『マスエフェクト』や『ドラゴンエイジ』シリーズで知られるRPGの名門スタジオ、BioWare(バイオウェア)が閉鎖される。米Electronic Arts(EA)が10月21日(米国時間)に明らかにしたもので、BioWareも公式Xで閉鎖を認め、初期開発中だった『マスエフェクト』シリーズ次回作の開発終了を伝えた。米Bloombergは関係者の話として、EA全体で全従業員の約3%にあたる約400人が削減され、そのうち約50人がBioWareの社員だと報じている。

30年余り続いた「選択で物語が変わるRPG」の作り手

BioWareは1995年、カナダのエドモントンで設立された。『バルダーズ・ゲート』(1998年)や『スター・ウォーズ ナイツ・オブ・ジ・オールド・リパブリック』(2003年)で評価を確立し、2007年にEAによる買収が発表された。同年発売の『マスエフェクト』、2009年の『ドラゴンエイジ:オリジンズ』は、プレイヤーの選択によって物語の展開や仲間との関係が変わる作りが支持され、欧米RPGを代表するシリーズに育った。

近年は不振と縮小が続いていた

一方、2010年代後半からは苦戦が続いた。2017年の『マスエフェクト:アンドロメダ』は評価が伸び悩み、2019年のオンライン専用タイトル『Anthem』もプレイヤーが定着せず、2026年1月にサーバーが停止された。2024年10月発売の『ドラゴンエイジ:ヴェイルガード』も、EAによれば発売を含む四半期に遊んだプレイヤーは約150万人で、想定を5割近く下回った。

背景にある約8兆円の買収

今回の判断は、EAの経営体制が大きく変わった直後に下された。EAは2026年8月4日、サウジアラビアの政府系ファンドである公共投資基金(PIF)、米投資会社シルバーレイク、ジャレッド・クシュナー氏が創業したアフィニティ・パートナーズの投資家連合による買収を完了し、非上場企業となった。買収額は約550億ドル(約8.25兆円、1ドル150円換算)で、うち約200億ドル(約3兆円)は借入で賄われたと報じられている。

このように借入を元手に企業を買う手法はLBO(レバレッジド・バイアウト)と呼ばれ、買われた企業が自ら稼いだ資金で返済を進めるのが一般的だ。EAのデビッド・ティンソンCOOとキャム・ウェバー最高スタジオ責任者は社員向けの書簡で、数カ月かけて事業を見直した結果、成長が見込める領域に人材と投資を集中させると説明した。

『The Sims』関連の開発中タイトルが中止される一方、RespawnとDICEは『スター・ウォーズ バトルフロント』の新作とみられるタイトルを共同開発するという。収益の見通しが立ちにくい部門を整理し、大型シリーズに資源を寄せる方針がうかがえる。

「IPは残り、スタジオは消える」

ただし、『マスエフェクト』というIPの売却などは発表されておらず、引き続きEAが保有する。2024年にはAmazonによる実写ドラマ化も発表されたが、閉鎖後の扱いはまだ明らかになっていない。

EAは過去にも、『Dead Space』を手がけたVisceral Gamesを2017年に閉鎖したが、同作は2023年に傘下の別スタジオ、Motive Studioによるリメイクで復活した。大手パブリッシャーにとって中核の資産はIPであり、スタジオは入れ替え可能な存在として扱われやすい。

もっとも、BioWareの閉鎖を投資ファンドの論理だけで説明するのは早計だ。土台には10年近い不振があり、「巨額の借入を抱えた新体制がその判断を早めた」と見るのが自然だ。今後の焦点は、『マスエフェクト』が誰の手でどう受け継がれるのかに移っていくだろう。