ブシロードの経営トップが、明日9月29日に交代する。同日の定時株主総会と、その後の取締役会での決議を経て、取締役の根本雄貴氏が代表取締役社長に就任する予定だ。
創業者の木谷高明氏は代表権を持つ会長に回り、2人が代表を務める体制に移る。根本氏は1994年生まれの32歳で、2016年の新卒入社から約10年での抜擢となる。人事の内定は7月28日に発表されていたが、木谷氏は当初、交代を1年後に考えていたという。なぜ創業者は、予定を前倒ししてまでバトンを渡すのか。
ブシロードとはどんな会社なのか
ブシロードは、2007年に木谷氏が設立したエンタメ企業だ。祖業はトレーディングカードゲーム(TCG)で、「ヴァイスシュヴァルツ」や「カードファイト!! ヴァンガード」などを展開する。近年は英語版をはじめとする海外展開が伸び、2026年6月期にはTCG売上の43.4%を海外が占めた。
TCGと並ぶ柱が、アニメ・ゲーム・ライブを連動させる「BanG Dream!(バンドリ!)」だ。キャラクターを演じる声優が実際にバンドとして演奏するライブ展開で人気を広げ、9月24日には新作スマホゲーム『BanG Dream! Our Notes』が世界同時リリースされたばかりである。
同社は2026年6月期を「準備の年」と位置づけながらも、売上高578.2億円と過去最高を更新した。6月末には長年保有してきた新日本プロレスの株式を、テレビ朝日とサイバーエージェントに譲渡している。業績の足場を固め、事業の構成にも区切りをつけたタイミングでの社長交代となる。
なぜこのタイミングで32歳に託すのか
木谷氏が国内メディアのインタビューで挙げた最大の理由は、世の中の変化の速さ、とりわけAIの台頭だ。
当初は創立20周年を迎える来年の交代を想定していたが、AI時代は若い世代ほど有利だと判断し、1年早めたという。同じく国内メディアで行われた対談企画では、「少し早すぎるかな」と思うくらいがちょうどいいとも語っている。
そしてもう一つの理由は、社内の成熟だ。木谷氏によれば、若手や中堅が育ち、管理体制や収益基盤も整ったことで、今は創業以来もっとも会社の態勢がそろっているという。
では、なぜ根本氏なのか。根本氏は2022年にグループ会社ブシロードミュージックの社長、2023年には29歳で本体の取締役に就いた。「バンドリ!」の総合プロデューサーとしては、新バンド「MyGO!!!!!」「Ave Mujica」を軸にプロジェクトを新たな段階へ押し上げている。
木谷氏は、ゼロから作品を生み出せるのは社内でまだ自分だけだとしつつ、根本氏は立ち上げ初期の段階から作品を大きく育てられる人材だと評価する。そのうえで、仕事を人に任せながら要点は押さえるマネジメント力を決め手に挙げた。自身が初めて会社を興した33歳より若いことも、強みになるとみている。
創業者経営から「チーム経営」へ
ただし、今回の交代は創業者の引退ではない。木谷氏は会長として祖業のTCGを担い、新規IPの立ち上げにも根本氏と分担して関わる。根本氏は出版やメディア、ライブエンタメ、デジタルコンテンツなど、それ以外の領域を統括する。木谷氏は新規IPについて2029〜2030年ごろを区切りの目安とする一方、世界で競争が激しいTCGは引き継ぐ時期を定めていない。
くわえて、代表権を手放さない理由もある。木谷氏は、社員のほとんどが50歳以下で、金利のある経済や物価の上昇を経験しているのは社内で自分だけだと指摘する。経済環境が大きく変わる局面では、その経験が生きるというわけだ。
このように、創業者が代表権を残したまま社長を譲る形は、奇しくも新日本プロレスの譲渡先であるサイバーエージェントも2025年12月に採用した。藤田晋氏が会長に就き、42歳の山内隆裕氏が社長に就いている。
一方、ブシロードの新社長はそれより10歳若い。経営の若さをAI時代の武器にできるか。明日から始まる新体制は、エンタメ業界における世代交代の試金石となりそうだ。














