米玩具大手マテル(NASDAQ:MAT)が、自社IPを使ったゲームの開発・配信・運営を担う新組織「Mattel Game Studios」を設立した。

バービーやホットウィールを外部に供与する一辺倒の構図を改め、自社で開発から運営まで抱える比重を高める。注目すべきは、同じ「玩具×IP」企業であるハズブロが、ほぼ同時期に投資を絞り込む判断を下していることだ。

8年がかりで整えた内製の器

新組織はMattel Digital Studios傘下に置かれ、ロサンゼルスと中国・杭州の2拠点に300人近くを集約する。担うのは既存モバイル作品の運営、新規の基本プレイ無料タイトル、RobloxやFortnite向けの体験の3層だ。

6月にマスターズ・オブ・ザ・ユニバース題材の自社配信第1弾を投入。「UNO Wild」はソフトローンチ中で、ホットウィール新作も開発している。一方で外部パートナーとの共同開発も並走し、供与をやめるわけではない。

突発的な参入でもない。起点は2018年にネットイースと折半出資で設立したMattel163だ。同社は「UNO!」など4作で累計5億5000万ダウンロード、月間アクティブユーザー約2000万人を積んだ。2026年2月、マテルはネットイース保有の50%を1億5900万ドル(企業価値評価3億1800万ドル)で買い取ることで合意し、第1四半期中に完全子会社化した。今回の発表は、その資本再編を組織面で仕上げる工程だ。

ハズブロは逆に絞り込む

マテルと対照的なのがハズブロだ。2026年第2四半期に、2028年以降に予定していたタイトルの中止に伴う5640万ドルの非現金減損を計上し、2028年までに年間のデジタル支出を25%以上減らす方針を示した。

同社のクリス・コックスCEOは、スコープリー運営の「モノポリーGO!」が生涯収益80億ドル規模に達する見通しを挙げ、コストとリスクをすべて自社で負わずともデジタルの経済性は保てると説明する。同四半期のデジタル・ライセンスゲーム収入は16.7%増の1億3550万ドル。うち4420万ドルがモノポリーGO!だ。マテルとハズブロは「IPのデジタル価値をどう取るか」という同じ問いに、資本集約型と資本節約型という逆向きの解を出したことになる。

受け皿プラットフォームは減速局面

マテルが主戦場の一つに据えたRobloxは2026年第2四半期、売上高こそ36%増の14億6900万ドルだが、ブッキングスの伸びは8%に鈍化した。1日あたりアクティブユーザーは1億2300万人で前年同期比10%増ながら、前四半期の1億3200万人からは減少に転じている。株価は8月上旬時点で過去1年に7割超下落した。

同社は児童保護のための年齢確認が交流を抑え新規獲得を鈍らせたと説明する。マテルの中核顧客層はその年齢帯と重なる結果だ。

本業の数字が迫った選択

それでも動く理由は本業にある。2025年通期の純売上高は53億4800万ドルで前年比1%減、純利益は27%減の3億9800万ドルだった。バービーとフィッシャープライスが総取引額で11%減った一方、ホットウィールは11%増の約17億5000万ドルと明暗が割れた。さらにウォルマート、ターゲット、アマゾンの3社で世界純売上の約42%を占める。小売を介さない直課金型の収益源は、成長戦略である以上にリスク分散でもある。今回の設立は、事業拡張というより収益構造の組み替えに近い。

外部スタジオにとっては、発注者が同時に自社パブリッシングの担い手にもなる。ライセンス案件の交渉構造は確実に変わるだろう。