音声生成AIを手がけるイレブンラボ(ElevenLabs)は9月30日、3億ドル規模の従業員向け株式売却(テンダーオファー)の完了に伴い、同社の企業価値が220億ドル(約3兆4,700億円)に達したと発表した。今年2月から倍増しており、同社は「会話型エージェントに対する企業からの需要」を成長要因に挙げている。
今回の従業員向け株式売却は、ウェリントンとT.ロウ・プライスが主導。ゴールドマン・サックス、EQT(Fever、Believeの投資家)、GIC(ソニー・ミュージックグループと音楽カタログ取得で提携しているシンガポール政府系ファンド)、オンタリオ州教職員年金基金、サファイア・ベンチャーズ、BDT & MSDが新規投資家として加わった。
イレブンラボは当初のAIテキスト読み上げ技術から、音声認識、効果音、吹き替え、音楽、対話型AIへと事業領域を拡大している。売上高の55%を法人向けが占め、音声・チャットエージェント展開プラットフォーム「ElevenAgents」の年間経常収益(ARR)は今年2月以来、3倍超に急増した。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「この3兆4,700億円という評価額は、音楽界への予告でもある。イレブンラボの急成長が証明したのは、「声」そのものに巨大な市場があるという事実だ。企業の電話応対、吹き替え、ナレーション、対話エージェント。あらゆる場面で質の高い声の需要が爆発し、法人売上が55%を占め、赤字続きが常のAI業界で早くも黒字を達成した。空想ではなく、現に稼げる市場なのである。ならば、次に価値が跳ね上がるのは、世界中のファンが聴き分けられる声、つまりアーティストの声だろう。既に兆しはある。同社は9月にUMGと複数年契約を結び、許諾型の音楽生成へ踏み出した。海外では、名物実況者の声が本人の死後もAIで放送を続ける契約も現実になった。歌声や話し声を許諾し、使用料を得る。原盤、出版に続く「声」という第三の権利資産の輪郭が見え始めた。管理の仕組みも、無断クローンへの防衛も、これからの整備である。レーベルとアーティストにとって、声の目録づくりが新しい宿題になりそうだ。」














