ウォルト・ディズニー・カンパニーは9月17日、同社初の最高技術責任者(CTO)に、Character.AIの元CEOであるカランディープ・アナンド氏を任命すると発表した。同氏は、メタ・プラットフォームズやマイクロソフトでも幹部を務めた人物。

ジョシュ・ダマロCEOは、Disney+を中心とした資産のより緊密な連携を目指す「One Disney」戦略に合わせて組織の再編を進めている。前日には、2024年入社でグーグルおよびYouTubeで20年のキャリアを持つアダム・スミス氏を、ディズニー・エンターテインメントのダイレクト・トゥ・コンシューマー(DTC)部門の会長に任命。スミス氏はこれまで同部門の共同会長を務めてきたが、DTC事業全般を1人の幹部の下に統合することで、Disney+の運営体制の簡素化を図る。

ディズニーは昨年9月、自社キャラクターの無断使用でCharacter.AIに差止請求書を送付しており、これを踏まえると、アナンド氏の起用は興味深いものだ。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「この人事、経緯を知ると味わいが増す。ディズニーは昨年9月、自社キャラクターの無断使用を巡り、Character.AIに差止を求める書面を送っていた。その相手方のCEOだった人物を、1年後に初代CTOとして迎えるのである。喧嘩の相手は、自社IPの価値とAIの危うさを最も熟知した人材でもあった、という逆説だ。この作法は、ITバブル期の失敗と好対照をなす。あの時代、タイムワーナーはAOLと合併し、ITの熱狂に経営ごと飲まれて歴史的損失を出した。今回は逆に、AIの中枢人材を一人、コンテンツの城に招き入れ、主導権はダマロCEOの「One Disney」体制が保つ。同時に、GoogleとYouTubeで20年のスミス氏を配信部門の単独会長に据え、技術系人材の登用を続ける。配信転換をDisney+で乗り切った成功体験が、この自信の土台だろう。守るために訴え、勝つために雇う。IP企業のAI時代の戦い方として、実に示唆的な二段構えである。」