先日、9月11日に「ANIMAX MUSIX NEXTAGE 2026」というイベントがありました。新宿の専門学校——東放学園映画アニメCG専門学校の地下2階にある「Studio Dee」というスタジオで、今回も4組のアーティストが出て、11月21日に横浜アリーナで行われる「ANIMAX MUSIX 2026」DAY2への出演権をかけて争いました。
出ていたのは、ソロシンガーの高島一菜(Hinano)ちゃん。4人組アイドルグループ・天空のシラバス。メインボーカルAKARIを軸に、楽曲ごとにスクリーム担当のゲストを迎えるメタルアニソンユニット・METANICK。そして、プリキュアの歌も歌ってきた吉武千颯さん。この4組から、会場と配信のお客さんの投票で、横浜アリーナに送る1組を決めるわけです。




正直、もともとの知名度で言うと、下馬評ではプリキュアの歌を歌っていた吉武千颯さんが有利なのかなと思ったんですが——天空のシラバスが配信で投票を呼びかけたり、メンバーがビラを配ったりという非常に積極的な活動を見せて、なんと投票1位。横浜アリーナに行くのは、天空のシラバスになりました。
で、今回はこの日をきっかけに考えた話——僕が勝手に「アニソンいい子ちゃん問題」と呼んでいるものについて、させてください。
天空のシラバスが、横浜アリーナへ

いや、本当にすごかったですよ。このイベント、みんなアニソンカバーを1曲は入れることになってるんですけど、天空のシラバスが入れてきたのが、先輩というか——声優ユニットのそもそもの草分け——スフィア(Sphere)が歌っていた「MOON SIGNAL」でした。もう、本当にアニソンファンに向けて、わかってる選曲。

ちなみにANIMAX MUSIXは、「アニメミュージックの魅力を世界へ」をコンセプトに掲げてきたイベントで、「アニメミュージック」という言葉を大切にしているんですよ。そのステージで天空のシラバスが「MOON SIGNAL」をカバーしているのを観て、濃くていいな、と思いました。


11月20日と21日、横浜アリーナの2日間
さて、その本番が行われるのが、11月の20日と21日です。
20日の1日目もかなり規模が大きいんですが、こちらはバンドセットがほとんど。出るのが岸田教団&THE明星ロケッツ、GRANRODEO、MYTH & ROID、宮川大聖、Mori Calliope、Reol——というところまでが決まっています。ロック色のある日で、司会もいない。DJ和君がDJで出ます。
そして11月21日。こちらは私が、MCをさせていただく日です。藍井エイル、いきづらい部!——『ラブライブ!』シリーズの『イキヅライブ! LOVELIVE! BLUEBIRD』から生まれたグループですね——、伊藤美来、ウタヒメドリーム オールスターズ、ウマ娘 プリティーダービー、オーイシマサヨシ、大西亜玖璃、奥井雅美 田中有紀、小倉 唯、sajou no hana、七人のカリスマ声優、JELEE、鈴木このみ、茅原実里、そしてここで天空のシラバスが入ってきて、東山奈央、南條愛乃、Hearts2Hearts、HoneyWorks feat.ハコニワリリィ、fripSide、前島亜美、MADKID——というところが決まっていたりするわけですね。
で、ここで私、ひとつ言いたいことがありまして……
アニソンが、ビッグネームのものになりすぎていないか
最近アニソンというのが超ビッグネームのアーティストが担当するものになりすぎちゃってるな、と思っているんです。
たとえばYOASOBIの「アイドル」は、海外の人たちにも広く届く曲になっている。その大きなきっかけとしてアニメ『【推しの子】』を欠かすことは出来ないでしょう。だからYOASOBIとか、米津玄師とか、Official髭男dismとか、キタニタツヤとか、名だたるアーティストがすごいクオリティの曲を作ってくるのが、当たり前になっている。
アニメの力を使って世界に届ける、というのはすごくポジティブな動きだと思うし、それによって日本の音楽全体にすごくプラスなことが起きているとも思います。でも——これが当たり前になりすぎていないか、と個人的には思うわけです。
それなのに、近年のアニメロサマーライブ(伝統的に続いているアニソン業界最大規模のライブですね)にも、ANIMAX MUSIXにも、そういうビッグネームは出演していません。
昔は「寄せない」距離感もあった
少なくとも僕の感覚では、以前は、アーティストとして活動してきた人たちが、今ほどアニメ作品に深く寄せた曲を作るケースばかりではなかったと思うんです。たとえば『鋼の錬金術師』ではL’Arc~en~Cielが主題歌を担当していますけど、これは、アニメに合わせて書き下ろしたというより、ラルクの音楽性がまずあって、そこに作品が結びついたタイアップでした。当時のアニメ側の審美眼がすごかった名タイアップですが、当時のタイアップでは、アーティスト自身の音楽性が優先されていて、作品への解釈はその次でした。
で、今は。ビッグアーティストもみんな、アニメに対しての理解度が低いことなんてありえない。「この歌に対してこういう解釈をするなんて、超かっこいいな」という曲が、片っ端から並んでいるわけですよ。クオリティの高さは圧倒的です。米津玄師の「IRIS OUT」が劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の歌でないわけがない、ぐらいのシンクロ感だったりとか。ごく最近の例で言うと、TVアニメ『これ描いて死ね』のOPにキタニタツヤが「遺書」を書き下ろしたとき、そのタイトルを見て——本当に、今でしか使えない言葉を使ってきて、すごくかっこいい。Vaundyが歌うTVアニメ『黄泉のツガイ』のOP「飛ぶ時」も、「確かにな」と思う素晴らしさがあります。
そしてさらに、自分のアーティストとしてのレパートリーに、きっちりはまるような曲にもなっている。今の流行を外していないし、今のリスナーが何を考えているかを、ちゃんとわかった上でできている。それは素晴らしいことですよ。が——これが当たり前になりすぎていないか、と。このハイクオリティさが当たり前になりすぎて、アニソンがもたらしてくれていた、意外性や痛快さが、薄れているんじゃないか、と。
僕にとって、アニソンはカウンターカルチャーの音楽だった
少なくとも僕がアニメに惹かれてきたのは、アニメはカウンターカルチャーだったからです。そこに結びつくアニメミュージック(ANIMAX MUSIXに寄せて言うと、この言い方になりますが)には、本来、人間が気持ちいいと感じてもおかしくないのに、流行りとは関係ない、「俺たちがやりたいからやるよ」というパワーに満ち溢れたものがあったと思うんですよ。
たとえば今、アニソンのクラブの現場でかかって、みんながうわーっとなる曲。「回レ!雪月花」とか、ご存知ですか?TVアニメ『機巧少女は傷つかない』のエンディングテーマで、歌っているのは声優さんです。アニソンファンだったら知らないわけがないんですけど、あれはヒゲドライバーという天才が作った、本当に沸き立つように楽しい——「民族的に」楽しいと感じられる曲です。けれども、あれをトップアーティストが普通に自分のラインナップに加えるのは、なかなか難しいだろう、という曲なわけですよ。
アニソンフェスというのは、「みんなは知らないかもしれないけど、僕らが心から楽しいと思っている人たち」を、年に数回の大きな舞台で、「うおーっ!」と一緒になって楽しむものだったと思うわけですよ。だから、ビッグアーティストがスペシャルで来てくれたら、それは嬉しい。でも、無理して来てもらう必要はないんじゃないか。近年のアニソンフェスに対して、アニソンの代表曲を歌っているトップアーティストが出ないということを冷笑する人がいるのは、アニメの本来の楽しさを見失っているのではないかと思います。むしろ、アニソンが大人が聞くモノじゃない、とか言われてた時代に戻れるチャンスだと思います。
むしろ、アニソンの本道がそういうウェルメイドな方向に行っているがゆえに、今こそもう一度、アニソンは土着的で楽しいものに戻れるチャンスなんじゃないのか——と、個人的には思っているところです。だから今回、天空のシラバスがNEXTAGEで選ばれたのは、アニソン文脈につながっていて、すごくいいなと思いました。
その中で僕は、HYを推したい
そしてこの業界の中で今、圧倒的に重要なのは、オーイシマサヨシだと思います。エンターテインメントとしてもまずハイクオリティで楽しいし、つねにアニメのための曲を作り続けていて、もちろんアニソンフェスにも出て、「アニソン王になる!」と宣言している。まさに、思想の中心にいます。その上でさらに、世の中の人にも、世界にも届いている! すばらしすぎます。
しかし、オーイシが素晴らしいのは、アニメ、アニソンファンなら誰でも認めること。その中で、僕だけが推したいアーティストがいます。誰かというと——HYです。
いや、知らないわけないでしょう、と。皆さんご存知のビッグアーティストじゃないですか。代表曲「366日」をモチーフに映画まで作られるような、ほかにも「AM11:00」とか、ハートを揺らすタイプのアーティストですよね。
そのHYが、なぜかここ数年、超メジャー級の大ヒット作というわけではないアニメの主題歌をやっているんですよ。しかも、それが全部振り切っていて、最高なんです!
僕がいちばん好きなのは、『きのこいぬ』というアニメにHYが書いた主題歌。タイトルからして、その名も「きのこいぬ」です。自分たちのラインナップに、どうやって入れるつもりなんだろうと思うじゃないですか。でも、作品には寄り添いまくっているわけですよ。きのこいぬというのは、きのこと犬の両方の特性を持った、正体不明の可愛い生きものなんですが、歌い出しからして、このきのこいぬはどこから生えてきたのか——という、作品の根本の謎そのままから始まる。そしてサビでは、曲名どおり「きのこいぬ」を連呼しながら、君が何者なのかは分からないけれど、ただあたたかい——という趣旨のことを歌うんです。最高!と思って。
これ、マーケティングでは確実に作られないじゃないですか。マーケティングじゃできないものが聞けるのが、アニメミュージック——アニメ音楽のいいところだと、僕は思うわけです。
さらに、これも明るくて大好きだった作品『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』——「沖ツラ」というアニメの主題歌も、HYが歌っています。「大大大好き」という曲なんですけど、この曲のポイントは——HYが沖縄出身のバンドだというのは、ご存知の方がほとんどだと思います。でも、これまでは、沖縄っぽさを前面に売りにしてきたバンドではないですよね?それが「大大大好き」に関しては、思いっきり沖縄っぽさ全開の三線の軽快なメロディーを前面に出してくる。いやいや、今まで沖縄売りをしないことを大切にしてたんじゃないのかな、というところを、アニメのために振り切ってやってくれる。しかも、全部いい曲なんですよ!HY、最高!!
「アニソンいい子ちゃん問題」への、二つの回答
あまりにもウェルメイドなものを、アニメへの理解があるアーティストが作ってくれる——この状況を、僕は勝手に「アニソンいい子ちゃん問題」と呼んでいるんですが、今、この問題に対する回答が、二つ見えている気がします。
一つは、土着の方向。ニヤニヤしながらみんなで楽しめる、人に気持ち悪いと言われても「俺たちはこれが楽しい」と言える状況に、もう一度戻れそうだということ。もう一つは、ビッグアーティストの方向で、HYみたいなことをやってくれる人がいるということ。この二つの回答に、勝手に入れ込んで行きたい、と私は思っています。
というわけで、11月21日の「ANIMAX MUSIX 2026」横浜アリーナ、めちゃめちゃ楽しみにしております。MCはお仕事です。でも、こうしてHYの話を延々してしまう、この部分は仕事じゃないです。ただ好きなだけです。それでは、また次回。














