Epic Gamesが、Disneyと共同開発中のシューターの発売を延期し、開発チームに「AIファースト」での制作を指示した。米Bloombergが2026年10月12日に報じたこのニュースが、いまゲーム業界に波紋を広げている。
<h2>『フォートナイト』のEpicとDisneyの大型提携</h2>
Epic Gamesは『フォートナイト』の開発・運営元であり、世界中のゲーム開発で使われるゲームエンジン「Unreal Engine」の提供元だ。2024年2月にはDisneyが15億ドルを出資して株式を取得し、両社は『フォートナイト』と連動するエンターテインメントの世界を共同で築く複数年の提携を結んだ。
今回延期が報じられたのは、提携に基づくゲームの第1弾となる未発表のシューター。同作品には、マーベルとスター・ウォーズのキャラクターが登場するという。
<h2>「手書きのコードはもう書かない」</h2>
報道によると、同作品は2027年3月の発売を目標にしていたが、開発チームには新たな日程が示されていない。開発は以前から遅れており、Epicが必要な人員と期間を少なく見積もっていたことが原因とされる。
そこで打ち出されたのが「AIファースト」の制作体制だ。ディレクターの1人は社内メッセージで「手書きのコードはもう書かない」と伝え、アートもすべてAIのワークフローで生成する方針を示したという。
これまでプログラマーやアーティストが手作業で担ってきた制作をAnthropicのClaudeなどのAIツールに任せ、人間はその成果物を監督し、方向付ける側に回る形とされる。10月上旬のビデオ会議でこの方針を知らされた開発者の中には驚く者もおり、方針の撤回を期待する声もあったと報じられている。
Epic広報ディレクターのジェイク・ジョーンズ氏はBloombergに対し、AIで加速する開発を進めているとしつつ、それを率いるのはあくまで自社の開発者だと説明した。一方、延期は両社とも公式に発表しておらず、Disneyはコメントも出していない。
<h2>スウィーニー氏「少人数で同じことをするためではない」</h2>
EpicのCEOティム・スウィーニー氏も同日、Xで「AIによる最大限の加速に向けて開発者を配置転換する、大規模な方針転換の最中だ」と投稿した。狙いは少ない人数で同じ仕事をこなすことではなく、全員がより多く、より良いものを作れるようにすることであり、その恩恵をUnreal Engineを使うすべてのチームに届けたいという。ただし、この投稿はDisney案件の延期や報道の個別の内容に触れたものではない。
なおEpicは2026年3月、2025年から続く『フォートナイト』のエンゲージメント低下を理由に、1,000人超の人員削減を発表している。当時スウィーニー氏は、削減はAIとは関係ないと説明していた。
<h2>業界に広がる「AIファースト」と現場の温度差</h2>
AIを経営の中心に据える動きはEpicに限らない。韓国のKRAFTONは2025年10月に「AIファースト」企業への転換を宣言し、約1,000億ウォンを投じてGPUクラスターを構築する計画を示した。国内でもスクウェア・エニックスが2025年11月、QAとデバッグ作業の70%を2027年末までに生成AIで自動化する目標を掲げている。
一方で、本事例に対する開発者の反応は厳しい。GDCが2026年1月に公表した業界調査では、生成AIが業界に悪影響を与えていると考える回答者が52%に達し、2年前の18%から3倍近くに増えた。
今回の試みが注目されるのは、AIを補助ツールとしてではなく、制作の主体として位置付けている点にある。
世界的な人気IPを扱う大作で、品質を保ったまま遅れを取り戻せるのか。人間の役割が「作る」から「監督する」へ移ったとき、現場の士気や雇用はどうなるのか。スウィーニー氏が成果をUnreal Engineの利用者にも還元するとしている以上、その成否はEpic一社にとどまらず、AI時代の大作開発の行方を左右するだろう。














