マイクロソフトの次世代Xbox「Project Helix」をめぐり、衝撃的な数字が報じられた。米経済誌Fortuneが10月20日に掲載したXbox CEO、アシャ・シャルマ氏の特集記事によると、同機の消費者向け価格は社内で1,200〜1,800ドル(1ドル=約157円の単純換算で約19万〜28万円)と試算されているという。あわせて、2027年のホリデーシーズン(年末商戦)までに次世代携帯機を、2028年のホリデーシーズンまでに据え置き機を投入する計画も伝えられた。

ただし、これはあくまで社内の試算であり、マイクロソフトは価格も発売時期も正式には発表していない。Fortuneも「マイクロソフトがコストを負担しない限り」という条件付きで紹介している。それでも、ゲーム機の価格はどこまで上がるのか。「ハード価格の天井」という視点から、この報道を読み解きたい。

現行機ですら10万円を超える時代

値上がりは次世代機に限った話ではない。日本では2026年8月にXbox Series Xが3万円値上げされ、ディスクドライブ搭載モデルは11万7,980円になった。PS5も4月の改定で9万7,980円となり、2020年の発売時(5万4,978円)の約1.8倍に達している。Nintendo Switch 2も日本語・国内専用版が5月に1万円値上げされ、5万9,980円になった。

マイクロソフトは値上げの理由について、ゲーム機向けのメモリとストレージの価格が2.5倍以上に上昇し、2027年秋までにさらに倍増する見通しだと説明している。

AIブームがメモリを奪い合う構図

背景にあるのは、AI向けデータセンターの建設ラッシュだ。メモリメーカーは利益率の高いデータセンター向け製品を優先して生産しており、パソコンやスマートフォン、ゲーム機向けの供給は後回しになっている。

ゲーム機ならではの事情もある。マイクロソフト自身が説明するように、ゲーム機は本体を製造コストより安く売るのが業界の慣行で、利益はソフトやサービスで回収する。部品代が高騰すれば、本体の赤字はその分だけ膨らむ。

シャルマ氏も4月、米メディアGame Fileのインタビューで、メモリのコストが次世代機の価格と供給量に影響すると認めていた。しかもFortuneによれば、マイクロソフト社内の指標でXbox部門の利益率は約3%にとどまる。赤字覚悟で価格を抑える余力は大きくない。

「天井」にぶつかったメーカーの選択肢

ゲーム機の価格には、これまで暗黙の天井があった。2006年、米国で上位モデルが599ドルに設定されたPS3が「高すぎる」と批判され、苦戦したのはよく知られた話だ。1,200ドルという試算の下限ですら、その2倍にあたる。

部品代が天井を突き抜けたとき、メーカーが取れる道は限られる。ひとつは発売を遅らせることだ。ソニーは次世代PlayStationの発売を2028年か2029年に延ばすことを検討していると、2月にBloombergが報じている。

もうひとつは、ゲーム機ではなく”ゲーミングPC”の価格帯で勝負することだ。Valveが6月に発売した「Steam Machine」は1,049ドルからとなり、同社も当初の目標価格は実現できなくなったと認めた。XboxとPCの両方のゲームが遊べるHelixも、この方向に近づく可能性がある。

そして3つ目が、売り方そのものを変えることだ。シャルマ氏は6月にFortuneのインタビューで、一般の人々が新世代機に数千ドルを払うのは難しいとの認識を示し、根本的に異なるビジネスモデルの登場を示唆していた。今回の記事では、Game Passを機能ごとに選んで契約できる形へ組み替える構想も伝えられた。

価格の天井を最終的に決めるのは、部品代ではなく消費者の財布だ。ゲーム機は、誰もが手に取れる娯楽の入り口であり続けられるのか。Helixの価格は、その行方を大きく左右しそうだ。