任天堂と株式会社ポケモンが、『パルワールド』の開発元ポケットペアを特許権侵害で訴えた裁判が、10月1日に節目を迎える。東京地裁の訴訟記録をもとにした報道によると、この日に「技術説明会」が開かれ、11月9日には裁判所が「心証」、つまり現時点での判断の見立てを示す見込みだ。

提訴から2年、訴訟はどこまで進み、この先に何が待っているのか。前提から整理したい。

争点はキャラクターではなく「遊びの仕組み」

訴訟が起こされたのは2024年9月だ。パルワールドは同年1月の早期アクセス開始直後から世界的なヒットとなり、「ポケモンに似ている」との声も多かった。ただし任天堂側が問題にしたのは見た目ではなく、ゲームの仕組みに関する特許である。対象は3件で、フィールドでアイテムを投げてモンスターを捕まえる仕組みや、乗っているキャラクターを切り替えて移動する仕組みに関するものだ。

請求内容は、ゲームの差止めと、両社それぞれへの500万円と遅延損害金の支払いである。3件の特許はいずれもパルワールドの発売後に出願・登録されたもので、2021年の出願から枝分かれさせる「分割出願」という手法で権利化された。そのため賠償請求の対象も、特許の登録日から提訴日までに生じた損害の一部で、発売直後の爆発的な売れ行きは含まれていない。

ポケットペアの仕様変更と絞られた訴え

ポケットペアは特許侵害を否定し、特許自体も無効だと主張してきた。その一方で「予防的な措置」として仕様変更を重ねている。

2024年11月のアップデートでは、パルスフィアを投げてパルを呼び出す機能を削除し、プレイヤーのそばに直接出現させる形に改めた。2025年5月には、パルの力で滑空する仕様を、アイテムのグライダーを装備して滑空する方式に変えている。

こうした変更の影響もあってか、任天堂側が2025年11月の時点で請求の対象を仕様変更前の旧バージョンに絞り込んでいたことが、2026年6月に報じられた。少なくとも本件訴訟によって、7月10日に正式版1.0を迎えた現在のパルワールドが販売停止に追い込まれる可能性は、事実上なくなったとみられる。

金額面の影響も小さい。海外の特許専門メディアgames frayは、任天堂が全面的に勝っても受け取れるのは最大500万円程度と試算する。対象が旧バージョンに限られるうえ、日本の特許の効力は国内にしか及ばず、該当する期間も短いためだ。総プレイヤー数が4,000万人を超えたヒット作にとって、事業を揺るがす額ではない。

10月1日と11月9日に何が起きるのか

特許訴訟では技術的な内容が争点になるため、双方が自らの主張を裁判官に説明する技術説明会が設けられる。東京地裁が公表している審理モデルでは、これを経て裁判所が「特許を侵害しているか」「そもそも特許は有効か」についての心証を当事者に示す流れになっている。

日本の特許訴訟は原則として、侵害の有無を判断する「侵害論」と、賠償額を算定する「損害論」の二段階で進む。侵害なしと判断されれば審理は判決に向かい、侵害ありなら損害論に移る。いずれの場合も、このタイミングで和解が勧められることがある。10月1日に勝敗が決まるわけではないが、心証開示に向けた最後の山場といえる。

ただし、心証は判決ではない。同モデルでは、心証は公開の法廷ではない「弁論準備手続」の場で示されることになっており、その中身がすぐに明らかになるとは限らない。

着地点はどこになる?

経済的に見れば、両社とも訴訟を続けるメリットは大きくない。加えて任天堂は、関連特許の審査でも逆風にさらされている。日本の特許庁は2025年10月、係争中の特許と同じ系統の出願に拒絶理由を通知した。

米国でも、任天堂の「サブキャラクターを呼び出して戦わせる」特許が再審査にかけられ、2026年3月に全26の請求項が拒絶された。いずれも最終判断ではなく、東京地裁の訴訟に直接影響するものでもないが、ゲームの仕組みを特許で押さえることの難しさは浮き彫りになりつつある。

心証開示を受けて和解に至るのか、判決まで争うのか。判決まで進めば、ゲームの仕組みに関する特許がどこまで認められるのかを示す一つの目安となる。金額以上に、業界のルールづくりに影響しうる裁判として注目したい。