欧州で、ゲーム内通貨の売り方に対する規制当局の動きが相次いでいる。2026年9月30日、EU各国の消費者保護当局でつくる「CPCネットワーク」が、欧州委員会の調整のもと、Mojang、King、Supercell、Riot Games、Ubisoftなど9社への協調アクションを開始した。

さらに10月8日には、イタリア競争当局(AGCM)がノルウェー、デンマークの当局とともに、Activision Blizzardを中心とするMicrosoft傘下企業への調査を主導すると発表している。運営型タイトルを手がける日本企業にとっても、この事例は対岸の火事ではない。

何が問題視されているのか

基本プレイ無料(F2P)タイトルの多くは、現金で「ジェム」「コイン」などのゲーム内通貨を買い、その通貨でアイテムを購入する二段階の仕組みを採る。当局が懸念するのは、この構造が支出の実感を薄めやすい点だ。

たとえば、アイテム価格が通貨建てでしか表示されず、実際の支払額が分かりにくい。通貨はまとめ売りが基本のため、欲しいアイテムに必要な量以上を買うことになり、余った端数が次の購入を促す。9社への協調アクションでは、実際の通貨での価格表示、購入前の明確な情報提供、撤回権の尊重、子どもの保護などが確認項目に挙がった。

そして、Activision Blizzardをめぐる論点はさらに広い。AGCMは2026年1月、『Diablo Immortal』『Call of Duty: Mobile』について国内調査を開始しており、期間限定アイテムの購入をあおる通知、保護の弱い設定が初期値になっているペアレンタルコントロール、アカウント停止によって支払った金額が失われうる点などを検証対象に挙げていた。

「指針」から個別企業への働きかけへ

土台にあるのは、CPCネットワークが2025年3月に公表した「ゲーム内仮想通貨に関する主要原則」だ。法的拘束力はないものの既存のEU消費者法の解釈を示すもので、当局はその後、業界団体と対話を続けてきた。しかし成果は不十分と判断し、市場調査を経て個別企業への働きかけに踏み込んだ。

ただし、現時点で制裁が決まったわけではない。協調アクションはまず企業に是正策の提示を求める手続きで、解決しない場合に各国当局が執行措置を検討する。一方で欧州委員会は、ダークパターンや中毒性のある設計への対応を柱とする「デジタル公正法(Digital Fairness Act)」の法案を2026年第4四半期に提出する予定で、規制強化の流れは続く見通しだ。

米国でも、連邦取引委員会(FTC)が2025年1月、『原神』を手がけるHoYoverseとの和解を発表。2,000万ドルの支払いに加え、16歳未満が保護者の同意なくガチャを購入することの禁止や、仮想通貨の交換レートの開示などを求めた。

日本の運営型タイトルが備えるべきこと

日本では、多くのゲーム内通貨が資金決済法上の「前払式支払手段」にあたり、主に発行者が破綻した際に利用者の資金を守る観点で規律されてきた。2012年のコンプガチャ問題を経て、2016年には業界団体のガイドラインでガチャの提供割合表示も広がった。ただ、「通貨建ての表示が支出を分かりにくくする」という論点は、欧州ほど前面には出ていない。

EU域内の利用者に向けて配信するタイトルであれば、運営会社が域外にあっても、こうした原則を踏まえた対応が求められうる。そこで備えるべきポイントは二つだ。

一つは通貨表示で、アイテム価格を通貨建てに加えて円などの実額でも示す、必要量に近い単位で通貨を買えるようにする、といった設計である。もう一つは未成年者対策で、年齢別の課金上限などの保護機能を最初から有効にしておく、購入をあおる通知の頻度を見直す、といった対応が考えられる。

こうした対応は短期的に収益を押し下げうるが、課金の透明性はユーザーとの長期的な信頼に直結する。グローバル展開を前提とする国内タイトルこそ、欧州の動向を今のうちから設計に織り込んで考えるべきだろう。