2026年8月26日、神奈川・Kアリーナ横浜。約2万人が入るこの会場で、iLiFE!(アイライフ)というアイドルグループが、史上最大規模のワンマンライブ「MEGALiFE!」を開催しました。
37曲、約4時間。そのステージ終盤に流れた映像で、Sony Music Labelsからのメジャーデビューが発表されました。
【超特大発表】
なんと..iLiFE!…
Sony Music Labelsより
メジャーデビュー決定しました❗️そして…メジャーデビュー第一弾
「アイライフメガパック」をリリース❕詳細は後日お楽しみに❤︎#iLiFE pic.twitter.com/nwR1gOWhk9
— iLiFE!【あいらいふ】 (@iLiFE_official) August 26, 2026
発表直後のSNSには、祝福の声と一緒に、こんな反応が並びました。
「あれ、コロムビアでもうデビューしてなかった?」「何回目のデビュー?」
iLiFE!は2026年2月に、日本コロムビアからメジャーデビューしています。それから半年で、今度はソニーからのメジャーデビューが発表された。
しかもiLiFE!は、メジャーに行かなくても事業として十分に成立していたグループです。ライブハウスを主戦場とする、いわゆるライブアイドルの中で、動員も収益も頂点にいました。
だとすると、今メジャーに行く意味はどこにあるのでしょうか。
そしてなぜ、相手はソニーだったのでしょうか。
本記事では、ライブアイドルの経済圏を軸に、この2つを考えていきます。
アイドルに詳しくない方にも読んでいただけるよう、グループ名や業界特有の用語には、その都度かんたんな補足を入れていきます。
先に私の結論を書いておきます。ライブアイドルの商売は、メンバーの時間を売る商売です。
メジャー化とは、それを権利を売る商売に組み替える作業のことだと私は見ています。
1. 【二本立て】iLiFE!はなぜここまで人気になったのか
① コールを歌詞に入れた、という発明
iLiFE!は2020年6月結成。株式会社imaginateが運営するアイドルプロジェクト「HEROINES(ヒロインズ)」に所属する9人組です。キャッチコピーは「私(i)と貴方(!)で作るアイドル(i)ライフ(LiFE)」。

転機は2022年の「アイドルライフスターターパック」でした。ライブでファンが打つ「コール」、つまり曲の合間に客席が声を合わせて叫ぶ掛け声を、そのまま歌詞に組み込んだ曲です。
コールは本来、ファンが自分で覚えて現場に持ち込むものです。曲を聴き込んで、動画を見て、周りを見て覚える。つまり参入障壁でした。初めてライブに行った人が最初に感じる疎外感の正体は、だいたいこれです。周りが何を叫んでいるのか分からない。
iLiFE!がやったのは、その障壁を曲の中に内蔵することでした。
歌詞を聴けば何を言えばいいか分かる。だから初参加でも当日から参加できる。
私がこの曲ですごいと思ったのは、楽曲設計そのものより「スターターパック」という命名です。
カードゲームやソーシャルゲームの入門用パックを指す言葉で、安くて、最初に買うもので、これを買えば遊べますよという意味を持っている。
その言葉をタイトルに使った時点で、この曲は「初心者はここから」という宣言になっている。曲名が導線の役割を果たしているわけです。
そして命名は続いていきます。ブースターパック、エクストラパック、そして今回のメジャーデビュー第1弾が「アイライフメガパック」。カードゲームの拡張パックの語彙で、シリーズを積み上げている。
入門編を買った人が次に拡張版を買う、という順序がタイトルだけで伝わります。シリーズの最上位パックを、いちばん大きい会場で出したことになります。
② バズの本体は「アイドルライフ」シリーズではない
ここでひとつ、調べていて意外だったことを書きます。
iLiFE!といえば「アイドルライフスターターパック」のグループ、という理解が一般的だと思います。
ところがTikTokのUGC、つまりその曲を使って一般ユーザーが投稿した動画の数を見ると、話が変わります。




「会いにKiTE!」が88万件、「きゃわぽっぴんどぅー」が76万件。一方で「アイドルライフスターターパック」は6万件、「アイドルライフエクストラパック」は18万件です(いずれも2026年9月2日時点)。
比較対象を置くと、この数字の意味が見えてきます。

=LOVE(イコールラブ)の「とくべチュ、して」が65万件

FRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」が68万件。
なんとiLiFE!は、ここ数年でいちばんTikTokで踊られたアイドル楽曲と、同じか、それ以上のレンジに入っています。
投稿数だけを見れば、iLiFE!はすでにトップアイドルです。
しかも投稿しているのは女性が多い。
インフルエンサーも、恋愛リアリティ番組に出ている高校生も投稿している。
世間的なイメージでは「コールの曲でバズった、現場が強いライブアイドル」なのに、実態としては若い女性のTikTok投稿でリーチを取り続けているグループなんですよね。
ここに、私が見るiLiFE!の最大の特徴があります。
現場の熱量と、SNSの拡散が、別々の曲で回っている。
「アイドルライフ」シリーズは現場での一体感を作る曲で、「会いにKiTE!」や「きゃわぽっぴんどぅー」は現場を知らない人でも踊れたり口ずさめる曲です。
どちらか片方に寄せていない。
ダンスの作りを見ても、これは意図的だと思います。
筆者の観測だと、バズらせるための奇抜さには適量があって、振りが奇抜すぎると「面白いけど自分では踊らない」で伸びにくいイメージがあります。
iLiFE!の振付は、変顔や過剰な奇抜さに振り切らず、女子高生が友達と撮って可愛く見える範囲に収まっている。
踊ってみようと思える難易度と、踊ったら映える見栄えの両立です。
③ 体制が変わるたびに、注目量が増えた
ここまで書いてきたのは楽曲とSNSの話ですが、iLiFE!の知名度が跳ねた要因をもうひとつ挙げないと片手落ちになります。
2024年秋から2025年にかけての、メンバーの入れ替わりです。
この時期、iLiFE!では脱退と加入が短い間隔で続きました。
個々の経緯には触れません。ここで見たいのは、この期間にSNSでの言及量がはっきり増えたことのほうです。
アイドル運営にとって、メンバーの脱退は普通はマイナスです。
だから多くのグループは脱退を静かに処理して、次へ進もうとします。
ただ、iLiFE!とHEROINESは逆の処理をしていました。
体制が変わるたびに「新体制お披露目」という名前をつけて、日付を決めて、ライブとして立てる。
新体制お披露目公演ありがとうございました❤︎
そしてなんと…2025年8月27日に日本武道館公演が決定しました❕
これからも新体制8人のiLiFE!についてきてください。#iLiFE pic.twitter.com/bOfwmgKHwa
— iLiFE!【あいらいふ】 (@iLiFE_official) October 14, 2024
もちろん本人たちにとって嬉しい出来事ではなく、土壇場の対応だったはずです。
ただ、注目が集まった瞬間に、ちょうど新体制のライブが用意されている。
集まってきた視線の受け皿が毎回あったことになります。
そのうえで、私がいちばん考えたのは別のところでした。
なぜファンが離れなかったのか。
見立ては、ライブそのものにあります。
私も8月のKアリーナ公演を観ましたが、4時間を走り切る密度が圧倒的でした。
iLiFE!ワンマンLIVE「MEGALiFE!」見てきました!!!
ここ数年でトップレベルにヤバいライブだった。まじでアイドル界に革命が起きています。感想一気に羅列します!!!
まず4時間超のライブがえぐい。着替え以外ほぼ休みなしで、あの時間を走り切るメンバーの体力どうなってるの……。… pic.twitter.com/xabKORC6ls
— 望月優夢|アイドル評論家 (@you_your_yumu) August 26, 2026
そしてiLiFE!は、そのライブ映像を無料生配信で惜しみなく公開しています。
【無料生配信決定】
なんと!明日開催するKアリーナワンマンの前半部分をYouTubeにて無料生配信します♡▼配信ページhttps://t.co/igaFFI6ldv
※冒頭パートはYouTubeのみの配信となります▼続きはABEMAにて配信https://t.co/w2PejdqbIM#iLiFE #メガライフ pic.twitter.com/n83lnO6za2
— iLiFE!【あいらいふ】 (@iLiFE_official) August 25, 2026
【無料生配信】
なんと!!!
明日のTRAVELiFE!2026東京公演をYouTubeにて無料生配信❤︎▼配信ページはこちらhttps://t.co/nFSFLDxQGV#iLiFE pic.twitter.com/YbQQ3Z7xXy
— iLiFE!【あいらいふ】 (@iLiFE_official) May 31, 2026
武道館もKアリーナも、冒頭部分(といっても1時間以上の長尺)をYouTubeで流している。
歌もダンスも、会場の熱量も、見れば伝わってしまう。
コンセプトも同じ方向を向いています。
「私と貴方で作るアイドルライフ」というキャッチコピーは、誰が真ん中に立つかを規定していません。
コールを歌詞に入れた楽曲で盛り上がっているとき、フロアが見ているのはステージ上の誰か一人ではなく、自分たちを含めた場の全体です。
メンバー個人にファンがついているグループでは、脱退はそのままファンの離脱になります。
ただ、ライブにファンがついているグループでは、メンバーが変わっても場が残る。
iLiFE!は後者に近い設計を、結成時のコンセプトの段階で持っていた。
ここが、入れ替わりの多さに耐えられた理由だと私は読んでいます。
④ 応募者数が示す、もう一方向の需要
人気の指標として、私がもうひとつ重視しているのがオーディションの応募者数です。
2023年は約7,000人が応募して4名が加入。
2025年は1次応募が18,000名、書類通過が1,067名、3次審査に進んだのが300名で、ここから3名が加入しました。
そして2026年は、応募総数42,000人。1名の枠に対して、4万人以上が集まっています。
2026年のオーディションでは、選考過程をABEMAが密着し、番組として放送されました。
遂に!来週から『iLiFE! 新メンバーオーディション Project i』をABEMAにて放送開始❕
総応募42,000人の中から1人を選ぶ過去最大規模のオーディション✨
初回放送は4/8(水)よる8時https://t.co/I0qD3VdIBe#iLiFE新メンバーオーディション #プロジェクトi pic.twitter.com/kF8QAILMjF
— iLiFE!【あいらいふ】 (@iLiFE_official) April 4, 2026
最終話は有料配信での独占生放送です。
新メンバー発表を有料配信でやって成立させたことになります。
応募者が3年で6倍になるというのは異例だと思います。
そして「なる側」の需要が伸びることは、グループにとって出会える人の母数が増えるということです。
母数が6倍になれば、同じ基準で選んでも、入ってくる人の水準は上がる。
合宿審査で現メンバーが候補生に語っていた言葉も印象的でした。
iLiFE!に入ることをゴールにしている子ではなく、その先を見ている子に来てほしい、という趣旨のことを言っていた。
iLiFE! 新メンバーオーディション、めちゃくちゃ良い。
メンバーの入れ替えが激しい中で残ってきた、入ったメンバーだからこその視座の高さに驚きました。この感じ、精神・実力ともに即武道館に立てる見込みがある相当レベル高い子が入ると思うと、かなり楽しみ🥹https://t.co/LIL711vxgw pic.twitter.com/66qbb2sytc
— 望月優夢|アイドル評論家 (@you_your_yumu) March 23, 2025
入れ替わりを何度も経験したメンバーの側に、プロとしての視座が育っていた。
そこに憧れて次が入ってくる。この循環が、今のiLiFE!の中身だと私は見ています。
2. 【可視化】iLiFE!を擁するHEROINESとは何なのか
① 順位を、隠さずに公開する事務所
iLiFE!の話をするには、母体であるHEROINESの話を避けて通れません。
現在26組を超えるグループを抱えるプロジェクトです。
ここには、他所ではあまり見ない仕組みがあります。「HEROINES LEAGUE」です。
【HEROINES LEAGUE⚔️最終節】
2026年のリーグ戦、
ファイナル公演を9月29日 東京ガーデンシアターにて開催⚡️タイムテーブルは今月22日のリーグ名古屋公演終了時点の総合順位によって決定。
最終公演、勝利は誰の手に…!?
今年イチ熱いライブをお見逃しなく🔥◆FC先行抽選(全有料プラン対象)… pic.twitter.com/VGiUtqaeuT
— HEROINES(ヒロインズ) (@heroines_idol) September 2, 2026
2024年6月に始まったこの制度は、所属グループを2部制のリーグに分けて順位を競わせるもの。
順位は、リーグ戦ライブの観客動員数、会場での投票、ファンクラブの事前投票の合算で決まります。
そして所属リーグや順位は、その後の出演ライブや活動内容に影響するとされています。
普通のアイドル事務所は、所属グループ間の序列を公にしません。当たり前で、下位と公表されたグループのファンが離れるからです。運営は序列を内部で持ちながら、表向きは横並びに見せる。それが業界の常識だったと思います。
HEROINESは、その序列を公開しました。しかも順位が活動条件に直結する形で。
この制度には良し悪しがあると思いますが、合理的な側面も大きい。
グループへのリソース配分は、本来は運営が決めるものです。
どこに枠を割くか、どこに制作費を入れるか。その判断のためには需要を測る必要があって、普通はアンケートを取ったり売上を分析したりします。
HEROINESは、その判断をファンの行動データそのものに置き換えました。
動員数と投票は、意見ではなく行動です。
しかもリーグ戦という形にすることで、ファン側にも「自分が行けば順位が変わる」という参加動機が生まれる。調査そのものが集客イベントとして収益になっています。
② 生誕祭クラファンという、需要の可視化
もうひとつ注目しているのが、生誕祭のクラウドファンディングです。
生誕祭とは、メンバーの誕生日を祝う単独ライブのこと。
もともとはファンの有志が「生誕委員会」を作ってカンパを集め、駅広告や、メンバーへのプレゼントを用意する、ファン主導の慣習でした。
HEROINESは2023年以降、これを運営主導のクラウドファンディングに切り替えています。公式の説明としては、ファンの間の平等性を担保し、新規のファンも気軽に参加できる体制にするため、とされています。
実際のプロジェクトページを見ると、設計がよく分かります。
支援総額に応じてリターンが段階的に増えていく仕組みで、2026年の生誕祭では、390万円でソロ楽曲がサブスク配信され、そこから200万円ごとに配信曲が1曲追加、740万円を超えると舞台装飾やMVがアップグレードされる、という形になっています。
ファンの支払い意欲が、そのままコンテンツの生産量に変換される設計です。
そして金額の推移が、そのまま個人の人気の推移になります。iLiFE!のあいすさんの生誕祭プロジェクトは、2024年が6,803,123円・支援者398人、2025年が11,965,123円・支援者543人、2026年が16,903,123円・支援者867人。3年で2.5倍近い伸びです。1,000万円を超えるクラウドファンディングを、複数のメンバーが継続的に達成しています。
ライブアイドルの世界は、長らく「数字が見えない」領域でした。
動員は主催しか知らないし、物販の売上は誰も公表しない。
だからメジャー側から見ると、どのグループにどれだけ需要があるのか判断がつかなかった。
HEROINESは、その見えなかった需要を可視化させました。
この点は、後半のソニーの話につながります。
③ 打席の数を増やす、4本の経路
HEROINESのもうひとつの特徴は、グループを増やす経路を複数持っていることです。私が整理すると4本あります。
1つ目は、人気グループのオーディションで惜しくも選ばれなかった人に、別のグループでの入口を用意する経路。
合格者1名で終わらせず、そこで出会った人に別の道を提供する発想です。
実際、2025年のiLiFE!オーディションで最終選考まで残った人からは、私が調べただけでも15名がHEROINESの別グループでデビューしています。
【メンバー公開】
♥花丸 ぺこ(はなまる ぺこ)
♡担当カラー オレンジ🧡
♥今日もみんなに花丸あげる!
♡最年少15歳♥「花丸笑顔の?ぺこちゃん!」#iON #アイオン pic.twitter.com/pmqb9yNzcz
— iON!【アイオン】iLiFE!妹ユニット (@iON_idol_) May 2, 2025
2つ目は、事務所直営のスクールから引き上げる経路。「HEROINES SCHOOL」というスクールの練習生制度があり、ここからの昇格デビューが増えています。
【新メンバー公開】
🦢早坂わむ(@dreco_hayasaka)
🩰担当カラー 緑💚
🦢ヒロインズスクール出身
🩰わむとたわむれたいむ!「努力で夢を叶える🪄」#ドレスコード #ドレコ pic.twitter.com/9UvIVjV6AX
— ドレスコード (@dreco_info) May 27, 2026
3つ目は、外部のグループを迎え入れる経路。
=LOVEやCANDY TUNEのメンバーが過去在籍していたアキシブprojectをはじめ、複数のグループが加わっています。
アキシブprojectより
大切なお知らせがあります。#アキシブ pic.twitter.com/cgqe2HlLxF— アキシブproject (@AkishibuProject) December 23, 2023
資本関係は公表されていないため、これを買収と呼べるかどうかは私には判断できません。
ただ、時間をかけてグループを育てる代わりに、すでに立ち上がっているグループを迎える、という選択が繰り返されているのは事実です。
4つ目は、卒業したメンバーがプロデューサーとなって新グループを立ち上げる経路です。
MEGAFON お披露目ライブありがとうでした📣🗯️ pic.twitter.com/xlqfUcKDNh
— 向日えな (@MEGAFON_ena) April 28, 2025
採用、育成、合流、独立支援。この4本が同時に動いている。
グループが当たるかどうかは、やってみないと分かりません。だとすれば打席の数を増やすしかない、という考え方です。
1本の経路が詰まっても、他の3本が動く。
私はHEROINESを、アイドル事務所というより、当たりを引く確率を構造で上げにいっている組織だと見ています。
そしてその中で、iLiFE!という特大の一発が出ました。
3. 【時間と権利】なぜソニーは、今iLiFE!に手を伸ばしたのか
① 2度目のメジャーデビューをどう読むか
時系列を整理します。
2026年2月、iLiFE!は日本コロムビアからのメジャーデビューを発表しました。楽曲は、テレビアニメ『DIGIMON BEATBREAK』の新エンディングテーマ「BRAVE GROOVE」。2月11日に先行配信、3月31日にアルバムを全10形態でリリースしています。グループ初のアニメタイアップでした。
そして2026年8月26日、Kアリーナ横浜。ステージ終盤の映像で、Sony Music Labelsからのメジャーデビューが発表されます。
第1弾作品は「アイライフメガパック」。あわせて2027年の全国ツアー「JAPANLiFE!」も決まり、ファイナルは4月6日、GMOアリーナさいたま(旧・さいたまスーパーアリーナ)です。
2026.8.26…
Kアリーナ公演ありがとうございました。そして2027年もJAPANLiFE!開催決定❕
過去最大規模のツアーへ挑戦!
ファイナルはなんとGMOアリーナさいたまで開催!!「これまでの全てが奇跡になるよ一緒なら」#iLiFE pic.twitter.com/0Y0FYfJe7x
— iLiFE!【あいらいふ】 (@iLiFE_official) August 26, 2026
契約の中身は公表されていないので、ここからは私の読みになります。
注目したいのは、iLiFE!の次にこの枠を担当したアーティストです。
2026年7月から新エンディングテーマになったのは、韓国のガールズグループKISS OF LIFEの「BREAK IT」。この曲も日本コロムビアからリリースされています。
歌う人が日本のライブアイドルから韓国のガールズグループに変わっても、リリース元はコロムビアのまま。レーベルがアーティストかというのはさておき、作品の側についているわけです。
だとすると、iLiFE!のコロムビアからのデビューは、レーベルを選んだ結果ではなく、デジモンのエンディングという枠に入ったことでついてきたものだったのではないか。作品単位の話だったのではないかと私は見ています。
対してソニーの発表は、Kアリーナのステージ上で、グループ全体の節目として打たれました。アーティスト単位の契約に移ったと読むのが自然でしょう。
ただ、コロムビアとの関係がどうなったのかは公表されていません。
ここを断定するのは避けます。
少なくとも、半年前にメジャーデビューを発表した相手から、より大きなレーベルへ移るという動きが表に出せる形で行われた、という事実は明らかです。
ここから想定できることとして、裏ではかなりすごいことが起きている気がしています。
② 時間を売る商売から、権利を売る商売へ
ここで冒頭の問いに戻ります。すでに事業として成立していたグループが、なぜメジャーに行くのか。
ライブアイドルの収益の中身を分解すると、答えが見えてきます。
チェキ(ライブ後にメンバーと2人で撮るインスタント写真。1枚単位で販売され、日本のライブアイドルの収益の柱になっています)、特典会、生誕祭、クラウドファンディングのリターン。これらに共通しているのは、すべてメンバーの時間と紐づいていることです。
チェキを1枚売るには、メンバーが1回撮影に立つ必要がある。特典会を長くすれば売上は伸びるけれど、伸ばせる時間には限りがある。
売上は、メンバー数×稼働時間×単価で決まります。単価は上げられます。でも時間は増やせない。そして稼働を伸ばすほど、メンバーの消耗は蓄積します。
このモデルは、単価を極限まで高くできる代わりに、天井が構造的に決まっている。iLiFE!をはじめとしたHEROINESは、このモデルを日本でいちばん太くした存在です。だからこそ、いちばん早く天井に触れました。
一方、レーベルが持っているのは何か。原盤権、出版権、タイアップの窓口、配信の流通、海外のレーベルとのつながり。
これらはいずれも、メンバーが1時間多く働かなくても売上が立ちます。
メジャー化の旨みは、売上が増えることではありません。売上をメンバーの時間から切り離せることです。
もうひとつ、動員の問題があります。今後行われるGMOアリーナさいたま(旧さいたまスーパーアリーナ)のような規模になると、既存のファンだけでは席は埋まりません。
埋めるには、まだiLiFE!を知らない人に届く必要がある。
テレビ、大型フェス、アニメ、海外。これらへのコネクションは、お金を積めば買えるものではなく、レーベルが長年の取引の中で持っている関係そのものです。
自力で買えないものを持っている相手と組む。私はこれが今回のメジャーデビューの実質だと読んでいます。
③ ソニーのアイドル陣営に空いていた場所
では、なぜソニーだったのか。今度はソニー側の事情から見てみます。
ソニー・ミュージックレーベルズのアイドル陣営を並べると、こうなります。
乃木坂46はN46Div.、櫻坂46と日向坂46も同じソニー・ミュージックレーベルズから作品を出しています。=LOVEと≒JOYはSACRA MUSICです。
つまり、ソニーが持っている大型アイドルIPは、秋元康さんプロデュース系にかなり寄っている。これは長年きわめて強いポートフォリオでした。
ところが2020年代後半、ヒットの出方が変わりました。
KAWAII LAB.(アソビシステムのアイドルプロジェクト)のFRUITS ZIPPERやCUTIE STREET、EBiDAN(スターダストのボーイズグループ集団)のM!LK。
TikTok起点で、大人数の総選挙型ではなく、SNSでの拡散から現場へ人を流す型のグループが主戦場になっています。
この領域に、ソニーは自前の駒が薄い。
その空白に対して、iLiFE!はほぼ完璧に噛み合います。
秋元系ではない。TikTokの投稿数は国内トップクラス。
Kアリーナを埋める動員がある。オーディションに42,000人が集まる。生誕祭のクラウドファンディングで1,000万円超が動く。
そして重要なのは、これらがすべて数字として外から見えていることです。
レーベルが新しいアーティストと契約するとき、いちばん読めないのは需要です。だから可能性に賭けることになる。ところがiLiFE!の場合、需要の解像度が異様に高い。動員も、応募者数も、支援金額も、投稿数も、すでに外から見えている。
第2章で書いたHEROINESの「見える化」の設計が、そのままレーベル側の不確実性を下げていることになります。
順位を公開したことも、生誕祭をクラウドファンディングにしたことも、外部への営業のためにやったわけではないはずです。それでも結果として、外の会社が判断できる材料が積み上がっていた。自社の需要を測るために作った仕組みが、そのまま組む相手への説明資料になる。ここは業界を問わず持ち帰れる話だと思います。
メジャーデビューという言葉は、長らく「発掘」の意味を持っていました。
今回はその逆で、すでに証明されている需要のところへ、レーベルのほうが出向いています。
④ アニメとゲームという、ソニーだけの絵
さらに、ソニーグループでなければ描けない絵があります。
iLiFE!はコロムビア期に『DIGIMON BEATBREAK』でアニメタイアップを経験し、そこで一定の結果を出しました。アニメと相性が悪くないことは実証済みです。
ソニーにはアニプレックスがあり、アニメ主題歌を主戦場とするSACRA MUSICがある。アニメタイアップを社外に取りに行くのではなく、グループ内で企画から動かせます。
ゲームの側も同じです。ゲームとアイドルの客層が重なることは、すでに国内でも実証されつつあります。eスポーツチームのREJECTがiLiFE!とのコラボを発表したのも2026年7月のことでした。
◤ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄◥
iLiFE! × REJECT × EWC26
◣_____________◢🎀この夏、特別なコラボがスタート🎀
ここでしか見られない企画を、お楽しみに!@iLiFE_official #RCWIN #EWC26 pic.twitter.com/XTijwoFfnS
— REJECT (@RC_REJECT) July 1, 2026
音楽、アニメ、ゲーム。この3つを一つのグループ内に持っている会社は、日本ではソニーだけです。
私が想像しているのは、ソニーがKAWAII LAB.やEBiDANのような「レーベル内アイドルプロジェクト」を作りにいくシナリオです。
乃木坂46と=LOVEという巨大IPを持ちながら、次の柱を非秋元系で立てる。
その第1号がiLiFE!だとすれば、HEROINESという26組超のプロジェクトごと視野に入っている可能性もあります。
もっともこれは、現時点では私の推測です。発表されているのは、iLiFE!がSony Music Labelsからメジャーデビューするという事実だけです。
4. おわりに
今回の話を整理します。
iLiFE!は、コールを曲に内蔵して現場の参入障壁を下げ、それとは別の曲でSNSの投稿を積み上げるという二本立てで、観る側となる側の両方から需要を集めてきました。
HEROINESは、リーグ戦と生誕祭のクラウドファンディングによって、これまで外から見えなかったライブアイドルの需要に目盛りをつけ、打席の数を4本の経路で増やし続けてきた組織です。
そしてソニーは、その目盛りが読める状態のグループを、自社に空いていた非秋元系・TikTok起点という枠に迎え入れました。iLiFE!の側から見れば、メンバーの時間に紐づいた売上を、権利とタイアップに紐づいた売上へ組み替える一手だったことになります。
この連載では、アイドルの動きをビジネスの目で定点観測していきます。
今回の件で、私が次に見ているのは3つです。
1つは、メジャーデビュー第1弾「アイライフメガパック」がどのレーベルから出るか。SACRA MUSICなのか、別の座組なのか。ここでソニー側の意図がかなり見えます。
2つ目は、2027年4月6日のGMOアリーナさいたまが埋まるかどうか。ここが埋まれば、メジャーに移ったことが動員にどう効いたのかが数字で出ます。
3つ目は、HEROINESの他グループがこの後どう動くか。iLiFE!が先に道を作った形になるので、続く2番手、3番手のグループにメジャーからの声がかかるかどうか。ここが、今回がiLiFE!個別の話なのか、HEROINESというプロジェクトごとの話なのかの分かれ目になります。
それでは、また次回。














