5億円規模の映像ファンドを設立し、2年間で少なくとも5本の日台共同製作作品に投資する――。2026年10月28日、東京国際映画祭に併設されたコンテンツマーケット「TIFFCOM」にて、大日文創(Daily Capital)が構想を明かした。

「観たいものが多すぎる」と題した本連載では、これまで現在配信されている作品を紹介してきたが、その射程を未来に伸ばしてみると、いったいどうなるのか。

観光地としては近い、しかし日本で映画・ドラマを見ている観客にとってはいまだ遠い「台湾」。本連載では以前、戦争ドラマ「波の音色」をご紹介したが、その最新状況をのぞいてみよう。TIFFCOM「台湾の独創力が出会う、プロジェクト・ショーケース」より、今回は未来にも「観たいものが多すぎる」の回である。

日本の青春小説、台湾のキャスト&スタッフで映画化

いま、台湾映画界では日本と台湾の合作がひとつのトレンドだ。台湾の人気俳優・許光漢(シュー・グァンハン)と清原果耶が共演した『青春18×2 君へと続く道』(2024)や、つげ義春の漫画を台湾ロケで映画化した『雨の中の慾情』(2024)、吉本ばなな原作×岸井ゆきの&曾敬驊(ツェン・ジンホア)主演『シンシン アンド ザ マウス』(2026)など。

今回のショーケースにおける目玉のひとつが、佐野徹夜の小説『アオハル・ポイント』を台湾で映画化する『無法計算的青春(原題)』だ。人の容姿や学力、社交性などを示す「ポイント」が見える高校生が、その秘密を知った女子生徒と組んで互いの片思いを成就させようとするが、やがて2人の間に恋心が芽生えてしまう。

台湾のStudio76とKADOKAWAが、日本の小説3作品を台湾映画に翻案する取り組みの第1弾。台湾映画の歴代興行収入記録を更新した大ヒット作『陽だまりの歌が聴こえる』(日本公開は2027年1月1日)の林孝謙(ギャビン・リン)監督がプロデュースし、同作で注目を浴びた若手女優・何曼希(ホー・マンシー)が主演する話題作だ。

監督は数々のMVを手がけ、本作が長編映画デビューとなる李伯恩(ポエン・リー)。共演には、『ひとつの机、ふたつの制服』(2025)の邱以太(チウ・イータイ)をはじめとする若手キャストが揃った。

「台湾は昔から恋愛映画を作るのが得意。そこにファンタジーのひねりを加えた本作には強い自信を抱いています」と語ったのは、Studio76の楊志光(デニス・ヤン)CEOだ。2027年春の台湾公開に向けて準備が進められており、日本では角川映画が配給予定。

日本で観られないドラマ「動物園」「消失的裂痕」

もっとも、日台合作以外の映画・ドラマが日本で見られる機会はまだまだ限られている。作り手側もその機会を模索しているのが現状で、Prime Pumpkin Picturesは「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」や「重版出来!」などを好む視聴者に向け、台湾発のお仕事コメディ「動物園(原題)」を紹介した。

台湾では今年2月からディズニープラスで配信されているものの、日本や韓国ではいまだ配信の機会がない。台湾で初めて飼育員を題材としたドラマで、台湾南部にある高雄市の寿山動物園でロケ撮影が実施された。

主人公は広告業界で働く30歳の女性だが、完全に燃え尽きてしまい、キャリアを立て直すため、動物園で2週間働くことになる。オフィスでの仕事のスキルはまるで通用しないが、動物たちが彼女を癒やしていき。「国境を越えて受け入れられる動物の物語」だと担当者は力を込めた。

もうひとつの「日本で見られない秀作」が、台湾Netflixで配信されているミステリー「消失的裂痕(原題)」だ。

突如として息子が失踪した夫婦が、その3年後、ひび割れた鏡の中に息子の姿を見る。その鏡は別世界につながっており、夫は、別世界の自分自身が己の生活を奪おうとしていることを知るのだ。

主演は「深夜食堂 -Tokyo Stories Season2-」にもゲスト出演した張孝全(ジョセフ・チャン)と、「女優:ボーン・トゥ・シャイン」(2024)の楊謹華(シェリル・ヤン)で、それぞれ二役を演じる。

テーマは「もしも、自分より良い人生を送っている別の自分に出会ったら?」。Netflixでは台湾・香港でランキング2位を獲得したが、中華圏以外での配信権はまだ購入されていないという。

「波の音色」監督の新作、大型ファンドで実現へ

冒頭の大日文創は、配信プラットフォームの現状と、映像作品の資金調達についてこう語った。

「現在、映像作品の製作費は大幅に増加していますが、単一市場の興行収入や視聴人口には限界があります。一方、グローバルな配信プラットフォームは、作品の全権利を高額で買い取る方式から、地域を限定した配信権の取得や、完成前の先行契約へと移行しつつある。ひとつの市場だけで製作費を回収することは困難になっています」

今回のショーケースで紹介されたあらゆる作品が、この現実を物語っていた。大日文創が目指すのは、国際共同制作によって投資リスクを下げ、海外市場の配給ルートも早期に確保すること。現地のパートナーを得ることで、より有利な取り組みができるという。

「台湾と日本には、歴史・文化における緊密な関係があります。日本には世界最高水準のIP創出能力と製作水準があり、台湾には優れた人材や柔軟な協力体制がある。中華圏市場だけでなく、東南アジア市場をつなぐ橋でもあります」

重視するのは、「日本と台湾、双方の文化や歴史、感情に共鳴する物語」であること。そして、日本発であれ台湾発であれ、グローバルな普遍性をそなえた物語であることだという。

最初の投資対象として計画されているのが、「波の音色」の孫介珩(スン・ジエハン)監督が日台のチームと手がける新作歴史ドラマ「桜花燦爛(原題)」だ。

1930年代、日本統治下の台湾・嘉義と阿里山で、日本人の芸者が母親を救うため、海を越えた結婚詐欺を企てる。権力やビジネスの障壁、家族のトラブルに巻き込まれるなか、彼女は台湾人の林業経営者との禁じられた愛に身を投じていき。

すでに大日文創は、日本のK2 PicturesとREMOWとも企画の共同開発を進行中。「日台の第一線で活躍する製作陣と俳優がタッグを組み、国際的なストリーミング市場へ届けたい」という。

今回のショーケースでは、ほかにも魅力的な企画がいくつも発表された。

たとえば近未来の台湾を舞台に、伝統的な民間伝承とAIテクノロジーを題材とする「島嶼.神話(原題)」。命を落としたベテラン刑事が25年前の自分と組み、事件と自らの運命を変えようとするタイムトラベル・サスペンス「0號檔案(原題)」。そして、家庭内暴力をテーマとするビビアン・スー出演のスリラー「夏日勿語(原題)」など。

これらの企画は現在開発中であり、来たる撮影に向けて、日本を含むパートナー探しや資金調達を続けている段階。どんな物語に予算が集まり、どんな顔ぶれが揃うのか? そうした企画のスタートが、いまや配信先の市場に大きな影響を与えることになる。