増井健仁がビジネス、エンタメ、政治など様々な分野のキーパーソンを迎え、“いま起きていること”と“これからの社会”を多角的に読み解き、新しい視点とヒントを届ける「MEDIAMIXI with interfm」。2026年9月22日放送回は、『Casa BRUTUS』編集長の西尾洋一氏と、アートディレクター/クリエイティブディレクターのミン・ヒジン氏が登場。
ミン・ヒジンは、K-POPの表現を刷新してきたクリエイティブディレクター。前職のADORではNewJeansをプロデュースし、ビジュアル、音楽、世界観のすべてを一貫して設計する手法で世界的な注目を集めた。2025年秋に自身のレーベル〈ooak records〉を設立し、2026年2月から本格始動している。
9月9日に発売された『Casa BRUTUS』2026年10月号の特集は「ソウル・ライフスタイル・ガイド」。Kコンテンツにとどまらず、建築、デザイン、アートの領域でも影響力を増すソウルの“いま”を、インテリアとシティガイドの両面から描いた一冊だ。表紙にはミン・ヒジンが登場し、これまでメディアに公開してこなかった自宅の全貌を初公開。約15年前に手に入れてフルリノベーションした住まいから、〈ooak records〉のオフィス、お気に入りのスポットまで、表紙+26ページにわたって案内している。
2人を引き合わせたのは村上隆だった。「そこで何か爪痕を残さないと、2回目はないなと思った」という西尾氏が初対面に持参した手土産、ミン・ヒジン氏が「100%ではなく1000%」と返したその中身、そして〈ooak records〉というレーベル名に込めた意味までを語った放送のハイライトをお届けする。
2人を繋いだ村上隆と、100%のプレゼント
今回は、Casa BRUTUS編集長の西尾洋一と、アートディレクター、クリエイティブディレクターのミン・ヒジンが登場。増井はまず、この2人の出会いについて聞いた。
増井「西尾編集長。なんでミン・ヒジンさん連れてきてくださったんですかね?」
西尾「収録のタイミングが合ったから“ミンさんに一緒に出ますか?”って聞いて……」
増井「私、震えてます。今日はせっかくおふたりにお会いできたので、9月9日に発売されたCasa BRUTUS最新号、ソウル・ライフスタイル・ガイドについて、いろいろ伺いたいんですけど、西尾さんとミン・ヒジンさんは、どうやって知り合ったんですか?」

西尾「まあ、みんなそう思うでしょうね。村上隆さんの紹介です。村上隆さん、ミン・ヒジンさんとお仕事をしていたと思いますし、僕も同じ時期に村上隆さんと仕事をしていて。村上さんと一緒に東京ドームのライブも見に行ったりしたんです。僕もNewJeansとかミン・ヒジンさんのこと好きだったので、村上さんとそういう話をして。2024年の年末に村上隆さんのラジオに出た時に、僕がミン・ヒジンさんとかNewJeansの曲の元ネタの話とかしたんですよね。(中略)そういう話をしてたら“詳しいね”と言われて。その話を村上さんがミンさんにしてくれたんですよ」
ミン・ヒジン「はい、そうだったと思います。そのお話を直接伺ったのですが、元々普段から好きな雑誌だったので、とても嬉しかったです。Casa BRUTUSはもちろん、BRUTUSやPOPEYEなども好きでよく読んでいましたし、以前、インタビューを受けたこともありました」
増井「ミン・ヒジンさん、西尾さんから本をいただいたっていうエピソードを伺ったんですけど、それはどんな本だったんですか?」
ミン・ヒジン「実は初めてお会いした時にプレゼントをいただいたんです。私、これまでにプレゼントをもらって、100%自分の好みだって思うことって、あまりなかったんですね。でも、西尾さんからいただいたものは驚くほど気に入ってしまいました。1つは、60年代から70年代頃のレコードがたくさん掲載されている本で、入手困難なもの。私が大好きなレコードがたくさん載っていたので、本当にびっくりしました。さらに、MF DOOMのプリントTシャツもいただいて“ああ、この人は私のことを本当によく知っているんだな”と思って、とても嬉しかったことを覚えています」
増井「西尾さんは、なんでそんなにミン・ヒジンさんのことがわかってプレゼントできたんですか?」
西尾「2025年の3月にミンさんが東京に来るタイミングで、村上隆さんのカイカイキキのオフィスで会うことになったんです。そこで何か爪痕を残さないと、2回目はないなと思ったんですね。ミンさんが来日する時にいろんな人と会うと思って、その中のワンオブゼムになるともう2回目はないな、と。そこで2、3日前からミンさんのInstagramをすっごい研究して、ストーリーズのハイライトを見ていたら、いろんな曲が収録されていて。ずっと見ていくうちにジャズとかソフトロックとか、昔、橋本徹さんが編んで出した『SUBURBIA』のバイブスに近いなと思って。急いで落札しました。あとは、カルト的なラッパー・MF DOOMのジャケットが上がっていたので、好きなのかなと思って、それをセットにしてみたんです。僕がおもしろいなと思ったのは、そういう『SUBURBIA』的な古くて、質のいい音楽と、MF DOOMっていう、カルト的なラッパーの対極的な趣味がすごいなと思って。僕はそれをこう理解したんですけど、どうですかっていうのを示すために2つを持っていきました」
増井「なるほど。ミン・ヒジンさん、100%気に入ったプレゼントいただいたっておっしゃってましたけれども、めちゃめちゃわかってるプレゼントが来て、ちょっとびっくりしませんでした?」
ミン・ヒジン「100%ではなく1000%です。西尾さんは、本当に私のことを深く理解してくださっているんだなと思いました。特に印象的だったのは、一見すると対極にあるような音楽まで取り上げてくださったことです。私はインディヒップホップも大好きですし、全く違うジャンルに思える音楽でもルーツや属性を深く掘り下げていくと、昔の音楽と今の音楽がすべて繋がってくるんですよね。そういう意味でも、音楽そのものを本当によく知っている方なんだなと思いました。すごいです」
ooak recordsに込めた由来は?
話題はミン・ヒジンが設立したレーベル〈ooak records〉についても。2025年秋に設立し、2026年2月から本格始動した、このレーベルの名前の由来などについて聞いた。
増井「ooak recordsっていう名前、由来をお伺いできますか?」

ミン・ヒジン「私は名前をつける時、NewJeansの時もそうでしたし、以前の会社ADORの時もそうだったのですが、直感的な名前が好きなんです。説明しないと意味が伝わらないような名前はあまり好きではなくて、シンプルで直感的で、パッと耳に入ってくるような響きの良い名前が好きです。それから、あまりまじめすぎず、少し遊び心がある名前がいいなと思っています。エンターテインメントの世界でも、おもしろいということ、おもしろさを追求していくことがとても大切だと私は思っています。一方で、少しまじめすぎる方向に行っているものも多いなと、普段から感じていました。この名前は、実は夜中から明け方くらい、寝る前にふと思いついたんです。何でもOKとか誰でもOKという感覚って、すごくいいなと思って。それは先ほどお話ししたような本質的な意味で感じたことです。イニシャルやスペルそのものに何か別の意味を持たせながら、発音はOKにしたらおもしろいんじゃないかと思いました。それから、KはまずKOREAのKでもあるので、そういう意味でもおもしろいなと思ってKを使いました。その後調べてみたところ、韓国の芸能界の黎明期に多くのアイドルや人気歌手を輩出した元祖とも言える芸能事務所にオーケーレコードという会社があったことを知ったんです。さらに、その創業者について調べてみると、仕事のスタイルや目指していた方向性に自分と重なる部分がありました。それがリンクして、これは本当に運命なのかもしれないと感じました。偶然とは思えないような不思議な出会いだったことを覚えています」
増井「ooak recordsが、Instagramで映像をポストしだして、最初に架空のレコードショップがアップされたじゃないですか。そのクオリティが高すぎて、本当にお店ができたのかと思って、一瞬“どこにあるんだ?”って探しちゃいました。あのクリエイティビティの高い作品は、どういう時に思いついて、どうやって作っていくんですか?」
ミン・ヒジン「NewJeansの時もそうだったんですけど、いつも自分が欲しいもの、自分がやりたいこと、そして自分がお客さんだったら体験したいと思うこと、そこからスタートしたいと思っています。ビジネスだからといって、自分自身が欲しいと思わないものを売るということがなかなか受け入れられないタイプなんです。自分が本当に欲しいと思えるものを作り出せる会社を作り、それを続けていく。それが私のビジネスに対する哲学です」
ooak recordsのこれから
番組の終盤には、〈ooak records〉のこれからについて探る一幕も。
増井「みんなが次の展開を待っているooak recordsですけれども、まずはミン・ヒジンさんは、どんなパートナーと一緒に仕事をしたいと、今は考えていらっしゃいますか?」
ミン・ヒジン「過去にさまざまな大きな問題を経験したことで、本当にたくさんのことを学びました。そして今日、西尾編集長と、こうして隣に座って一緒に何かをすることになるなんて、以前の私には全く想像していませんでした。だから今後、誰とどんなことをすることになるのか、私自身にも全く分かりません。今日ご一緒しているお二人についても、こうして一緒にいるなんて以前は想像もしていなかったことですから、これから“この人とこんなことがしたい”とあらかじめ決めるというよりも、自分がこれまでやってきたことをこれからも追求し続けていきたいと思っています。そうすることで、自分でも思いもしなかったような人との出会いがこれからも訪れるんじゃないかなと思っています。これからも続けていくことで、さまざまな方との不思議な出会いが生まれて、一緒に楽しいことができる機会も増えていくんじゃないかと期待しています。だから、今の時点では誰と何をするということは分かりません。でも、私自身これからがすごく楽しみです(中略)」
増井「それでいうと西尾編集長、今回Casa BRUTUSで、everyoneとのコラボレーションがooak recordsと実現しましたけど、これはどうやってコラボレーションすることになったんですか?」
西尾「あんまり始まり覚えてないんですけど……」
ミン・ヒジン「私は覚えてますよ」
西尾「せっかく特集で出てもらうんだから、そういうグッズ作れたらいいなというふうに思ったんですよね」
増井「なんでeveryoneだったんですか?」
西尾「5月にもう一回ソウルに行って、ミンさんのトークショーを見に行ったんです。それを見るのと一緒に、打ち合わせも兼ねてソウルに行ったんですけど、そこでアパレルを作ろうみたいな話になり、ちょっとブランドとコラボしたいみたいなこともおっしゃったんですよね。ミンさんはよくネイビーのキャップを被っていらっしゃるので、パッとまず浮かんだのがeveryoneっていう、今人気のブランドで。everyoneはネイビーのアイテムが多いし、キーカラーもネイビーを使ってたりするので、合うなと思って。あとは、ミンさんに会う1週間前にeveryoneの三好良さんと会って打ち合わせをしてたんで、たまたま1週間後だったんで、じゃあeveryoneどう? って聞いたら、いいねっていう」
増井「じゃあご縁が重なったんですね」
ミン・ヒジン「すごく不思議なんですが、やっぱり全てはご縁なんですよね。マッチングがとても良くて、西尾さんがeveryoneを提案してくださった時、これはおもしろいなと思いました。グッズを作る時、少し変な話に聞こえるかもしれませんが、私はいつもこれでお金を稼ごうと思って作っているわけではないんです。そのプロジェクトごとに、後から記憶を思い出せるような、記念品のようなものとしてグッズを作っています。その時の記憶に意味を持たせるものという感覚ですね。東京ドーム公演の時もそうでしたし、いつもそういう考え方で企画しています。大切なイベントや楽しかった記憶を残しておきたいというのは、人間の本能のようなものだと思うんです。(中略)帽子については、もともと私自身帽子が好きで、普段からよく被っています。それに、私の活動に興味を持ってくださる方や、応援してくださるファンの方もたくさんいらっしゃいます。そういう方たちにとっても、何か記念になるようなグッズがあったらいいなと思って今回企画しました。そして、Casa BRUTUSに出るということ自体が、私にとっては一つの記念碑のような出来事でした。私個人としてだけではなく、韓国人として考えてもとてもおもしろい出来事だと思いましたし、私自身にとっても記念に残る経験になりました。そして、今回コラボレーションするブランドとしてeveryoneを選んだというところもポイントです。私たちの会社の名前ともとても相性がいいですよね。本当に西尾さんの提案はすごいなと思いました。考えてみると、私たちはいつもそこまで収益性のことを考えずに、これおもしろいよねという気持ちで仕事をしているような気がします」

増井「じゃあもう、西尾さんの最初の出会いの本からコラボレーションのアイテムまで1000%ってことですね。ちなみに、この『everyone ok』のアイテムってどこでゲットできるんですか?」
西尾「10月1日からCasa BRUTUSのオンラインストアで販売開始です」
コラボアイテムの名は「everyone ok」。everyoneとooak recordsの、それぞれの名前が持つ「誰でも」「何でもOK」という感覚が、そのまま重なった格好だ。
増井「今回、日本の出版社とブランドと一緒にお仕事されましたけれども、今後も日本の企業とお仕事をすることには興味はありますか?」
ミン・ヒジン「もちろん、これからも日本の企業やクリエイターの皆さんとはぜひ一緒に仕事をしていきたいと思っています。以前、村上隆さんとご一緒した時もそうでした。ちなみに村上さんも仕事がものすごく早かったです。本当にスピーディーでトラブルも一度もなく、とても楽しく仕事をさせていただきました。村上さんだけでなく、これまでコラボレーションさせていただいた日本のアーティストや作家、スタッフ、企業の皆さんとの仕事はすべて本当にいい思い出です。例えば、NewJeansが以前日本でシャンプーのCMを撮影した時のスタッフの皆さんもそうでした。日本のスタッフの皆さんと仕事をした経験は、私にとって本当に大切な思い出です。なぜかというと、皆さんが楽しそうに働いているし、自分たちがやりたいことをやっているということが伝わってくる。そして、スタッフ同士の仲もいいんです。すべてが本当にいい思い出として残っています。(中略)韓国語にも日本語と同じ以心伝心という言葉があるんですが、まさにその言葉が頭に浮かびました。同じ目標を持つ人たちが、その思いを共有して力を合わせることで、こんなにも大きな力になるんだ。プロフェッショナルの力が集まると、これほど大きなものを生み出せるんだということを本当に実感しました。今でもとてもいい思い出として残っています。(中略)今でも不思議な出来事として印象に残っているのですが、東京ドームのような大きな公演では、すべての場面を一つ一つ細かくディレクションすることは不可能ですよね。だから、私はまず全体の文脈や意図を説明して、それを理解してもらう。その上で、自分がイメージしているアングルに仕上がっていることを願って、スタッフの皆さんに任せます。例えば、HANNIが登場するシーンがあったんですが、その時スタッフの方がHANNIの顔をエクストリームクローズアップで捉えたんです。それを見た瞬間“私の心の中が見えてるの?”と思いました。それくらい、どうしてここまで正確に私の意図を理解してくれたんだろうと驚きました。言葉にしなくても伝わる、通じ合える、その快感のようなものを感じました。そういう経験がまた次の仕事への期待につながりますし、自分にとってのやりがいにもなっています。東京ドームのカメラスタッフの皆さんには本当に素晴らしい仕事をしていただきました。その後、その方たちがソウルに来た時には一緒に食事をしたほどです。それぐらい素晴らしいスタッフの皆さんでした。そうした一つ一つの経験が、自分の中でこれからへの期待につながっていきます」
増井「これからのミン・ヒジンさんのooak recordsのクリエイティブ、未来にみんな興味津々だと思うんですけど、言える範囲でこれからどんなことが待ってますでしょうか?」
ミン・ヒジン「今、大きな方向性としてこういう風に動いていきたいという計画はあります。ただ、私のことをよく知っている方ならわかると思いますが、私はかなりフレキシブルなタイプなんです。その時々でおもしろいと感じたポイントや出来事、課題を自分がもともと持っている目標とつなげて、そこから大きなシナジーを生み出していきたい。そういうふうに仕事をするタイプです。だから、現時点である程度の青写真はありますが、具体的にこれをやると決まっているわけではありません。むしろ、自分でも思いがけない形で何かが始まったらおもしろいなと思っています。そして、みんなが楽しめる仕事をこれからも続けていきたい。それが今の私にとって大きな目標です」
増井「日本のファンの皆さんも、ものすごい期待して待ってると思いますので、ぜひまたミン・ヒジンさんの世界を、日本だけじゃなくて世界中に届けていただける日が来ることを楽しみに待ってます」














