PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」で、セール作品の見せ方が大きく変わる。運営元のValveは9月29日(米国時間)、ストアのトップページにある「割引&イベント」欄を2027年初頭に刷新すると発表した。これまでは人の手で組んだ予定表どおりに作品を掲載してきたが、今後はユーザーごとの好みに合わせて自動でおすすめする方式に切り替える。
人が選んでいた「セール枠」
「割引&イベント」は、セール中の作品やイベントを紹介するトップページの一角だ。ここには1日ごとに入れ替わる「Daily Deal」や、週半ば・週末の特集枠「Midweek Deal」「Weekend Deal」があり、販売元が開発者向け管理画面「Steamworks」で予約するか、Valveのスタッフが日程を組んで掲載してきた。
Valveの開発者向け資料によれば、Daily Dealは1日2枠以上、週半ばと週末の枠はそれぞれ週に最大6枠しかない。枠はお金で買えるものではなく、プレイヤーのデータをもとに割り当てられ、原則として1作品につき年1回程度に限られる。選考では遊ばれている作品や売れ筋が基本になるため、載れば大きな宣伝になる一方、宣伝費の少ない小規模作品には狭き門だった。
作品が多すぎて枠が足りない
背景にあるのは、Steamに登録される作品数の急増だ。非公式データベースSteamDBによると、2025年にSteamで発売された作品は2万1404本にのぼり、2026年も上半期だけで1万2000本を超えた。限られた枠では、セール中の作品のごく一部しか紹介できない。Valveも、好みが多様化した今、手作業の予定表で枠を絞る意味は薄れたと説明している。
Valveはここ数か月、特集枠の一部を個人向けのおすすめに置き換える実験をしてきた。その結果、この欄で1日に表示される作品数は10倍になり、ストアページの閲覧やウィッシュリスト登録、カートへの追加も増えたという。
こうした変化は発表前から現場でも観測されていた。インディーパブリッシャーHooded Horseのティム・ベンダーCEOは、ある小規模作品でこの欄からの流入が過去5か月で計14件だったのに対し、直近1か月で7341件に跳ね上がったと報告している。ただし表示は好みとの相性次第で、すべての作品の流入が増えるわけではない。
「人の目利き」から「好みの一致」へ
Steamは2014年、プレイ履歴に応じておすすめを並べる「ディスカバリーキュー」を導入した。2015年には大型セール中の日替わり値引きを廃止し、会期中ずっと作品をおすすめできる仕組みへ移行した。2026年6月には、好みに合う新作を一覧できる「パーソナルカレンダー」を正式実装している。今回の刷新は、その流れの延長線上にあると見ていいだろう。
対照的なのが、Appleが手掛けるApp Storeだ。2017年に「Today」タブを設け、編集者による記事で作品を紹介する「人の目利き」を前面に出した。一方、ソニーのPlayStation Storeでは、利用者ごとに値引き額が異なる価格テストが行われていると、価格追跡サイトの分析をもとに海外で報じられた。Steamが個別化するのは「何を見せるか」であり、価格そのものではない点も押さえておきたい。
開発者とユーザーに何が起きるか
開発者にとっては、枠を「勝ち取る」競争から、好みの合うユーザーに「見つけてもらう」競争への転換となる。ストアページの情報やタグを整え、ユーザーに選ばれた実績を積むことが、これまで以上に重要になるだろう。
一方で、特集日に合わせてアップデートを打つような計画的な販促は組みにくくなるかもしれない。ユーザー側でも、「好みに寄りすぎて、ふだん触れないジャンルとの偶然の出会いが減るのでは」という懸念が出ている。
特集枠の新規予約はすでに停止されており、予約済みの枠はそのまま実施される。Valveは割引やイベントを管理する開発者向けの新ツールを用意するとしており、詳しい時期は今後数週間のうちに伝えるという。
年間2万本以上が加わる売り場で、アルゴリズムは埋もれた良作を照らすのか。それとも、見える範囲をより一層狭めるのか。2027年の運用開始後に答えが出るはずだ。














