VTuberグループ「ホロライブプロダクション」を運営するカバーは2026年9月24日、4〜9月期(上半期)の業績予想を修正した。売上高は222億7000万円で据え置く一方、営業利益は19億3000万円から35億円へ81.3%引き上げた。4〜6月期の営業利益は6億5100万円で、前年同期から33%減っていた。差し引きすると、7〜9月期の3カ月だけで28億円台を稼ぎ、四半期として過去最高になる計算だ。
原動力は、今年7月に配信が始まったホロライブ初の公式スマホゲーム『hololive Dreams』(ホロドリ)である。売上の予想は変えていないのに、なぜ利益だけが大きく伸びたのか。背景にはVTuber事務所ならではの収益構造がある。
VTuber事務所は何で稼いでいるのか
カバーの事業は大きく4つに分かれる。YouTubeなどでの配信収益、ライブ・イベント、グッズやカードを販売するマーチャンダイジング、そして企業とのコラボやキャラクターの使用許諾で稼ぐライセンス・タイアップだ。
近年の成長をけん引してきたのはグッズである。2024年9月に発売したトレーディングカードゲーム「hololive OFFICIAL CARD GAME」がヒットし、2026年3月期にはマーチャンダイジングの売上が237億円と、全体の493億円のおよそ半分を占めた。ただし、グッズは製造や在庫、物流にコストがかかり、売れ残れば損失にもなる。売上が伸びても、利益は伸びにくい事業なのだ。
利益率の高いライセンス収益が伸びた
今回、マーチャンダイジングは在庫不足やカードを含む新商品の投入時期などの影響で、当初の想定を下回った。その一方で、ホロドリの好調によってライセンス・タイアップ領域が計画を上回った。
ライセンス収益は、自社で商品を製造・販売するグッズに比べて原価が小さく、利益率が比較的高い。グッズの売上が想定に届かなかった分は製造や物流などの費用も少なく済み、その穴をライセンス収益が埋めた。その結果、売上の合計はほぼ計画どおりのまま、費用は計画を下回った。これが「売上据え置き、利益大幅増」の仕組みである。
開発会社と組んだゲームが結果を出した
ホロドリはリズムゲームとテーマパーク運営を組み合わせた作品で、50人以上のタレントが登場する。カバーとサイバーエージェントグループのQualiArtsが共同で開発・運営し、QualiArtsが配信元を務める。7月23日にiOS、Android、Steamで全世界同時に配信され(一部地域を除く)、初日に100万ダウンロードを記録。8月の決算発表の時点で200万ダウンロードを超え、同社によれば配信したすべてのストアでセールスランキング1位を獲得したという。
対照的に、カバーが自社で開発してきたメタバース「ホロアース」は、2026年6月にサービスを終えた。関連するソフトウェア資産の全額、31億9900万円を2026年3月期に減損損失として計上している。単独で抱え込んだ挑戦が撤退に終わり、実績のある開発会社と組んだ挑戦が実を結んだ構図だ。
競合も動いている。「にじさんじ」を運営するANYCOLORは、タカラトミーと組んだカードゲーム『NIJISANJI 7 Colors Card Game』を2027年新春に発売する予定で、カバーが先行したカードゲームの領域を追う。カバーはその一歩先で、スマホゲームという新たな収益源を手にしつつある。
焦点は「一過性か持続か」
もっとも、市場の反応は冷静だった。カバーは通期の業績予想を据え置き、「上半期の上振れが下半期に与える影響は現時点で合理的に算定できない」と説明した。この据え置きや、これまで業績をけん引してきたグッズの売上が想定を下回ったことが嫌気され、翌25日の株価は大幅に下落。スマホゲームは配信直後に売上が集中しやすく、その後の運営次第で数字が大きく変わる。
カバーはホロドリを「新たなファン接点」と位置づけている。ゲームをきっかけにホロライブを知った人が、配信やライブ、グッズへと関心を広げれば、IP全体の成長につながる。今後の中間決算で、ゲームの勢いが続いているか、ファン層の広がりを示すデータが示されるかが次の注目点となるだろう。














