今日のAI革命は、人文学への関心を再び高める可能性があるーー。1980年代にスタンフォード大学でAIとコンピュータサイエンスを学んでいたNetflixのリード・ヘイスティングス共同創業者兼会長が、4月25日に配信されたポッドキャスト『Possible』で、こうした見解を示した。
同氏は「STEM分野(科学・技術・工学・数学)がスタンフォード大学を事実上席巻してしまったが、これからは人文学や、歴史と文学の融合への回帰といった、ある種の循環がみられるかもしれない」とコメント。もし今、自分に3歳の子どもがいたら、感情面でのスキルを重点的に育てるだろうと明かした。
一方、AIが人間のソフトウエアエンジニアを完全に置き換えることには懐疑的で「ソフトウエア人材の雇用が削減されても、開発の機会そのものはさらに増える可能性が十分にある」 とみている。
ヘイスティングス氏は、自身がかつて数学を学んだボウドイン大学に5,000万ドルを寄付し、AIが社会に与える影響を研究するための組織を設立。教育や仕事の世界に抜本的な変化が訪れると予測する一方で、未来や世界をより良くするためにAIが果たす役割については楽観的で「今後20年間は極めて刺激的な時代となり、豊かさの時代が到来するだろう」と語った。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「Netflix共同創業者リード・ヘイスティングス氏の「AI時代こそ人文学が再評価される」という見解は、STEM一辺倒だったシリコンバレーの空気が変わりつつあることを物語る。STEMとはScience・Technology・Engineering・Mathematicsの頭文字。理系4分野を一括りにした人材育成・教育政策の用語だ。
1980年代にスタンフォードでAIとコンピュータサイエンスを学んだ当人が、母校で「STEMがほぼ席巻してしまった」と振り返り、歴史と文学の融合や感情面のスキル育成へと話を向けた点が興味深い。
AIが定型的な知的労働を担うほど、問いを立てる力・物語る力・倫理判断といった人文学的素養の価値が浮かび上がる、という見立てはエンタメ業界にも響く。脚本・編集・キュレーションといったNetflixの中核機能は、まさに人文学的な感性が支えてきた領域だ。技術と教養の循環が再び回り始める予兆として読めるコメントだ。」














