはや概念が怖い世界なんです。リミナルスペースって言うのは、見たことがあるし、なんか知ってる気がする、原風景にありそうな空間、人工的な空間なんだけど、そこに人がいない、誰もいない、ただただ広いその空間に感じる恐怖みたいな。ちょっとうまく言葉にできなかったですけど、結構概念的な恐怖なんですよね。僕たちが共通認識で言葉にうまくできないんだけど、これって怖いよねって言われた時に、確かに、みたいなところに、新しいホラーのスポットライトが当たっていますし、一方でもう少しみんなで一緒に考えることで、この物語の裏に一体何があったんだろうっていうことを、一緒に楽しむみたいな、そんなホラーもどんどん生まれています」
増井「それでいうと、原始的な“わー”って驚かすみたいなものは、昔のもの?」
頓花「もちろん、そっちもどんどんどんどん磨きがかかっているので、僕自身そういうジャンプスケア(Jump Scare)を極めていってるっていうところも当然あります。ただ、昔よりは比率がだいぶ変わってきてる感じですね」
辛さとおいしさ、両方があって成り立つのがホラー
話題は『行方不明展』などに見る、昨今の体験型展覧会についても。
増井「闇さんが展開されている『その怪文書を読みましたか』とか『行方不明展』とか『恐怖心展』など、これ体験型展覧会っていう形のホラーですよね? お化け屋敷みたいに“うわぁ!”みたいなやつじゃなくて、展示見て、読んで、自分で考えるから、怖いみたいな」
頓花「そうですね。脅かし要素は、実は何もないんですけど、そこから感じる哀愁だったり、ちょっとした恐怖心だったり、気づきみたいなのを楽しんでもらおうみたいな侘び寂びみたいな世界ですね」
増井「この展示×ホラーってどうやって思いついたんですか?」
頓花「そもそも一番最初が『その怪文書を読みましたか』っていう展覧会なんですけど、僕自身ホラー小説好きで、読書がもたらすホラーってすごく楽しいなと思ってたんです。自分の想像で、どんどんどんどん飲み込んでいけるし。プラスして、僕、インターネットのホラーってすごく好きなんですよ。インターネットのホラーって、例えばブログだけで完結せずに、ブログの先にある別のニュースページにホラーの考察結果が書いてあったりとか、いろんなところを行き来して、当時Twitterのタイムラインとかにジャンルが渡りながら物語が紡がれるみたいなものがあったりして。そういうのってすごく怖くていいなって思っていたと。そういう意味で、ちょっと読むホラーっておもしろいなと思っていた中で、それを展覧会っていう形にしたらどうなるんだろうっていうところから生まれたのが、それらの展覧会なんですね」
増井「なるほど」
頓花「だから展覧会なのに、それぞれ非常にテキスト量が多いんですけど、展示を見ながら、物語が少しずつ進んでいくっていう体験の中で、本当に読書みたいなホラーを楽しめるものを作ろうっていうのが最初の考え方のきっかけです」
増井「こういうものを作る時って、コンセプトが先にある……要するにある種のタイトル的なところが先にあってから中身を考えるのか、それとも中身を考えていくうちにコンセプトが出来上がってタイトルが出来上がるかというと、どっちですか?」
頓花「結構同時並行だったんですけど、『その怪文書を読みましたか』に関しては、作家の梨さんっていうホラー作家の方と一緒に作っているんですけど、その人がすごく天才的な人で、次々と、どんどんどんどん面白いアイデアを出していくので、怪文書だけで物語が成り立ちそうだなっていうアイデアが出てきて、じゃあそのまま展覧会にしてしまおうっていう風に作られました」
増井「例えば塩味とか、苦味とかいろいろ、例えば味の話あると思うんですけど、例えばそういうものも塩味にも薄塩みたいなとか、まあ味濃いよとかいろいろあるじゃないですか。怖さっていうものに関しては、さっきの驚かされるような、いわゆる外的要因の“わー!”っていう怖いのと、内側から自分で気づいて怖くなっちゃうのでいうと、怖さっていうのはどっちの方が怖いですか?」
頓花「怖さは僕は基本的に2つの味だと思っています。1つは辛さみたいなもの。もう1つが、その中にあるおいしさみたいなものだと思っていて。だから辛さだけ上げていく、怖さだけ上げていっても、一部の人に受けないカレーが出来上がってしまうというか」
増井「旨味の話だ」
頓花「そうです。だから旨味をちゃんと混ぜないといけないし、旨味だけ頑張っても辛く全くないと」
増井「刺激がないんだ? 本当にカレーを作るみたいな気分で。ってことは両方必要なんですね。どっちがとかじゃないんだ?」
頓花「そうです、そうです。辛いのだけが好きっていう人も、もちろんいらっしゃるんですけど、とても小さなパイなので、たくさんの人に楽しんでもらうには美味しさと辛さみたいな感じですね」
あなた専門の面白い怖い話を生み出すAIの誕生も
先日まで開催されていた『記憶汚染展』では、AIが事実に基づかない情報を生成するハルシネーションも題材のひとつになっていた。それを皮切りに、AIとホラーについての話へと展開していった。
増井「『記憶汚染展』ではAIが事実に基づかない情報生成するハルシネーションを扱っていました。今まさに取り扱うには最適なテーマだったんですけど、これは今の時代を見越して使ったんですか?」
頓花「そうですね。もうむしろ今年やらんと、やばいなと思って。僕もAIとかも大好きなので、AIが生み出す不穏なハルシネーションっていうテーマすごく好きなんですけど、最近AIが賢くなりすぎてハルシネーション減っていってるんですよね」
増井「そうなんだ」
頓花「AIが賢くなるとハルシネーションっていう、このおもしろ現象がなくなってしまうと。なので早くこれをテーマにした展覧会をしなければいけないっていうところで、記憶とハルシネーションを繋げました」
増井「じゃあAIが完成する前じゃないとできない?」
頓花「そう、もう再来年ぐらいにはハルシネーション何それ? みたいになっちゃうなと」
増井「なるほどね。書き出したらちゃんと全部正解だよみたいな」
頓花「実は今回も作ってる中でハルシネーションは起きないんですよ。なぜならAIは賢いから」
増井「そうなんだ」
頓花「で、もうなんとか“AIさんお願いします。プロンプトを頑張って崩してください”みたいな感じで頑張って作っていくって感じですね」

増井「今闇では、AI×ホラーエンタメ専門レーベルの闇AIを展開されていますけど、2026年はユーザーの行動によって物語の結末が変化するサウンドノベル、AIホラーっていうんですかね、『怪談百物語』BETA版が公開されましたけど、これホラーにAIを取り入れてみていかがですか?」
頓花「めちゃくちゃ相性いいなと思っています。まずAIで生み出すものっていうのは、すごく人間が生み出す感じとはちょっとずれた、不気味の谷みたいな現象がちょっとあるんですよ。人間っぽいけど人間じゃないっていうのが、別のエンタメで使うと品質が悪いってなっちゃうんですけど、ホラーで使うと、ちょっと面白いになるんですね。あと、もう1つは、ホラーっていかに没入感、つまり自分ごとにできるかっていうところなんで、AIはそこがやっぱり一番得意なので。あなた専門の面白い怖い話を生み出すことができるっていうところで、すごくAIと相性がいいなと思ってます」
増井「そうなると、これからさらに新しく、この専門レーベル闇AIから展開される新作っていうのは、少しずつこの読者に対してローカライズというか、パーソナライズされていくものになっていくのかしら?」
頓花「そうですね。さらに踏み込んだことを言うと、AIの生み出す価値として、誰もが一つクリエイターにもなれる、より簡単にものを生み出すことができるっていう、それこそもう1億っていうか、もう80億総クリエイターになっていく可能性があって、一緒にこういうものを作っていこうぜみたいな、そういうことができるんじゃないかなと思っています。やっぱりこれ作ってる側が言えるんですけど、ホラーって作るの一番楽しいんですよ。なのでホラーでみんなで一緒に怖いもの作ろうぜみたいな、そういう世界観を目指せたら面白いんじゃないかなと思ってます」














