オープンAIは、クリエイター向けクラウドファンディングプラットフォーム「Patreon(ペイトレオン)」のサム・ヤム共同創業者を、新設するクリエイター製品部門の責任者として迎え入れた。

ヤム氏は、PatreonのCTO(最高技術責任者)を10年以上にわたり務め、クリエイターエコノミー向けツールの開発を主導し、Patreonの創業期から現在に至るまで、多額の報酬の支払いを促進してきた人物。ヤム氏は、Patreonのプロダクト責任者だったドリュー・ローニー氏と、エンジニアリング責任者だったシャノン・マ氏と共にオープンAIに移籍する。

3人は、ChatGPTのようなサービスをクリエイターやそのパートナーのためにさらに有効に活用できるエコシステムの構築に取り組む。ヤム氏によると、9月29日にサンフランシスコで開催されるオープンAIの開発者向けイベント「DevDay」で、クリエイター向け製品のプレビューが行われる予定だ。

今回の人事は、オープンAIが、クリエイターや彼らが影響力を及ぼすオーディエンスとの距離を縮めようとする、より広範な取り組みの一環。同社は4月、AIに関する建設的な対話を促進するため、シリコンバレーと金融をテーマにしたトークショーをオンライン配信する「TBPN」を買収。こうした提携を推進する一方で、生成AIを自身の生計の脅威とみなすクリエイターたちからの反発にも直面している。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「OpenAIが、大きな一手を打った。クリエイターがファンから月額支援を受ける仕組みの草分け「Patreon」の共同創業者、サム・ヤム氏を、新設のクリエイター製品部門の責任者に迎えたのである。Patreonの製品責任者と技術責任者も同時に移籍し、中枢3人がまとめてOpenAIへ移る形だ。この人選は、狙いを雄弁に物語る。ヤム氏は10年以上CTOとして、ファンの応援をクリエイターの収入に変える仕組みを磨き続け、累計で巨額の支払いを支えてきた人物。つまりOpenAIが欲したのは、AIの才能ではなく「クリエイターが食べていける経済圏」を作った実績である。ChatGPTは、書く・描く・調べる道具としては普及した。次の段階は、その中でクリエイターが観客と出会い、収入を得られる場になることだろう。詳細は9月29日の開発者イベントで予告されている。生成AIへの反発が続く中、敵と見られてきた側が「稼がせる側」に回れるか。注目の実験である。」