ハリウッド業界誌「デッドライン」は9月17日、米ロサンゼルスにある本社で、同社主催の「ロサンゼルス法律サミット(L.A. Law Summit)」を初開催した。弁護士、タレント、エージェント、プロデューサーらが参加し、知的財産(IP)権、M&A、クリエイター経済、AIに関するパネルディスカッションが行われた。

米人気テレビドラマシリーズ『POWER/パワー』、Netflixドラマ『NEMESIS -宿敵-』の共同クリエイターとして知られる脚本家のコートニー・A・ケンプ氏は、一流法律事務所のトップ弁護士3人とのパネルで、デジタル経済においてクリエイターがどのように自身を守れるか、避けるべき主な落とし穴は何かについて議論した。

ケンプ氏は「私たち作家は、独自のアイデアを思いついた際の『証拠の連鎖』や『保管の連鎖』をいかに守らなければならないか、おそらく理解していない」と指摘。IPに基づくアイデアの場合、そのアイデアに対する独自のアプローチの証拠をどこまで保護する必要があるのか、そうしたメールがどれほど重要なのか、という点を理解する必要があると主張した。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「ケンプ氏の言う「証拠の連鎖」は、AI時代に新しい意味を帯び始めている。従来この言葉が守ってきたのは、盗作を疑われた時、または盗用された時に「先に考えたのは自分だ」と示す時系列の記録だった。メール、日付入りの原稿、打ち合わせの履歴である。これからは、もう一つの層が加わる。自分のアイデアを、いつ、どのAIツールに入力したかの記録だ。生成AIの利用が制作の日常になるほど、「AIに手伝わせた部分」と「自分が考えた部分」の線引きが、契約でも係争でも問われる。米国の著作権局は、AI生成部分の登録に人間の創作性の説明を求めており、線引きの証明は実務の要件になりつつある。幸い、対策の方向は昔と同じで、記録を残すことに尽きる。プロンプトの履歴、版の変遷、判断のメモ。創作の過程を語れる者が、権利の主張でも強い。ハリウッドの法律家たちの議論は、AIと共に作る全ての現場にとって、対岸の話ではなくなっている。」