「異議あり!」の決めゼリフで知られるカプコンの人気シリーズ『逆転裁判』が、VRゲームとして生まれ変わる。

東京のゲーム開発会社・あまたは9月24日、カプコンからライセンス許諾を受けた新作『逆転裁判5 VR』を、米MetaのVR機器「Meta Quest」向けに2027年に発売すると発表した。価格は未定で、Metaの公式ストアでのダウンロード専用販売となる。対応言語は日本語や英語など7言語、プレイ時間は15時間以上とされる。

そもそも『逆転裁判』とは

『逆転裁判』は2001年10月にゲームボーイアドバンス向けに第1作が発売された、「法廷バトル」を掲げるアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは弁護士となり、事件現場で証拠を集める「探偵パート」と、証人の証言に潜むムジュン(矛盾)を証拠品で突く「法廷パート」を行き来しながら、無実の依頼人を救う。

ゲームの枠を超え、実写映画やアニメ、宝塚歌劇団による舞台にも展開されてきた。10月12日にシリーズ25周年を迎え、9月20日には初期3作をまとめた『逆転裁判123 成歩堂セレクション』の世界販売が500万本を突破したと発表されたばかりである。

今回VR化されるのは、2013年にニンテンドー3DSで発売されたシリーズ第5作だ。弁護士に復帰した初代主人公・成歩堂龍一らが、法廷爆破から始まる事件に挑む。本作はナンバリング作品として初めてグラフィックを2Dから3Dへ一新した作品でもあり、立体空間に置き換えやすい素地があったことも選定の背景にあると考えられる。

VRで何が変わるのか

VRとは、頭にかぶるゴーグル型の機器(ヘッドセット)を通じ、周囲360度に広がるゲーム空間に入り込んだように体験できる技術である。発表によれば、本作は手の動きを機器が読み取る「ハンドトラッキング」に対応し、指でつまむ・叩くといった簡単な動作で操作できる。

探偵パートでは再現された事件現場をさまざまな角度から調べられ、法廷ではジェスチャー操作で証言の矛盾を暴いていく。Metaのストアページには音声で操作するコマンドへの言及もあり、一部メディアは「異議あり!」を実際に声で叫べる仕組みだと報じている。これまで画面越しに見ていた弁護士の立場を、自分の身体で演じられるようになるわけだ。

開発は『どこでもいっしょ』のディレクターが率いるスタジオ

開発と販売を担うあまたは2008年設立。スマートフォンゲームの開発を主軸とする会社で、代表の髙橋宏典氏はプレイステーション向け『どこでもいっしょ』(1999年)のディレクターを務めた人物だ。同社は2019年にVR脱出アドベンチャー『Last Labyrinth』を企画・開発するなど、VRでの物語表現に取り組んできた。

人気ゲームのVR化自体には前例がある。カプコン作品では2021年、『バイオハザード4』がカプコン、Meta傘下のスタジオ、米Armature Studioの共同体制でQuest 2向けにVR化され、原作の三人称視点を一人称視点に作り替えた。推理ものでは、スパイク・チュンソフトが2015年の東京ゲームショウで『ダンガンロンパ』の裁判パートを体験できるVRデモを公開し、翌2016年に技術デモとして配信している。これらに対し今回は、国内の開発会社がライセンスを受け、推理アドベンチャーのナンバリング作品を製品としてVR化する珍しい例となる。

軽量VR機の登場という追い風

本事例のタイミングも見逃せないポイントだ。Metaは9月23日(米国時間)に開いた年次イベント「Meta Connect 2026」で、グラス部分の重さを約100gに抑えたメガネ型の新機器「Meta VR Glasses」を発表し、2027年春に日本を含む25か国で発売するとした。

発売時にはハンドジェスチャーだけで遊べるゲームを75本以上そろえるといい、『逆転裁判5 VR』も対応を表明している。重さや操作の難しさといったVRの壁が下がれば、アクションが苦手なアドベンチャーファンにもVRが届く可能性がある。25周年を迎える長寿シリーズが、その入り口となれるか注目したい。