アップルのサービス事業(Apple TVを含む)担当シニア・バイスプレジデントのエディ・キュー氏は9月24日、米ペイリー・センター・フォー・メディアが主催する業界幹部を対象とした招待制イベントに登壇。今年からApple TVで配信しているF1レースの視聴者数が、前シーズン(ESPN放送時代)に比べて2桁の伸びを見せていると明らかにした。米エンターテインメント誌「ザ・ハリウッド・リポーター(THR)」が伝えた。

キュー氏は、ESPN時代と比べて視聴者の年齢層が若く、女性比率が高まっていると付け加えた。アップルはESPNに代わり、F1の米国放映権を今年から5年間にわたり獲得している。

アップルはF1に注力しており、Apple Musicでのプレイリスト作成やレース会場周辺の地図提供に加え、フォックス傘下の広告付き無料ストリーミングサービス「Tubi」での代替配信や、Netflixとの提携によるレースの同時配信などを行っている。

キュー氏は「『君たちは独占放映権にお金を払っているのに、なぜわざわざNetflixでレースを配信するんだ?』と言われる」とコメント。「しかし、私の考えは当初から『どうすればこのスポーツ(F1)を成長させられるか?』で、あらゆる種類の試みをやっていくつもりだ。このスポーツを成長させれば、われわれは勝てる」と主張した。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「痛快な発言である。アップルのサービス事業を率いるエディ・キュー氏が、業界イベントで自社のF1戦略を語った。同社は今年から5年間、F1の米国独占放映権を獲得。ところが、広告付き無料配信のTubiにも別実況を開放し、NetflixにはカナダGPの同時配信まで認めた。「独占にお金を払ったのに、なぜNetflixで流すのか」と問われると、キュー氏はこう答えた。考えは当初から「どうすればこのスポーツを成長させられるか」であり、スポーツが育てば、われわれは勝てる、と。

囲い込みの発想とは逆である。独占権は門を閉ざすためでなく、祭りの胴元になるために買う。観客の母数が増えるほど、本丸のApple TV、ひいてはAppleのサービス経済圏の価値も上がるという算段だ。実際、キュー氏によれば、レース当日などの視聴はESPN時代から2桁増となり、若年層と女性も広がった。

自社傘下のCrunchyrollで先行配信した『鬼滅の刃』をNetflixなどにも広げたソニーの手筋とも響き合う。独占の時代の次は、開放で育てて勝つ時代かもしれない。」