増井健仁がビジネス、エンタメ、政治など様々な分野のキーパーソンを迎え、“いま起きていること”と“これからの社会”を多角的に読み解き、新しい視点とヒントを届ける「MEDIAMIXI with interfm」。2026年6月9日放送回は、ワンメディア株式会社代表取締役CEOの明石ガクト氏が登場。

1982年、静岡県静岡市生まれ。上智大学文学部を卒業後、2014年6月に、ミレニアル世代に向けた新しい動画表現を追求するべくONE MEDIAを創業した。国内大手ブランドのYouTube・TikTok・Podcastを活用したコミュニケーション支援を手がけ、著書に『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』(幻冬舎)、『動画大全』(SBクリエイティブ)がある。

2025年11月からは、実業家の福田淳氏とともにinterfm『UMP〜未確認人物倶楽部〜』(毎週木曜22時30分〜)のDJを担当。まだ光の当たっていない“未確認人物”を発掘するサークル型ラジオ番組で、放送に加えてPodcastと縦型動画を組み合わせたハイブリッドな展開を試みている。

「これ、原液と捉えてほしいですよ」。動画時代の潮流を牽引してきた明石氏が、いま音声へと向かう理由、Podcastで稼ごうとすること自体が的外れである理由、そして企業がメディアを持つときに越えてはいけない一線までを語った放送のハイライトをお届けする。

日本でもPodcastは絶対に流行る理由

本番組と同じくinterfmで『UMP〜未確認人物倶楽部〜』を福田淳とともに放送している明石。その番組は、縦型動画でも見られるほか、Podcastでも配信している。増井は、縦型動画の第一人者である明石がPodcastをどう見ているのかという話に迫った。

増井「縦型動画というものを広げていったのが明石さんっていう認識が、みんなあると思うんですけど、今それが今度音声の方に行かれているのはなぜなんでしょうか?」

明石「これはね、音声っていう風に言ってしまうと動画とは全く違うメディアの種類に感じるかもしれないですけどね、増井さん。これ、原液と捉えてほしいですよ。縦型動画を最初から作ろうとするよりも、切り抜くべき原液、いわばウイスキーのボトルがあって、そのウイスキーをハイボール、つまり炭酸とかで割って飲みやすくして出すのが、実は縦型動画みたいな発想。だから、要は原液を濃くするには、動画主体で考えるより、結局話されてる内容が一番大事なんだから、これはもう会話だろうと。で、そうやって世界をちょっと俯瞰してみると、アメリカでめちゃくちゃPodcastがブームになっていて、これ実は次の形、いわば、原液を作る一番いい手段って、実は音声なんじゃないかっていう風に捉えてった結果なんですよ」

増井「それでいうと、アメリカのポッドキャスターって普通に億プレイヤーがゴロゴロいらっしゃるじゃないですか」

明石「いますね」

増井「というと、今音声の世界もPodcastの世界も日本まだちょっと来てないと思うんですけど、これから来るような空気感があるってことですかね」

明石「めちゃくちゃあると思ってます。で、私、経営のモットーが“タイムマシン経営”なんですね。わかりやすく言うと、アメリカで流行ったものは必ず日本でも流行る論でやってるんですけど、2014年に起業してからタイムマシン経営だけは、僕を裏切ってない。だから流行るんですよ」

増井「なるほどね」

明石「で、なんで流行るのかってことを、今ね、増井さんも聞きたいのかもしれないですけど、そもそも“卵が先か? ニワトリが先か?”の話になっちゃうんだけど、じゃあなんでアメリカでPodcastが流行ったの? っていうと、よく言われる理由、アメリカは長距離車通勤が多いから、耳だけは空いててとか、それで元々ラジオ文化とかネットワーク局の文化が強いから、Podcastを受け入れる土壌があったみたいな言い方とかされるんですけど、僕はそうじゃないと思ってて。アメリカでPodcastを流行らせた多くの人たちって元YouTuberなんですよ」

増井「へー」

明石「で、日本でもこの現象って実はもうすでに起きてると思ってて。増井さんって、4、5年前のYouTuberっていうと、どういう企画やってる印象があります? 動画としては」

増井「4、5年前のYouTuberの皆さんの企画は、どちらかというとバラエティ番組の劣化版の企画のコピーやオマージュみたいなものだったりとか、それからあともっと言うと、物を食ってるとか、そういうフィジカル使ったみたいなものをもう乱発させるっていうのがイメージでしたね」

明石「そうですね。(中略)要するに小学生にウケるやつなんですよ。これがどんどんどんどん時を経ると、YouTuber側もおじさんやおばさんになり、ちょっと落ち着いてきちゃう。なんならファンの人たちも同じように年を取って、そういう企画っぽいものに、作り手も見る側も疲れてるんですよ」

増井「なるほどね」

明石「そうなると、やっぱりトークの方が良くなってくる。で、こういうことが先に起きたのがアメリカですね。昔は動画っていう世界が、やっぱり若い子のアテンションを取らないと成り立たなかったけど、今は大人向けのものできちっとリーチする、再生回数が回る世界になってきたから、だからこういうPodcastというものが成り立ってるんですよ」

Podcastで稼ぐには、どうしていくのがいいのか?

話題は、長尺コンテンツの価値へと移っていく。短さやインパクトとは対極にあるPodcastは、どこに価値を持つのか。

増井「Podcastって長いじゃないですか。短くとか、インパクトがあるっていうのとかけ離れた場所にいると思うんですけど、この長尺コンテンツの価値っていうのは、今どういうところにあるんですか?」

明石「ここが冒頭私が言った原液とハイボールの関係にめっちゃ近いと思ってて。結局やっぱ長尺になればなるほど、原液を割って出すハイボールはいっぱい作れるんですよ」

増井「なるほど」

明石「今はもう60分撮影して、その中から大体20本ぐらいショート動画を作れるから。で、そのショート動画は、TikTokやYouTubeショート、Instagramのリール、いろんなところに流通できるじゃないですか。で、そこで見た人が「わ、気になる」と思って本編見る。それこそ溝口勇児さんがやってる『REAL VALUE』とかって、おそらくほぼ全員の人が最初切り抜き動画で見てるはずなんですよ」

増井「ってことは、長尺コンテンツは切り抜きまで考えたら、ものすごい価値の塊なんですね」

明石「そうなんです」

増井「だからそれをやればやるほど、別に本編が見られてなくても接地面が増えてるから、それだけでも印象ついてるから勝ちだよねっていう」

明石「そうです。だから、よくPodcastで、どうやってマネタイズするの? って言われるんだけど、別にPodcastでマネタイズしようなんて誰も思ってないし、アメリカのポッドキャスターが、じゃあ年収1億円以上の人いっぱいいるんだけど、みんな別にPodcastでマネタイズしてるわけじゃないんですよ。番組自体がIPになり、ブランドになり、それのマーチャンダイズだったり、ミートアップのイベントだったり、あるいはスポンサーコンテンツ。これも別にPodcast音声だけじゃなくて、切り抜かれる動画とかに対してお金がついてるわけじゃないですか」

増井「そうか」

明石「だからそういう番組IPを作ってると思った方がいいですよね」

増井「なるほどね。だから音声を収録してるけど、それは音声のために録ってないんですよね」

明石「おっしゃる通り」

増井「IPを作るために録ってるから、汎用性が外にあるものの集まりをどれだけ音声として取れるかっていう勝負ってことですよね」

明石「そうです。いわゆるファンダムの一番濃い人たちって全てを知りたいから、どんなに長尺コンテンツでもそれ聞いてくれるわけじゃないですか、音声。僕、自分の完全な個人の趣味でファッションをテーマにしたPodcastをやってるんですね。(中略)1エピソード2時間話してるんです」

増井「毎週2時間話すことがある?」

明石「正直イカれてるって言われてるんですよ(笑)。でも1週間に1回、水曜日2時間のエピソードがドロップされるわけですよね。でもね、ファンの人たちは全部聞いてるんですよ。そうすると月に8時間接触してるわけでしょ? 今の時代に8時間接触するメディアってあります?」

増井「ない」

明石「ないでしょ? 俺、これすごいと思うんですよ。結局誰かの人生にとって大事なものとして残るためには、接触時間がめっちゃ大事だと思って」

増井「そうですね」

明石「要はお金とかはいくらでも刷れる、増えていく。だからもうページビューも再生回数も、どんどん増えていってるんですよ。10年前より今の方が増えてるし、今から10年後の方がたぶん増えていくけど、人間の時間の24時間は別に変わんない。100年前も1000年前も24時間というのはこれ変わらない。一番貴重な時間を積み重ねることができる唯一のメディアが、実はPodcastなんじゃないかと思います」

企業がメディアを持つ意味

続いて話題は、企業がPodcastを始める動きへ。うまくいくケースと、まったく聞かれないケースの分かれ目が語られた。

増井「最近企業がPodcast始めるっていう例が増えてるんですけど、これ企業がメディアを持つ意味ってどういうところにあるんですかね?」

明石「まず、日本の企業でPodcastを一番はじめに始めたのは、たぶん「北欧、暮らしの道具店」さん。クラシコムという会社が運営されてる、ECショップですよね。「チャポンと行こう!」っていうやつ。(中略)今、すごい大きくなってるらしくて。うまくいってるケースでもあります。一方、これアメリカを含めてですけど、いわゆるザ・コーポレート的なPodcast、企業理念を伝えようみたいなのは、クソほど聞かれてないです」

増井「なるほどね」

明石「やっぱり「チャポンと行こう!」は、世界観、「北欧、暮らしの道具店」の世界観が好きな人が楽しめるエンタメを提供してるんだけど、企業がPodcastやるって言うと、知らねえおっさんの、まあ社長なんだけど、知らねえ話……」

増井「知らねえおっさんの知らねえ話が、長時間流れる」

明石「そうそう。誰もそれ聞かない。社員も聞かないよ、たぶん。みたいな。企業主語のもの、こういうものは、やっぱアメリカでも全然はやらなくて、これはもう絶対僕も聞かない」

増井「じゃあやっぱり誰に向けて発信するかというのは、長尺だからこそ大事なんですね」

明石「大事だし」

増井「言いたいことを言いたい順番で言うんじゃねえよって話ですね」

明石「そう。それはもう本当にね、新橋のガード下と変わらないわけですよね。でもこの話につなげていくと、やっぱりイケてるPodcastは、そういうファンネームがあって。例えばジェーン・スーさんと堀井美香さんがやられてる『OVER THE SUN』で言えば、互助会っていう風なファンネームなんですよね。武道館を埋めるぐらい、日本で最初のPodcastの成功例なんですよ。で、ファン同士は自分たちのことを互助会、助け合う仲間である。(中略)さらにいうと、冒頭が“よくぞよくぞ金曜日までたどり着きました”みたいな決まり文句から始まる」

増井「優しい」

明石「お互いを助け合うという仲間であるという認知のもとに、そういうフレーズで、褒め称える、これって要はメディアなんだけど、やっぱコミュニティとしての側面がめっちゃ強いですよね」