セガとCreative Assemblyは10月15日、PC向け戦略シミュレーション『トータルウォー:ショーグン2 コンプリートエディション』の販売を一時停止すると発表した。日本時間10月14日の発売から48時間足らずでの撤退となる。シリーズ初の日本語フルボイスをうたった”完全版”に代わり、Steamで販売が再開されるのは2011年発売のオリジナル版だ。

「圧倒的に不評」の2日間

本作は、セガ傘下の英国スタジオCreative Assemblyが2011年に送り出した名作に全DLCを収録し、グラフィックの刷新や4K対応のUIスケーリング、64bit化などを施したリマスター版だ。開発には外部パートナーのMATABOOも加わった。

しかし発売直後からSteamのユーザーレビューは荒れ、販売停止前には2,000件超のうち好評はわずか19%と、最低ランクの「圧倒的に不評」に沈んだ。旧版から残る不具合に新たなバグが加わり、動作も重くなったとの報告が相次いだ。MODの導入がSteamワークショップからmod.ioに移り、新版では15年分の既存MODが動かない点も反発を招いた。

説明されない「AI疑惑」

火に油を注いだのが、ユニットカードなどのイラストにAIによる拡大処理が使われたのではないかという疑惑だ。原画の細部が崩れた比較画像や、指が6本ある侍の絵がRedditなどで拡散した。

Steamを運営するValveは、ゲームに同梱されプレイヤーが目にする生成AIコンテンツについて、発売前の申告とストアページでの開示を求めている。ところが発売週の報道では、本作のストアページにその表示は見当たらなかった。

もっとも、AIが実際に使われたかは確認されておらず、従来型の拡大処理であれば開示の対象外となる可能性もある。ただ、セガの声明は品質不足を認めて開発パートナーと原因を調べるとしただけで、AI使用の有無には触れていない。同社は今年6月、新作『Crazy Taxi: World Tour』のSteamページで生成AIの使用を自ら開示したばかりだ。制度を熟知するはずの企業が、今回は説明していない。その空白が不信を広げている。

「上書き型リマスター」の落とし穴

騒動を大きくしたもう一つの要因が旧版の扱いだ。セガは新版の発表時に、オリジナル版のSteamでの単体販売を9月28日に終了すると告知していた。既存の所有者は旧版を遊び続けられ、新版も期間限定の75%引きで買えた。だがこれから買う人にとっては、米国価格29.99ドルの旧版が消え、39.99ドルの新版しか選べなくなった。

新版が旧版を置き換える「上書き型」の手法は、過去にも反発を招いてきた。2021年の『GTA』トリロジーのリマスター版は、AIを用いた高解像度化の粗さに加え、発売前に旧作をデジタルストアから外したことでも批判を浴びた。ロックスター・ゲームスは謝罪し、旧作PC版の再販を約束している。2020年の『ウォークラフトIII リフォージド』では、新版を買っていない旧作の所有者までもが新クライアントへの更新を強いられた。

プレイヤーにとっての「所有」は、購入した権利だけを指すのではない。慣れ親しんだ版を選べることや、長年積み上げたMODやコミュニティの資産が生き続けることも含まれる。上書き型のリマスターは、その感覚を一方的に奪いかねない。

「完全版」に求められる2つの条件

旧作を現代の環境で遊べるようにするリマスターには、確かな意義がある。ただし旧版の販売を止めて新版に一本化するなら、新版は少なくとも旧版を下回ってはならない。

加えて、AIをどう使い、どう説明するかも品質の一部とみなされる時代になった。旧版という逃げ道を残すこと、制作工程を透明にすること。今回の撤退は、その2つを欠いたリマスターがいかにもろいかを示している。