GoogleとUnityは10月7日、AIを活用した新たなゲームプラットフォームに関する戦略的パートナーシップを発表した。中核となるのは、Googleが同日に試験提供を始めた「Playground」だ。

作りたいゲームを文章で伝えるだけで、プログラミングなしに遊べるゲームができあがる。対象は現時点で米国の18歳以上に限られるが、AIとゲームエンジンの有力企業同士が「誰でもゲームを作れる時代」に向けて手を組んだ意味は小さくない。

Unityとは何か?Googleと組む意味

キャラクターの動きや物理演算、画面の描画、音の再生等々、ゲームに欠かせない仕組みを毎回ゼロから作るのは非効率だ。そこで多くの開発者が使うのが「ゲームエンジン」と呼ばれる開発基盤で、Unityはその代表格である。同社によれば、世界のモバイルゲーム上位1000本の7割以上がUnityで作られている。

一方のGoogleは、生成AI「Gemini」などのAI技術に加え、ゲームサービス「Google Play Games」を通じて多くのプレイヤーとの接点を持つ。今回の提携は、Googleの「AIと集客力」と、Unityの「ゲーム制作のノウハウ」を掛け合わせる試みといえる。

Playgroundでできること

Playgroundはブラウザ上で動き、「こんなゲームを作りたい」と入力すれば、すぐに試遊できるゲームが生成される。物理挙動やルール、キャラクター、ステージも、AIとの会話で作り替えられる。Googleが米メディアに明かしたところでは、汎用AIのGemini、画像生成の「Nano Banana」、音楽生成の「Lyria」が使われているという。

完成したゲームは非公開のまま楽しむことも、リンクで友人に共有することも、ギャラリーで一般公開することもできる。Google Play Gamesのプロフィールでログインすればランキングに参加でき、一部ジャンルではマルチプレイにも対応する。有料サービス「Google One」の加入状況に応じて、ゲーム生成に使える枠が広がる仕組みだ。

本格派向けの「Unity Spark」

手軽さを重視したPlaygroundに対し、より本格的な作品づくりを担うのが「Unity Spark」だ。Playgroundを土台とした拡張版の制作環境で、年内の提供を予定し、まずはクローズドβ(限定公開のテスト版)から始まる。

Unityのエンジン技術で本格的なゲームの仕組みや高品質な3D表現を扱えるほか、同社の素材ストア「Asset Store」にあるアーティスト制作の素材も活用できる。Playgroundで入門し、Sparkで作り込むという段階的な流れだ。ただし当初は、ゲームの販売やUnity本体への書き出しには対応しないと報じられている。

背景にある「Genieショック」

提携の背景には、今年1月の出来事がある。Googleは文章や画像から自由に動き回れる3D空間を生成するAI「Project Genie」を公開。「AIがゲームエンジンを不要にするのでは」との観測から、Unityの株価は1日で2割以上下落した。

それから約8カ月、Googleが選んだのはUnityとの協業だった。AIが得意な「素早い試作」と、エンジンが得意な「作り込み」を分担する構図である。

米Robloxも7月、文章からゲームの土台を作れる新機能「Build」を発表した。『RPGツクール』や『スーパーマリオメーカー』のように遊び手を作り手に変える仕組みは以前からあったが、生成AIはその敷居をさらに下げつつある。

一方で課題も残る。開発者の間では生成AIへの警戒感が根強い。既存作品の模倣をどう防ぐかも焦点で、Playgroundの規約は他社キャラクターなど第三者の知的財産の無断使用を禁じている。日本での提供時期も未定だ。

それでも、今回の連携が「遊ぶ人」と「作る人」の境界を揺さぶる可能性は大きい。Sparkがどこまで本格的な作品を生み出せるのか、今後の動向に注目したい。