株式会社KADOKAWAは2026年10月1日、同社のクリエイター支援サービス「CSP(クリエイターサポートプログラム)」と、株式会社エクシングが運営する配信者向けカラオケサービス「カラオケJOYSOUND for STREAMER」の包括的提携を発表した。CSPを利用するクリエイターは、個人か法人所属かを問わず、楽曲ラインナップがより豊富で収益化にも対応した上位プランを特別価格で利用できるようになる。

地味な料金施策に見えるが、VTuberらの定番企画「歌枠」が抱えてきた課題を踏まえると、その意味が見えてくる。

歌枠には「2つの権利」が絡む

歌枠とは、ライブ配信で視聴者を前に歌を披露する企画のことだ。既存の楽曲を配信で歌うには、大きく2つの権利をクリアする必要がある。

ひとつは歌詞やメロディに対する「著作権」である。こちらはYouTubeがJASRACやNexToneといった管理団体と包括契約を結んでいるため、両団体が配信での利用を管理している楽曲であれば、個別の手続きなしに歌える。

もうひとつが、伴奏音源そのものに付随する「著作隣接権」だ。CD音源はもちろん、カラオケ機器の伴奏もメーカーが制作した録音物であり、無断で配信に流すことはできない。この「使ってよい伴奏をどう確保するか」が、歌枠の長年の悩みの種だった。

配信のために用意された公式カラオケ

この課題に対し、USEN&U-NEXT GROUPのエクシングが2024年10月29日にSteamで提供を始めたのが「カラオケJOYSOUND for STREAMER」だ。搭載曲は配信での利用が認められており、現在は4万曲以上を用意する。採点や歌詞テロップといったカラオケ機能に加え、背景透過やSpout2など配信向けの機能も備え、YouTube、Twitch、ニコニコ動画、TikTok LIVEでの配信に対応する。

同サービスの料金は30日3,500円(税込)から。提供開始時点では、趣味向けのBasicプランに対し、収益化に対応するProプランが30日1万円(税込)と設定されていた。

一方で企業に所属する配信者は、2025年8月に始まった法人プランを個別見積もりで契約する仕組みになっている。今回の提携が「法人所属を問わず」とうたうのは、この区分を踏まえたものだ。

CSPと歌枠支援の歩み

もう一方のCSPは、YouTubeのMCN(マルチチャンネルネットワーク)機能と、KADOKAWA独自の二次利用管理・収益分配システムを組み合わせたサービスで、2022年3月に始まった。他社著作物の利用や切り抜きなどの二次利用をまとめて管理し、クリエイターの収益化を支える仕組みだ。2026年3月時点で780以上のチャンネルが利用し、累計登録者数は6,800万人を超える。

CSPは歌枠支援にも早くから取り組んできた。2024年1月には「カラオケ歌っちゃ王」とカラオケ音源の利用に関する包括的許諾契約を結び、法人所属のクリエイターでも申請の手間なく音源を使って収益化できる仕組みを整えた。同年3月には第一興商(DAM)の音源協力を得て、VTuberら46人が参加する「#CSP歌枠フェス」も開催している。

JOYSOUNDとは、2025年12月に100人で25時間にわたり歌枠をつなぎ、ギネス世界記録に認定されたリレー企画を共同で運営したほか、2026年5月に始まったYouTube番組「バーチャルうたじまん」にも制作協力として関わってきた。今回の提携は、この協業を料金プランという形で一段深めたものといえる。

残る課題は「価格」の中身

ただし、特別価格の具体的な金額や提供開始時期は、発表時点では明らかにされていない。どこまでコストが下がるかによって、提携のインパクトは変わってくるだろう。それでも、権利処理の煩雑さから歌枠を控えてきた中小事務所や個人勢にとって、選択肢が増えたことは確かだ。