須田剛一氏率いるゲーム開発会社グラスホッパー・マニファクチュア(以下、グラスホッパー)が、2026年10月1日付で中国NetEase Gamesの傘下から独立した。発表は9月30日。NetEaseと十分に話し合ったうえでの円満な独立で、今後も機会があれば互いに協力するという。
「尖ったゲーム」を作り続けてきたスタジオ
グラスホッパーは1998年に須田剛一氏が設立した開発会社だ。1999年発売の第1作『シルバー事件』をはじめ、『killer7』『ノーモア★ヒーローズ』など、独特の映像表現とブラックユーモアに満ちた作品で国内外に熱心なファンを持ち、これまでに25本以上のタイトルを手がけてきた。
その一方で、資本関係はこれまでにも何度か変わっている。2013年2月にガンホー・オンライン・エンターテイメントのグループに入り、2021年5月31日付でNetEase Gamesの傘下へ移った(公表は同年10月)。今回の独立により、約13年ぶりに親会社を持たない体制へ戻ることになる。
大手の傘下で得ていたもの
ゲーム業界には、ゲームを作る「デベロッパー(開発会社)」と、資金を出して宣伝・販売を担う「パブリッシャー(販売会社)」がいる。中小規模の開発会社にとって、大手の傘下に入る大きな利点は、開発資金や制作体制を安定して確保できる点にある。
2021年の発表によれば、NetEaseは開発資金を提供するほか、グラフィック制作や品質管理(QA)の分野で数千人規模のアーティストや技術者による支援を行い、企画・制作はグラスホッパーが独自に担うという役割分担だった。須田氏は当時、今後10年でよりパワーアップした3本の作品を届けることを目標に掲げていた。
傘下にあった約5年間に発売されたのは、2021年8月の『ノーモア★ヒーローズ3』、旧作のリマスター版『Shadows of the Damned: Hella Remastered』(2024年10月)、そして完全新作『ROMEO IS A DEAD MAN』である。
独立を後押しした「自社販売」の経験
では、なぜこのタイミングで独立できたのか。鍵となるのが、2026年2月11日に発売された『ROMEO IS A DEAD MAN』だ。同作はNetEaseではなくグラスホッパー自身がパブリッシャーとなり、PS5、Xbox Series X|S、PC向けに発売した。須田氏は今回の発表で、自社パブリッシングのノウハウを積んだことで、幅広い選択肢を持てるようになったと説明している。
ダウンロード販売の普及により、パッケージの流通網を持たない会社でも世界中にゲームを届けやすくなった。販売を自前でこなせれば、親会社に頼らずとも作品を世に出せる。開発資金についても、タイトルごとに外部のパブリッシャーと組むなど、調達の道は一つではない。須田氏が独立の理由に挙げた、「よりさまざまなスタイルのタイトルを届けたい」という思いは、こうした実務の裏付けがあってこそ現実的な選択肢になったといえる。
NetEaseの戦略見直しも背景に
NetEase側の事情も無関係ではなさそうだ。同社は日本の著名クリエイターのスタジオへ積極的に投資してきたが、近年は戦略を見直しているとされる。2026年3月には、名越稔洋氏率いる名越スタジオへの資金提供を停止することが報じられた。
円満な独立を強調するグラスホッパーを同列には語れないが、海外の大手資本と日本のクリエイターの関係が転換期にあることはうかがえる。
独立後の課題と期待
独立すれば、開発資金の調達や販売のリスクを自ら負うことになる。大手の支援を受けていた制作体制を、自社の力でどこまで維持できるかも問われるだろう。
それでも同社は、これまでのテイストを保ちつつ品質をさらに高めた、独自性のあるタイトルを作り続けると宣言している。2028年3月に創立30周年を迎えるグラスホッパーが、自らの足で次にどんな作品を届けるのか注目したい。














